4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)が11月26日、愛知・Zepp Nagoyaで対バンツアー『COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは11月11日の東京公演を皮切りに、26日の愛知・Zepp Nagoyaまで全国5公演、KICK THE CAN CREW、[ALEXANDROS]、氣志團と対バンをおこなうというもの。ツアーファイナルは山中拓也(Vo.Gt)が音楽を始めたきっかけとなったHYDEとの競演。アンコールではHYDEと「BLACK MEMORY」を熱演し、特別な一夜となった。さらに12月18日に新曲「Shine Holder」を配信リリースする事も発表した。ツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

HYDE「君たちに爪痕を残す」

HYDE【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 会場は隙間も見当たらないほど多くのオーディエンスで埋め尽くされていた。トップバッターはHYDE。開演時間になると真っ赤に染まるステージ、そして、危険な匂いを感じさせるけたたましいサイレンの音、威嚇するかのようにCo2ガンをフロアに向けて発射するバンドメンバー。そして、その中をHYDEがステージに登場すると大歓声が巻き起こった。

 オープニングを飾ったのは「MIDNIGHT CELEBRATION II」。HYDEのスクリーミングがテンションを上げる。一時代を築き上げた国宝級の歌声に魅了され、序盤から会場を一つにしていく。バンドが放つ轟音、その音に優雅に乗るかのように、アグレッシブでBite感のある歌声は否応なしに、我々の感情を揺さぶり掛けていく。

 HYDEは「オーラルのファンはすごいって聞いてきたんですけど、すごいの見れるのかな? 拓也くんのことを思うと盛り上げなきゃと思うよね」と話し、VAMPSのナンバーから「DEVIL SIDE」を投下。イントロでのゴリゴリのベースが印象的で、激しさと爽快さが入り混じったナンバーだ。HYDEは声のチャンネルを見事に切り替え、HYDEの2面性を打ち出していく。

 そして、さらに火を付けたのは「GLAMOROUS SKY」。HYDEのセクシーなボーカル、メロディアスでラウド、さらにエピックなサウンドスケープを持ち合わせたナンバーは、この場にいる全ての人を昇天させるような感覚を与えてくれた。

 軍帽を被り、マイクスタンドに付けられたフラッグを肩に、ただならぬオーラを放つなか届けられたのはミディアムラウドチューン「SET IN STONE」。世界水準のラウドサウンドで魅了し、「OUT」で身体を震わせるサウンドに乗って、オーディエンスも身体を弾ませ楽しんでいた。

HYDE【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 それを受けてHYDEは「熱いね、名古屋。今日楽しみにしてきたので、一緒に楽しみましょう。怪我しない程度に君たちに爪痕を残して帰ろうと思ってるんで。ギラギラしてるんで、名古屋のカオスを見せて欲しい。騙されたと思っておかしくなろうぜ!」と今年の3月にリリースされた「MAD QUALIA」へ突入。生命力漲るHYDEの歌声でボルテージはうなぎのぼりだ。

 「名古屋こんなもんかい? もっと良いもん見せてくれよ。全部出してオレにも見せろよ! 次は態度で示してくれ!」と、HYDEの煽りに、オーディエンスのシンガロングもクレッシェンドし、相乗効果で大きなエネルギーを生み出していた。

 ここでHYDEは「体力を整えた方がいいから一旦座ろうか」と、オーディエンスをその場にしゃがませ、HYDEのカウントでジャンプをきっかけに始まった「ANOTHER MOMENT」では、ステージにダンシングブロワーと呼ばれるバルーンが登場し、ラウド&ヘヴィな音に合わせ踊り狂う演出も。まだまだ物足りないのかHYDEは「すげぇの見せてくれよ!」と投げかけ、盛り上がり必至のセルフカバー「HONEY」へ突入。フロアからもアドレナリンが放出しているのがわかるパフォーマンス。声を出さずにはいられないといった様子でシンガロングも巻き起こった

