ピアノ連弾ボーカルユニット・Kitri(キトリ)が11月1日、東京 キリスト品川教会 グローリア・チャペルで単独コンサート『Kitri Live Tour 2019 AW「キトリの音楽会#2」』の東京公演をおこなった。ツアーは10月5日の大阪・中之島公会堂 小ホールを皮切りに、11月4日の宮城・仙台retro Back Pageまで7公演をおこなうというもの。デビュー2回目のツアーということで成長した姿を見せたいと、積極的に新たな楽器にも挑戦しさらなる音楽的広がりも見せた。ツアー5公演目となったコンサートの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

皆さんと一緒に素敵な時間を過ごせたら

Kitri(撮影=Masatsugu ide)

 今回、Kitriの2人が演奏をおこなうのは神聖なる教会。天井も高く、教会ならではの響きが期待できるこの場所で、Kitriがどんな音を響かせてくれるのか、会場は期待感に満ちていた。そして、いよいよ開演時刻になり、ステージにろうそくをイメージさせるようなライトが灯ると、MonaとHinaの2人がトレードマークの真っ赤なドレスでゆっくりとステージに登場。

 ピアノにスタンバイし、オープニングを飾ったのはアストル・ピアソラの軽快な連弾曲「アレグロ・タンガービレ」で幕は開けた。鮮やかな手捌きでメロディを紡いでいく。そして、一呼吸おいて個と集団の対比を表現した「目醒」へと続いた。7拍子と6拍子によるスリリングなアレンジで魅了。

 Monaは「皆さんと一緒に素敵な時間を過ごせたら嬉しいです」と言葉を投げかけ、「生きるすべ」を届けた。2人の息の合ったコンビネーション、紡がれていく旋律に酔いしれるなか、さらにHinaはトイピアノの音色をシンセサイザーで重ねたりと、楽曲を彩っていく。

 イントロの旋律からDNAの螺旋を想起させてくれた「細胞のダンス」の透明感あふれる歌と空気感は、このコンサートの中でも一線を画していた。Monaの低音がダイナミックレンジを操り、Hinaの高音パートが景色を広げていく。たった2人で奏でる音楽は無限大の可能性を感じさせた。

 ここでいつもは連弾で弾いている曲をアレンジを変えて披露することに。Hinaがピアノから離れガットギターにチェンジし「LIFE」を演奏。ピアノとギターのコントラスト、そこに乗る2人のハーモニーを堪能。Hinaはギターをパーカッションのように鳴らしたりと、楽器の持つポテンシャルを引き出していく。「リズム」では、曲の途中でHinaはギターから再びピアノに戻り、今度は低音パートであるSecondへとチェンジし、楽曲の表情を変えていく。

 カバーコーナーではロシア民謡から「一週間」を届けた。メランコリックな雰囲気を醸し出すアレンジで、楽曲が進むにつれ躍動感が増してくる構成。そこに乗る歌はあくまでもフラットで、クールな面持ちというギャップもあり、我々の耳を楽しませてくれる。

 そして、もう1曲カバー曲を披露。フラワーカンパニーズのミディアムロックナンバーの「深夜高速」。言葉を噛みしめるように、歌を紡いでいく2人の姿。歌詞にある<生きててよかった>というメッセージが印象的で、オリジナルとはまた一味違ったKitriらしさを打ち出していた。

ここから見た景色を一生忘れない

Kitri(撮影=Masatsugu ide)

 Monaは「教会で出来るなんて夢のようです。すごく楽しみなんですけど、(始まる前は)すごく緊張して何も手につかない状況でした」と話し、そんな自分が緊張しているなか、Hinaは目の前でホラー作品の読書をしていたというバックステージでの裏話も。今度はHinaが、緊張で一点見つめるMonaの集中力はすごいと感心。

 2人のコントラストが出ていたMCに続いて、懐かしい一曲「real~classical ver.~」を披露。クラシックの旋律も取り入れた1曲は彼女たちのルーツを感じさせ、再びHinaがギターを手に取り披露されたのは「矛盾律」。間奏でHinaはルーパー(録音した演奏を繰り返し再生する機材)を使用してパーカッションを巧みに重ねていく。そこにMonaはリコーダーや、パーカッションのギロを演奏しアクセントを加えていく。型にとらわれない自由に音楽を楽しむ姿が、このセクションにはあった。

 続いて、「心から応援したい、皆さんの気持ちを軽くすることが出来たら嬉しい」と、この日デジタル配信された新曲「さよなら、涙目」を披露。希望へと繋がるような光を感じさせ、曲を通して背中を押してくれるような感覚を与えてくれた。

 一転してしっとりとレイドバックした空間を作り上げたキャンディーズの「アン・ドゥ・トロワ」。この曲では2回目のツアーということで、少しでも成長した姿を見せたいと新しい楽器にコンサーティーナと呼ばれる、小ぶりなアコーディオンに挑戦した。Hinaはカホンでリズム、さらにコンサーティーナでMonaの歌に対しカウンターメロディで盛りたてる。

 本編ラストはバラードナンバーの「Dear」。同曲の持つ情景をコンサティーナの音色が、よりノスタルジックな気持ちにさせ、自然と体に入ってくる音と声の心地よさはKitriならでは。丁寧に歌詞に込められた切なさ、寂しさといった感情を教会の隅々まで響かせた。

 観客の一糸乱れぬアンコールを求める手拍子に応え、再び2人がステージに登場。「素敵なアンコールをありがとうございます」と感謝し、ここで来年1月29日に1stフルアルバム『Kitrist』をリリースすることを発表した。「皆さんのおかげで生み出せた曲たちだなと感じています」とコメント。

 アンコールはデビューEP『Primo』から「羅針鳥」を歌唱。どこまでも羽ばたいていく力強さを感じさせる歌と演奏は彼女たちの未来、意志の強さを反映しているよう。Monaは「皆さんがくださった時間を忘れずに頑張っていきたい」と意気込みを述べ、Hinaは「ここから見た景色を一生忘れないと思います」と想いを語った。最後に届けられたのは、Kitriという物語はまだまだ続いていくことを予感させてくれた「終わりのつづき」でフィナーレを迎えた――。

 2月におこなわれた『キトリの音楽会 ♯1』を筆者は観覧したが、そこからわずか約10カ月で成長したことが垣間見れたコンサートだった。一聴してわかるほど演奏のバランス、ステージでの集中力が高まっているのを感じさせてくれた。フルアルバムがどのような作品になっているのか、今から楽しみだ。

セットリスト

『Kitri Live Tour 2019 AW「キトリの音楽会#2」』

11月1日@東京 キリスト品川教会 グローリア・チャペル

01.アレグロ・タンガービレ
02.目醒
03.生きるすべ
04.細胞のダンス
05.一新
06.LIFE ~piano & guitar ver.~
07.リズム~part change ver.~
08.一週間
09.深夜高速
10.real~classical ver.~
11.矛盾律
12.さよなら、涙目
13.アン・ドゥ・トロワ
14.Dear

ENCORE

EN1.羅針鳥
EN2.終わりのつづき

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