障がい、性、世代、言語、国籍などあらゆる多様性が溢れ、支え合う社会を目指す芸術祭『True Colors Festival -超ダイバーシティ芸術祭-』が9月から来年7月まで都内を中心に開催されている。10月22日には都内で音楽イベント『True Colors BEATS ~Uncountable Beats Festival~』が開かれ、音楽家の大友良英や水曜日のカパネラのコムアイ、アルゼンチンを代表する打楽器奏者のサンディゴ・バスケスなどがセッションライブをおこなった。

 場内には、様々なジャンルの音楽が奏でられていた。民族楽器を使って先鋭的な音楽などを届けるアーティストもいた。もともと代々木公園で開催される予定だったが悪天候のため会場を急きょ室内の施設に切り替えた。それでも多くの観覧者らが詰めかけ、子供から大人まで音楽を楽しんだ。

コムアイ

コムアイ

 この日出演したアーティストは多種多様。現在放送中のNHK大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』などの音楽を手掛ける大友良英や、日本とアイルランドにルーツを持つトラックメーカーでシンガーのErmhoi(エルムホイ)、日本の女性ソロアーティストのxiangyu(シャンユー)、ベーシストの岩崎なおみ、アルゼンチン歌手のフアナ・モリーナ、アルゼンチンのヒューマン・ビートボックス・アーティストのミロ・モージャ。そして、ゲストバンドには、水曜日のカンパネラとオオルタイチによるYAKUSHIMA TREASURE、ピン・ケーン・ブラユックバンドのMonaural mini plug(モノラルミニプラグ)、ゲストDJには岸野雄一。

 イベントの締めくくりは出演者、そして一般参加者がまざっての即興ライブ。バスケスが指揮者となり、セッションした。演奏の指示は、ハンドサインという決められた手振りによる合図。120はあるというサインを使い、リズムや音の強弱、復唱、パートなどの指示を細かく出していく。この日の参加者は19日・20日に開かれたワークショップで事前に計8時間のレッスンを受けた。その中にはコムアイもいたという。

大友良英

大友良英

 そのセッションはバスケスを囲むように、大友、コムアイらミュージシャン、そしてその後ろを楽器を持った一般参加者が囲んだ。一般参加者が持参した楽器には、バイオリンやミニスネア、ウッドブロックなどもあったが、なかにはほら貝、よさこい踊りなどで使用される鳴子、自作楽器もありユニークだった。

 そして、バスケスが手で合図を送る。まずは一定のリズムを刻む電子音。やがて鉄琴が加わり、ボイスパーカッション、ドラム、ベースが重ねていく。最終的には管楽器やギター、そして合唱も加わり壮大になった。ラテン系のリズムも見せたかと思えば、締めくくりは日本の祭りを思わせるリズムに変わるなどユニーク。

 一呼吸を置いてそれぞれが思い思いに奏でる。不協和音を、今度はベースがリズムを作り整えていく。電子バイオリンが情緒あるメロディを奏で、リズムはベースからコンガに変わる。そして、パーカションが加わる。鉄琴の演奏を合図に激しくなる。大友のエレキギターがうねり、更に合唱と掛け合った。参加者と会話でもしているかのようだ。

バスケス

 今度は合唱がリズムを作る。手拍子やパーカッションによって音が跳ねる。そのなかでコムアイの歌声は美しく響き渡る。オリエンタルさも感じるがどこかノスタルジーで透明感もあり、優しさが溢れていた。

 バスケスは会場の空気感によって指示を変えているという。決められた楽譜がないため、どういくかはバスケス次第。しかし二度と奏でられない生き生きとした曲を会場全体で楽しんでいるようだった。それは演奏・歌唱者だけでなく、心地よく体を動かす観覧者からも見てとれた。喝さいを浴びるバスケスも高揚感に満ちているようで、感謝の気持ちとともに「皆とこうして一緒になって演奏出来て嬉しい」と“一期一会”のセッションを楽しみ、喜んだ。

 『True Colors BEATS -超ダイバーシティ芸術祭-』は、来年7月まで様々なプログラムが用意されている。音楽だけでなく演劇やファッションなどに関するイベントも用意されているといい、今年9月には多国籍からなる障害者ブレイクダンスチームが日本人ダンサーとダンスバトルを繰り広げた『True Colors DANCE ~No Limits~』が催された。今回は年間を通しておこなうプログラムの第二弾で言語をテーマに、言葉を使わないハンドサインでセッションを実施。世代や国籍などに関わらず会場全体が音楽を楽しんでいた。

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