HYDE【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 後方にあったドラムセットを自ら引っ張り出すHYDE、そして「冥土の土産だと思って、オレにも(みんなの)良いとこ見せてくれよ!」とHYDEはギターを手に取り、ラストはVAMPSのナンバーである「AHEAD」を投下。ラストに相応しいドライブ感のある1曲で付け入る隙がないパフォーマンス。HYDEはドラムセットに乗ってフラッグをフロアに向けて振り、最後は大きなジャンプで締めくくった。消えることのない深い爪痕をオーディエンスの心に残し、オーラルへとバトンを渡した。

セットリスト

01.MIDNIGHT CELEBRATION II
02.AFTER LIGHT
03.DEVIL SIDE
04.GLAMOROUS SKY
05.SET IN STONE
06.OUT
07.MAD QUALIA
08.ANOTHER MOMENT
09.HONEY
10.AHEAD

THE ORAL CIGARETTES「歴史に刻む1日でした」

THE ORAL CIGARETTES【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 続いてはオーラルの出番だ。HYDEからのバトンをどう受け止めるのか、そこへの期待感で会場は高まっていく。

 恒例の4本打ちからレーザーの演出に、会場からも驚きの声が上がる。ゆっくりとステージに登場すると、山中は「自由に踊って」と投げかけ「ハロウィンの余韻(Redone)」でライブはスタート。エレクトロサウンドで、クールな空間を作り出していく。

 「ヤバイ夜にするよ! 最初からぶちかまして行こうぜ!」と、イントロでの中西雅哉(Dr)のドラムがテンションを上げてくれる「BLACK MEMORY」で、一気に天井突破の盛り上がりを見せる。「オレが目標としていた人とのファイナルです。オーラルのファンがどこまでやれるか見せてやろうぜ!」と気合を感じられる言葉から「カンタンナコト」へ。身体を弾ませるオーディエンスによって、フロアは波のように揺れ、大きな盛り上がりを見せた。

 山中は今日の意気込みとして、「オーラルのファンもHYDEさんのファンも一体にして帰しますから」と「狂乱 Hey Kids!!」へ。縦横無尽に飛び交うレーザーも視覚的に興奮を与え、ジャズテイストも感じさせる疾風怒濤なキラーチューンで煽情させる。序盤からこの曲を持ってきたところに、今のオーラルの楽曲のラインナップへの自信が伺える。

 既にクライマックスのような盛り上がりの中、「ゆっくりな曲もやっていくね」と投げかけたが、「そんなわけないだろ!」と騙し討ちで「CATCH ME」を投下。訴求力の高いナンバーでオーディエンスの心を鷲掴みにしていく。

山中拓也【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 山中は「小2で楽器を手にしたのは間違いなくHYDEさんの影響です。憧れの存在だったし、対バンをOK出してくれるとは思っていなくて、これは言葉にならないですね。胸が苦しい...。本当に夢を見させてもらって感謝しかないです」とHYDEへ感謝。

 続けて山中は「音楽ってロマンチックなもので、こうやってステージに立てているのもバンドをやっているのも夢なんじゃないかなと思っています」と話し、夢にまつわるナンバー「僕は夢を見る(Redone)」を届けた。白昼夢をみているかのような、浮遊感のあるサウンドに酔いしれ、シーンは一転し山中、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba.Cho)によるフィードバック音から「嫌い」を投下。精神に訴えかけてくるような楽曲を畳み掛け「PSYCHOPATH」でひとつのピークを迎えた。

 山中は「今の俺たちと経験を積んだ方たちとやることで見えてくるものが沢山あって、BKW=番狂わせということで、その場にあるものをひっくり返してやろうとか、先輩全員潰してやろうとか、そういったことをデビュー当時は掲げてやっていました。先輩たちに噛み付いていたはずなのに、オレらの周りには仲間がいっぱいいて、なんでこんなことになってるんだろうなと思っています」と心情の変化を語った。

