流れ行く歌を作らなければいけない
――11日リリースされた「河童」は吉田旺さんの作詞ですね。
久しぶりに吉田さんに書いていただきました。私は吉岡(治)先生に書いていただくことが多かったので、他の作家さんに書いていただく機会は少なかったんです。吉岡さんが亡くなって、大人の男と女のすれ違いだったりを、ドラマチックに書く作詞家の方が本当に少なくなりました。その中で吉田さんから詞を頂いて嬉しかったです。でも、そこだけではウェットになり過ぎてしまうので、杉本(眞人)さんの曲の勢い、詞との塩梅と言いますか、重なり方がすごく気持ち良くて。令和という新しい時代の皆さんにお届け出来る歌だなと思いました。
――令和という新時代を意識されたところもあったのでしょうか。
やっぱり新しい時代というところで、勢いがある曲の方が良いなというのはありました。今、演歌だ、歌謡曲だ、ポップスだと色々言ってますけど、デビュー当時ジャケットには、ただ「流行歌」と書かれていましたので、“流れ行く歌”を作らなければいけないと思いました。今みんながどんな歌を聴きたいのかなと、そこは意識したところはあります。
――「河童」を聴かせていただいて、ロックを感じました。
私はあまりジャンルのことはわからないんですけど、聴いた時はビート感があってすごく気持ち良いなと思いました。あと、この「河童」というタイトルもお気に入りなんです。喉越し爽やか、切れ味最高だなって(笑)。演歌と呼ばれる曲って、「天城越え」とか歌詞の最後にタイトルの言葉が来ることが多いんですけど、でもこの曲はそうではなくて、「河童」という潔い感じがすごく好きです。
――確かにそういうパターンが多いですね。さて、レコーディングは今までと変化した部分はありましたか。
今までとやり方を変えたというところはないんですけど、坂本昌之さんのアレンジがすごく良くて、気持ち良く歌わせていただきました。オーケストラの方のオケ録りの時に私も一緒に歌うんですけど、そうするとミュージシャンの方々も掛け合いというのを、良く感じることが出来るんです。一応別日にボーカルレコーディングの日を取ってあるんですけど、でも大体みんなと一緒に録ったテイクが一番良いんです。そういったことは良くあって、後から録ったものが、どこか嘘っぽく感じてしまうんです。
――さて、カップリングの「狐守酒」はジャージーで、「河童」とはまた違った石川さんの歌の表現が堪能出来ます。
「狐守酒」もみんなと一緒に録ったものが良かったんです。125枚シングル盤を作らせていただいたんですけど、こうじゃなきゃいけないという作り方はしていないんです。先程もお話しましたが、「今届けたい曲」というのをテーマにスタッフと考えているので。「ウイスキーが、お好きでしょ」はコマーシャルソングでしたが、ステージでこういう曲が欲しいなとコンサートのことを考えて作ってもらうこともあります。杉本さんらしさが出た一曲になりました。
――杉本眞人さんとは昔からご一緒に作られていますよね。
平成の最初からですから、30年以上で長いですね。都々逸を入れて、なかにし 礼さんが作詞・杉本さん作曲で「恋は天下のまわりもの」という曲が最初でした。杉本さんの世界観というものがあって、その世界観が欲しい時は、もう杉本さんにお願いするんです。(※都々逸とは江戸末期に初代の都々逸坊扇歌(1804年-1852年)によって大成された、口語による定型詩。 七・七・七・五の音数律に従う)
――この曲はアレンジがジャズ系ですが、石川さんはジャズはどんな歌手がお好きですか。
もう、何でも好きで色んな曲を聴くので絞るのは難しいですね…。
――海外に行った時は現地の音楽を持って帰って来るんですよね?
はい。ニューヨークのブルックリンに有名なレコード屋さんがあるんですけど、そこの品揃えがすごいので、おすすめです。