赤い公園「みんなと一緒に聴いて楽しんで」バンドで音楽を鳴らすこだわり
INTERVIEW

赤い公園

「みんなと一緒に聴いて楽しんで」バンドで音楽を鳴らすこだわり


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年01月28日

読了時間:約10分

新たなアプローチの進化系

「絶対零度」期間生産限定盤ジャケ写

――サウンド面についてですが、まずサビが凄くキャッチーと感じたのですが。

津野米咲 その前後が複雑だから余計にそう感じるのかもしれません。

――最初に聴いた時は気づかなかったのですが、サビとそれ以外の部分で拍子が異なりますよね。

津野米咲 1回目に聴いて気づかなかったというのは嬉しいです。さりげなくできてるってことですから。

歌川菜穂 過去にも変拍子っぽい曲はあるんですけど、変拍子と思うとできないというか。私は歌を耳で覚えるほうなんです。「今は何拍子で…」と考えちゃうとグチャグチャになっちゃうので。とは言いつつ、昔の頃より今のほうがちょっと賢くなっているので、わからないふりをしてやっているというか。わかって「ここから何拍子」ってやっちゃうと、すぐに「拍子が変わった」って感じられちゃうので、ヌルッといけるようにという意味でわかってないふりをして叩いています。

――それはこだわりの部分ですね。拍子の展開について、歌唱面ではどうでしょう。

石野理子 私も新体制になってこういう展開がいっぱいある曲は初めてだったので、最初はついていくのが大変でした。レコーディングは拍をつかむのが大変で、「1、2、3」って数えて。

――藤本さんは自然にリズムをとる?

藤本ひかり わりとこういうほうがスルッと演奏できますね。

――そういった音楽をたくさん聴いているのでしょうか。

藤本ひかり そんなにはないと思うんですけど、わりと津野さんが作る初期の曲はそういうものが多かったりしたので。可もなく不可もなく、という感じです。

津野米咲 拍子気にしてないよね?

藤本ひかり うん。拍という概念があんまりないかな。

津野米咲 だからこういう曲になると誰よりもこんがらがらないんです。

藤本ひかり 一晩あれば大丈夫です。

津野米咲 拍を全部「1」でとってるのかもしれない。

藤本ひかり 「イチ、イチ」ってね。

――8分の7拍子などトリッキーな拍子がきたらどうするのですか。

藤本ひかり それは「イーチ」で(笑)。

――凄い才能ですね(笑)。さて、2曲目は「sea」ですが、「絶対零度」と何か繋がりがありそうに感じました。

津野米咲 両方ともちょっと昔話っぽいですね。語り口的に。
 2曲の共通点としては“物語っぽい”という部分くらいです。

――では歌詞についてですが、どういった物語性でしょうか。<“She sells seashells by the seashore.”>という部分が気になるのですが。

津野米咲 そこは英語の早口言葉なんです。日本語だと“彼女は海岸で貝殻を売ってる”という内容について、「何で売っているんだろう」と想像してみたお話です。ここから広がっていきました。

――そこからだったのですね。「sea」のサウンド面についてですが、「Yo-Ho」でみられた新たなアプローチの進化系と感じました。

津野米咲 そうですよね。打ち込みサウンドの進化系です。

――こういった鋭いエディット感の楽曲を収録した意図は何でしょうか。

津野米咲 明確な意図はなく、作っていてシンプルに格好良いということをやった結果こうなりました。

――前作の「Yo-Ho」まで、赤い公園の楽曲ではこういったアプローチはなかったですよね。バンドの新たな一面が生まれたと感じます。

津野米咲 そうですね。あんなに振り切ったのは作ってこなかったし、今チャレンジを始めていることではあるのかもしれません。最近になって出てきたものなので。ただ、「これを作らなきゃ」と苦しくなるのも嫌なんです。だから多分、気が向いたら出てくる側面です。

 確実な課題としては、バンドなのでエレキギター、エレキベース、生ドラムじゃなければいけないという決まりは全くないですが、4人でライブをする時にアレンジを全く変えてもいいから演奏するというラインがどこかにあると思います。その中で料理で楽しんでいく感じだと思います。他のジャンルとどういう風に混ぜていくかとか。本職のヒップホッパーではないので、バンドだからこそできる打ち込みというある種のものが「sea」なのかなと。まだできることはいっぱいありますので、アルバムに入るかどうかは明言したくないところです。

――それこそバンドでなければ「sea」のベースラインは出てこないのではないかと感じました。

藤本ひかり あれは打ち込みなんです。

津野米咲 ライブでのお楽しみです。今のところ音源のフレーズではないのを弾く予定です。

藤本ひかり 「全く違うものを作ってきてくれ」という宿題があるんです。

――こういったエディット感のある楽曲を実際にライブで叩くとなると、別のスイッチが入ったりするのでしょうか。

歌川菜穂 「Yo-Ho」では結局パッドを叩いたんですけど、別のスイッチということはないかな…こういうヒップホップチックな横乗りの跳ねたリズムはそんなにやってきてないので、今のうちいっぱい練習しておこうと思っています。

――新たなアプローチですから、聴き手の乗りの幅も広がりそうですね。

歌川菜穂 こういうリズムができたら今後強いなと思います。

――「sea」はボーカルのエディットも凄く綺麗で素敵だと感じました。石野さんの新たな魅力が引き出されたとも。

津野米咲 私とエンジニアさんとで「やり切っちゃう?」みたいな。できるところまでやろうと。

歌川菜穂 出来たのを聴いたとき「うわぁ!」ってなりました。

津野米咲 打ち込み業界のなかでも意外にいそうでいなかった塩梅になっていると思うんです。バンドマンが作る打ち込みは独特の感じが出るのかなと。

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