 さらに山中は「人と関係値を作ることは戦うことも必要だけど、根本にあるのは貫く芯なんじゃないかなと思っています。今も番狂わせの精神は変わりませんが、規模は大きくなっていて、日本をもっとカッコいい国にしたい。HYDEさんはその背中を見せてくれていて、(日本は)ヨーロッパ、アメリカにも負けない国になるはずです。日本人が日本人を信じようという気持ちになっています。ここから俺らがどんな道に行こうとも、ここにいるみんなは理解してくれると信じています。気がついたら結成10年、このバンドでやってきて良かったなと思っています。バンドって本当に素晴らしい」。

THE ORAL CIGARETTES【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 「メンバー、スタッフ、チーム、一緒にやってきてくれてありがとう。これからも宜しくという意味を込めて…」とバンドの過去と未来を感じさせる「Flower」を届けた。山中と鈴木のギターだけによるしっとりとした幕開け。「続けていれば良いことあるから」と告げ、エモーショナルな歌を響かせた。さらに一体感を作り出したのはファンへの感謝の気持ちを歌った「LOVE(Redone)」。多幸感に満ちた空間は、ずっとこの場所にいたいと思わせるようなエネルギーで溢れていた。本編ラストは「容姿端麗な嘘」だ。オーディエンスと一体となった、声に満たされた空間。これ以上ないと思わせるほどのステージを作り上げ、4人はステージを後にした。
 
 アンコールを求める手拍子が鳴り続け、中西がステージに。恒例のグッズ紹介「まさやんショッピングのコーナー」へ。饒舌なトークは回を増すごとに鋭さを増していて、来年おこなわれるアリーナツアーへの期待感が高まった。

 アンコールは「ワガママで誤魔化さないで」を披露。再び頭からライブがスタートしたかのような盛り上がりを見せ、「過去の自分たちを肯定して下さい」と投げかけ、懐かしい1曲「mist...」を投下。「俺の人生にとって歴史に刻む1日でした」とオーディエンスのシンガロングに感銘した山中は、さらにリミットを超える激しいパフォーマンスでフィナーレを迎えた。と思いきや山中は「呼んでもいいですか」とHYDEをステージに招き入れた。

アンコールの模様【撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography) 】

 オーディエンスからの一緒に何か歌って欲しいという空気を受け、山中はHYDEに「今日の冠はオーラルなんですよね...」と記念撮影の前にオーラルの曲を歌って欲しいと懇願。HYDEは「聞いてないよ」と話しながらも、「(自分の)手にいっぱい歌詞が書いてあるのはそれかな?」とお茶目な発言で会場を笑わせた。

 会場のボルテージは最高潮の中「俺らとHYDEさんで特別な夜、スペシャルコラボやるぞ!」と始まったのは前半でも披露された「BLACK MEMORY」を再演。山中はHYDEが歌っている姿を見て、本当に楽しそうにしていたのが印象的だった。オーラルとHYDEとのシナジーは、形容できないほどの熱量と、音楽を楽しむエネルギーで満ち溢れていた。

 先輩の背中を借り続けたツアーも大団円を迎えた。今までの“BKW精神”は持ち合わせつつも、新しいベクトルに突入したことを感じせた競演だった。来年5月から始まる自身2度目となるアリーナツアー『JAPAN ARENA TOUR 2020』が楽しみになった

セットリスト

01.ハロウィンの余韻(Redone)
02.BLACK MEMORY
03.カンタンナコト
04.狂乱 Hey Kids!!
05.CATCH ME
06.僕は夢を見る(Redone)
07.嫌い
08.PSYCHOPATH
09.Flower
10.LOVE(Redone)
11.容姿端麗な嘘

ENCORE
EN1.ワガママで誤魔化さないで
EN2.mist...
EN3.BLACK MEMORY  feat.HYDE

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