コンサートのもよう

 オリンピック映像とフルオーケストラ演奏による『オリンピックコンサート2020 プレミアムサウンドシリーズ』が11日、東京芸術劇場・コンサートホールで初日を迎えた。選手の栄光と挫折をまとめた映像と表現豊かに奏でる音楽で、観客の感動と涙を誘った。ナビゲーターを務めた藤本隆宏氏は「涙がこみ上げてくる。演奏によって感動が何倍にも膨れ上がった」と称賛した。この日はオリンピアンの有森裕子氏、小谷実可子氏、星奈津美氏がゲストで登場、それぞれ五輪への思いを語った。

 コンサートは全国6都市7公演が行われる。その初日となったこの日は、海老原光氏の指揮のもと、THE ORCHESTRA JAPANが演奏した。ホールの明かりが落とされると高らかにトランペットの音が鳴り響く。華やかな「オリンピック・マーチ」のもとでゲスト3氏がステージに登壇。入場行進のように客席通路をぬって歩き自席に着いた。

 自身もオリンピアンで9年連続ナビゲーターを務める藤本氏は「いよいよ東京五輪まで195日。きょうのコンサートを通して開催までの道のりを見てほしい。音色と奏者の息遣いまでも感じてほしい」と挨拶した。

 プログラムは、第一部が「1964 to 2016 輝き続けた夏の夢」、第二部は「2020へ、その先の未来へ、輝く夢に向かって!」。

 第一部では1964年の東京大会から2016年のリオ大会までの軌跡をまとめた映像とともに、『E.T.』から「地上の冒険」、グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲などが届けられた。緊迫した場面を表現するかのように静かに奏でられたかと思えば、力強くダイナミックに鳴り響く。そうした音楽によって映像はドラマティックに彩られ、その時代、その場面にトリップしたかのような感覚を与えさせていた。

 第二部では、栄光と挫折、名場面など選手をフォーカスした映像のもとで音楽が届けられた。その合間にはゲスト3氏によるトークコーナーも設けられた。

トークセッションに臨む藤本隆宏氏、小谷実可子氏、星奈津美氏、有森裕子氏

 この中で有森氏は、オリンピックは「自分の人生を作り上げていくのに必要だったもの」とし、五輪出場前の成績は上位ではなかったもののメダルを獲得することが出来た自身の経験を踏まえ「どうなるか分からないし、どうにかなる。結果が分からないから人間は頑張れるもの」と語った。

 一方、16歳の時にバセドウ病を患ったもののロンドン、リオでメダルを獲得した星氏は「周りが思うほど重く捉えていなかった。当時練習できないことは辛かったが、当たり前のことが当たり前ではないことに気づけたことがその後の人生に影響している」とし、「試合で悔いを残さないようにするためには、日々悔いを残さない事。それをやってきたらどんな結果に納得できる」と述べた。

 選手村副村長への就任が決まった小谷氏は、引退後も応援し続けている理由を「メダルが取れたソウルは自信があった。でもバルセロナはなかった。神様は見ていてごまかせない。五輪は厳しいけどだからこそ目指すべきところでもある。そのお手伝いをしたい」とし、副村長として「選手村での生活は一分一秒どうするかが大事。サポートしたい」と意気込んだ。

 コンサート終盤には、夢を諦めなった日本のレジェンドに光を当てる映像のもと、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」が奏でられた。藤本は「涙がこみ上げてくる。それだけオリンピックは感動を与えてくれる。その中には力強さや優しさがある。海老原さんの美しくしなやかでダイナミックな指揮、そしてオーケストラの演奏で感動が何倍にも膨れ上がった。改めてオリンピックはスポーツだけでなく、スポーツと音楽が融合した祭典であることを改めて教えて頂いた」と語った。

 そして、NHK東京児童合唱団を加え、エンニオ・モリコーネの映画『ミッション』メインテーマが届けられた。静かに流れていく音楽。その静けさの後に響く児童によるクワイヤー。柔らかみと純粋な歌声、そして最果てがないと感じられるほどに伸びていく高音。そのクワイヤーは、ひたむきに練習を続ける選手たちに差す光のようだった。

 競技だけでなく、その周りにある、選手と監督、兄弟、親子、師弟、そして個人など様々な人間ドラマが音楽によって彩られ、感動と涙を誘っていた。

プログラム

「1964 to 2016 輝き続けた夏の夢」

今井光也:オリンピック東京大会ファンファーレ
古関裕而:オリンピック・マーチ〔オーケストラ版〕
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
ジョン・ウィリアムズ:映画「E.T.」から“地上の冒険”
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

「2020へ、その先の未来へ、輝く夢に向かって!」

オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲
オリンピアン等によるトークコーナー~輝く夢に向かって
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」から
エンニオ・モリコーネ:映画「ミッション」からメインテーマ
スピロ・サマラ:オリンピック讃歌

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