忘れられない緊張感
――尚は琉球武術の使い手ですが、釵(サイ)という独特の武器も使っています。いかがでしたか?
僕はわりと覚えが早い方だと思いますが、サイは扱うのが難しかったですね。しかも両手で使うので持ち帰って何度も練習しました。最後の方では刀も使いますが、それも逆手持ちなんですよ。サイよりも刀の方が使いやすいですが、順手ではなくて。
――殺陣稽古はどれぐらいありましたか?
1カ月ぐらいです。もともと、尚には研ぎ澄まされた雰囲気が欲しかったのでジムで鍛えることはなかったのですが、アクション練習がハードで、体重は自然と落ちて。もともとない上に筋肉も付けてだいたい3キロぐらい体重が減ったと思うので相当だと思います。過去一番引き締まっていた時期だと思います。
――現代忍者とも言われている坂口拓さんがアクション監修していますが、直接指導も?
受けました。アクションをする上での見本として、拓さんが僕の立ち位置に入ってもらって映しもらうことが何度もあったので贅沢だなと思いました。出演が決まった時にはすでにアクションがあると聞いていたので、参考資料として拓さんに「どの作品を観たほうがいいですか?」と聞いて。それが拓さんも出演された『RE:BORN』という映画で。実際に観ましたがその動きに驚いて「え! 嘘だろ…こんな動きを求めているの…できるわけない」と思って。あの動きは人間じゃないです(笑)。でもそれを観て改めて拓さんは本物なんだと思えて、とにかくすごかったです。
――『赤い影』も『青い影』もクライマックスでのアクションシーンは迫力がすごいですが、撮影前日にワンカットアクションになったそうですね。
そうです。もう大変でした(笑)。でもそれは、拓さんが僕らだからできると見込んでくれたから。その期待には応えたいと強く思いました。とは言っても前日に言われて、当日に付けたアクションでしたので、覚えるのもこなすのも難しくて。撮影の合間に教わろうとしましたが、拓さんはこれ以上練習するな、と。もう大変…。でも撮影が終わった後に寛ちゃん(寛一郎)とホテルで飲んだお酒はすごく旨かったです(笑)。
――『青い影』でもワンカットアクションがありますが、あれは一発勝負だったんですか?
それも大変で。どうしてもスタッフさんが映り込んでしまったり、ふすまが閉まってないといけなかったところに確認漏れで開いていて、機材が映ってしまったりして、計3回ぐらいやりました。僕はその3回でも満足していなかったんですど、拓さんはこれ以上やっても最初のものを超えられないからと。やっぱり、1回でも2分半戦い続けるわけで、もう息は上がってハアハアと言っていたし、体力の消耗も激しいですから。それを見て拓さんは「1回目の方が一番新鮮だから」と。
――けがはありませんでしたか?
なかったです。やっぱりそこはアクションのプロの方なので、安心して斬らせて頂きました(笑)。実際に当てているのですが、当てないと怒られるんですよ。
――山本千尋さんとのアクションシーンも目を見張ります。山本さんは槍使いでした。
槍とやるのは難しかったですね。槍は長いのでリーチが分からなくて、一番ケガしやすかったのは槍だったと思います。
――それこそ呼吸があっていないと。
そうなんです。役者同士なので、合わせることに慣れていないからお互いに怖い。実は本番で槍が軽くなったんですよ。軽くなると早くなるから「え! 急にこんなに早くなったの!」って(笑)。しかもワンカットアクションをした後だったので体力的にも精神的にも大変で、目が相当血走っていたと思います。
――それが逆にね、鬼気迫る感じになっていて。挑戦だったことは?
ここまでアクションをさせてもらう撮影はそうはないと思いますし、拓さんに教えてもらう機会もなかなかないので特別なものになりました。それとワンカットアクション前の緊張感は今でも忘れられません。終わった後の達成感もすごいものでした。ワンカットアクションにしてくれた拓さんに感謝しています。
――完成したものをみて
感慨深いです。この1カ月の事が思い出されて。一つ一つ演じたことが物語になっていて、1カ月間、日光江戸村に監禁されて良かったなと思いました(笑)。