赤い公園「みんなと一緒に聴いて楽しんで」バンドで音楽を鳴らすこだわり
INTERVIEW

赤い公園

「みんなと一緒に聴いて楽しんで」バンドで音楽を鳴らすこだわり


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年01月28日

読了時間:約10分

 4人組ロックバンドの赤い公園が29日、シングル「絶対零度」をリリース。ボーカルに石野理子を迎えた新体制初の音源となった前作『消えない - EP』に続き、今作は新体制初のCDシングル。赤い公園としてのスタイルを引き継ぎつつも、新たなアプローチが含まれる作品となった。現在の赤い公園の様々な背景がみられた今作のタイトルや歌詞に込められた想いやサウンド面、そしてバンドの音楽との向き合いかたなどについて4人に話を聞いた。【取材=平吉賢治】

バンドは高まりを極めている

「絶対零度」通常盤ジャケ写

――前作『消えない - EP』リリース後の全国ツアー『FUYU TOUR 2019“Yo-Ho”』の手応えはいかがでしたか。

津野米咲 着実に良いバンドになってきているという手応えを感じています。その場のお客さんとその瞬間瞬間を一緒に楽しめている実感がこれまで以上に持てました。

藤本ひかり 私はあと3倍の本数はいけると思いました。2カ月間くらいだったんですけど、これだったら半年くらいかけてツアーができると。ツアーを経て、やる気に満ち溢れて高まっています。

津野米咲 高まりを極めていますね。ツアーが終わった日に「もう何本もやりたい」と。

――石野さんはいかがでしたか。

石野理子 濃かったです。濃縮されたツアーという感じで。時間を持て余すこともなく、常に変化も楽しみながらできた感じがありました。曲に関しても演奏を最後のほうで変えたりと工夫したり、気持ち的な気合いは変わらなかったんですけど、良い意味でツアーを駆け抜けて行こうというモチベーションが最後まで変化しながらも保てていました。

歌川菜穂 私も一緒で、毎度良いものを作ろうという気持ちがずっとあるので、「今日はこうだったから明日はこうしてみよう」とか、アレンジや曲間、リズムの取りかたなどの細かい部分までずっと共有してバンドで毎度言えていたんです。そういうバンド感がありました。スタッフの方からの「外から観てたらこうだった」という意見も聞いて、最後までチームで作っていけました。

――ツアーでは、『消えない - EP』でキーとなる楽曲ともお話されていた「Yo-Ho」をどのようにプレイしたのでしょうか? 打ち込みサウンドが施されているアレンジの楽曲ですが。

津野米咲 シンセパッド、ドラムパッドみたいなのを買って、そこに短いサンプリングを入れてタイミング良く叩く感じで。

歌川菜穂 音色を一つずつ選んでそこでリズムを叩いていました。

藤本ひかり 私はシンセベースを弾きました。

歌川菜穂 新しい試みなんです。

津野米咲 他の曲でも使ったりしました。

――新たなスタイルでの披露があったのですね。さて、今作についてですが、まずボーカルがよりバンドに馴染んだという印象を受けました。

石野理子 歌は自分の頭が追いつかないくらい声が変化しているというか。歌いかたも自然と変わっていっています。自覚がないわけではないんですけど、自分でもびっくりすることがあります。

――無意識に変わっていっている?

石野理子 意識的な部分もあります。マイクにこう向かって歌ったらこういう風に変わるんだな、とか。そういうことを考えるようにして歌えるようになったところもあります。でも、自分でも気づかない部分もあると思います。

――「絶対零度」についてですが、なぜこのタイトルになったのでしょうか。

津野米咲 自分が立っている所はとても生きづらい場所だというタイトルです。適温ではなく、あまりに冷たいという。とても厳しい低い温度で、自分が置かれている環境ではなく、自分が生きていくためにやりたいと思っていることを止めようとする自分もいると思うんです。「それって大変じゃない? できないんじゃない?」みたいな。そういう抵抗を冷たい温度に例えています。

――過酷な状況下、ということでしょうか。

津野米咲 生きていられない温度ですからね。めちゃ寒いですから。だから歌詞にある<アラバの海>というのも、あまりに塩分濃度が高くて生き物がいられない場所なんです。そこと同じような位置付けで「絶対零度」というタイトルをつけました。

――そのタイトルは、タイアップのアニメ『空挺ドラゴンズ』の内容とリンクしている?

津野米咲 オーダーを頂いて書いて、という感じでした。『空挺ドラゴンズ』の登場人物達も、わざわざ壮絶な演出では描かれてはいないですけど、生きるか死ぬかの空の旅をしていて。竜を獲って市場におろすんですけど竜を獲るのは簡単ではなく、怪我もするし。でもそれを楽しみながら、その竜が敵ではなくて、愛してありがたく頂くためにとっているわけなんですけど、その精神性というか、生きるか死ぬかの戦いのなかでの日常的なささやかなことを凄く大切に描かれている作品です。

 でも描写は凄くて、それを自分のなかで例えられないかなと思って。バンドをやっていくということも、できるかどうかわからないこと、無理かもしれないと弱気にならずにやってきたし、そういう風にやっていきたいという自分の気持ちとちょっとリンクする部分があります。

――自身と重ねた部分もあるのですね。

津野米咲 ただのファンタジーではなく、みなさんも投影できる部分が凄く多いと思うんです。

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