心の呟きが聞こえる共感が出来る歌、石川さゆりが今届けたい音楽とは
INTERVIEW

心の呟きが聞こえる共感が出来る歌、石川さゆりが今届けたい音楽とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年11月04日

読了時間:約11分

 歌手の石川さゆりが去る9月11日、通算125枚目となるシングル「河童」をリリースした。今年は2020年に始まる大河ドラマ『麒麟がくる』への出演決定や、5月には紫綬褒章を授かるなど話題が絶えない石川。令和初となった作品「河童」は作詞に吉田 旺氏、作曲に杉本眞人氏による爽快な一曲に仕上がった。インタビューでは「河童」の制作背景から、大河ドラマの撮影について、「時間がない」と話す石川の音楽を届けることへの想いを聞いた。【取材=村上順一】

自分が歌い手として感じてきた感情を大河ドラマに――

「河童」ジャケ写

――石川さんはすごく精力的に活動されていますが、長期的なお休みはあるんですか。

 昔は長期的なお休みも取らせて頂いていましたけど、近年はやりたい事がすごくたくさんあるので、長期的というのはないです。色んな準備をしているので、今年も夏休みもなかったなという感じなんです。こうやって作品を皆さんにお届けするには、準備が重要ですから、それをやっているとあっという間で。あと、ステージの準備もありますから。

――その音楽活動に加えて、大河ドラマ『麒麟がくる』の撮影も入って。

 そうなんです。6月から撮影に入りました。私は歌い手としてしか生きてきていないので、役者というものがわからないところもあります。でも、人の心の揺れだったり、想いを描いていくというところは、歌ととても似ているところはあるので、それを一人で歌い語っていく部分と、大河ドラマのように大勢のキャストの皆さんと、スタッフで一つの作品を作るという違いはあります。

 それと、歌っている時ボーカリストはセンターに立って「いくよー!」とお客さんに向かって走って行くんですけど、役者さんはまた違う感覚で、自分が今どういう立場でいるのかなと思わせてくれるのは、すごく面白い経験です。

――大河ドラマ出演のお話を初めて聞いた時はどう思われましたか。

 やったことがないわけですから、それに参加させていただけるというのは面白そうだなと思いました。なぜ歌い手の私に? と伺ったのですが、「ぜひ包み込むような、お牧の愛を、そのままの石川さんでやって頂けたら」と仰って下さいました。私はそう言われても難しい...と思ったんですけど、台本を拝見させていただいたら、すごく面白くて。人間模様、人が生きる、喜ぶ、裏切るなど、いつの時代もこうやって繋がっているんだと思いました。小さな幸せを感じながら、自分が歌い手として感じてきた感情を、大河ドラマに活かして頂ければ、私も何かお役に立てるかもと思いました。

――歌詞を覚えるのとセリフを覚えるのとは違いましたか。

 お芝居は相手があってのことですから、やっぱり違いはあります。歌は1人でストーリーをドラマチックに紡いでいけばいいんですけど、お芝居は相手との空気感や間合い、セリフは覚えて行くのですが、それをどう伝えるかというのは相手の役者さんによってすごく変わっていきます。

――同じセリフでも、相手によって変わることもあるんですね。

 そうですね。アンサンブル感とでもいいますか...。どうしても私は音楽に聞こえてしまうんです。例えばセリフが高い音から入ってきたら、低い音で出た方が良いのかなとか(笑)。そうするとハモるのかユニゾンするのかなど色々あって、自分は音楽で生きてきたので、そういう風に考えてしまうんです。

――歌い手や音楽家ならではの感覚があるんですね。他の演者さんと共演されてみていかがですか。

 最初は皆さん、探り探りなところがあるなと感じました。自分も何者になっていこうかという感じで、それが徐々に剥がれて今はすごく溶け合ってきたかなと思います。私の場合、音楽で屋外の仕事というのはあまりないので、今まで考えてなかったんですけど、最近は私がロケに出ない日も、LINEで「お天気は大丈夫ですか?」と聞いたりしてしまいます。そういうのもあり、今までとは違った仲間が出来ました。

――屋外といえば6月頭に亀田誠治さん主催のイベント『日比谷音楽祭』に出演されました。野音のステージは45年振りだったとのことでしたが、久しぶりに野音のステージに立たれてみていかがでしたか。

 最初に入った時、「こんな感じだったかな」と思いました。東京のど真ん中から発信していくんだというのが45年前の感覚だったと思います。それを亀田さんがここから改めて発信しようと考えて、どうせだったらジャンルもボーダレスで世代も関係なく、ここから色んなものが飛び出してきて、楽しんでもらいたいというものをやりたいと、名前がある人もない人もここからまた何かが生まれたらいいなと思いました。

――野外でのライブはお好きですか。

 フェスに最初に誘って頂いたのはくるりの岸田(繁)さんだったと思うんですけど、「私が出て行っても盛り上がらないんじゃない?」とお話したんです。でも、岸田さんは「そんなことないです。絶対にみんな喜びますから」と言って下さって。会場はちょうど梅小路機関区の跡だったので、私の好きな蒸気機関車がいっぱいあって、歌っている最中に汽笛が鳴るんです。それもあってすごく楽しかったです。フェスは皆さん緩い感じで見てらっしゃると思うんですけど、その時は地鳴りがするとはこのことなのというくらい、私が歌う番になったらサイが向かってくるかのような地鳴り、そんな経験は初めてだったのですごいなと思いました。

――機関車はお好きなんですか。

 子どもの頃から好きでしたね。熊本に住んでいた頃、鹿児島本線が近くを走っていたので、よく見に行っていました。。横浜に移ってからはSL同好会を作ったりもしたんですよ。ちょうどその時に小海線が廃線になる時で、男の子たちは観に行ったんですけど、夜通しで行くということもあって、私は女の子だからダメと言われて...。その時初めて「何で女で生まれたんだ」と思いましたから(笑)。

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