シンガーソングライターの果歩が10月9日、自身初の全国流通盤となるEP『水色の備忘録』をリリースする。新潟出身の19歳、大学生シンガーソングライター。今年2月にリリースした前作「光の街」は“ライブハウス愛”が詰め込まれたシングルとなったが、今作は高校時代に制作された曲や、mulletとして活動する會田茂一と中村圭作がアレンジした楽曲などシンセのサウンドも取り入れてバンドサウンドを進化させた1枚に仕上がった。成長過程の作品だと話す果歩に制作エピソードから、現在の心境について話を聞いた。【取材=村上順一】
新たな発見「力を抜いて歌うこと」
――前作「光の街」の反響はいかがでしたか。
遠くの方からSNSをフォローして頂いたり、反響がしっかりありました。インストアライブも初めてで、大阪にも行かせて頂いたんです。インストアは無料ということもあって、中高校生ぐらいの子たちがたくさん観に来てくれたのが印象的でした。ライブハウスだと高校生のお客さんは少ないんです。
――若い人たちに見てもらえるきっかけにもなったんですね。さて、今作はアレンジャーの方々にすごい人達が参加されていますね。
會田さんと中村さんのお二人は、私の音楽に新しいエッセンスを入れて頂けるのではないかというところで、紹介して頂いて、「テトラポットとオレンジ」をアレンジして下さった丸山漠さんは、出身が私と同じ新潟で、楽器屋のスクールでギターを習っていた先生のお知り合いで、紹介して頂きました。
私が上京する前におこなったワンマンライブでも、ギターを弾いていただきました。それをきっかけに以前にもアレンジをしていただいたんですけど、今回『水色の備忘録』を全国流通することになったので、またアレンジしていただくことになりました。
――久しぶりの丸山漠さんのアレンジはいかがでしたか?
漠さんらしいアレンジだなと思いました(笑)。私はアコギの弾き語りでバラードっぽい感じでお渡しさせて頂いたんですけど、「こう来たか!」という。
――「テトラポットとオレンジ」は<もし明日世界が終わるなら君と居たい>となかなか壮大な感じがあります。映画とか小説がきっかけだったりしますか。
映画や小説をきっかけにストーリーを考えることがあります。ちょうどこの曲を作っていた時に趣里さんと菅田将暉さんが出演していた映画『生きてるだけで、愛。』を観ていて、世界の終わりというほどではないんですけど、人生の終わりを作品から感じたんです。私はそういったところから曲を書くことが多いです。
――テトラポットは馴染みがあるんですか。
実家の近くの海に、テトラポットがたくさんあります。父は釣りが大好きで、朝早起きして、そのテトラポットがあるところに一緒に付いて行ってました。オレンジはイメージで書いたんですけど、この曲を聴いた両親から「これ絶対、新潟の海でしょ」って言われました(笑)。
――聴く人が聴けば情景がわかるんですね。この曲のお気に入りポイントはありますか。
この曲の1番、2番は物語、小説を意識して書いたんです。それもあってサビまでの流れはこだわったポイントです。
――さて、1曲目に収録されている「紀行日記」は會田茂一さんと中村圭作さん、お二人によるアレンジです。
デモとは全く違う感じに仕上がりました。今までバンドサウンドを中心にやってきていたので、シンセの音とかイメージができなかったので、もう完全にお任せでアレンジしていただきました。アレンジされたものを聴かせて頂いて、バンドサウンドだけじゃないんだなと、新しい扉を開けてくれたような感覚がありました。
――その新鮮なアレンジの中で歌に変化はありましたか。
ありました。今まで強く張って歌うことが多かったのですが、この曲のサビは力を抜いて歌ってほしいとアドバイスを頂いたので、その通りに歌ってみました。家で歌っているような感じになったかなと思います(笑)。こんなに柔らかく歌っても大丈夫なんだなと新しい発見がありました。この曲のサビがけっこうキーが高くて、デモでは勢いで出していた部分もあったんですけど、力を抜いても出せることも分かりました。
――この曲の主人公はどんな方なんですか。
私と同い年かちょっと上くらいのイメージなんです。大学生で就職する前とかの感じで、本当はもっと遠くへ行きたいけど、就職活動などで忙しくて行けないみたいな。未来のことを考えたらあまり時間がないとか考えてしまったり。
――時間がないと。
時間は考えてしまいます。もし、音楽で成功したら自由とかなくなってしまうのかなとか…。なので、行きたいところには今のうちに行っておいた方が良いのかなとか考えてしまうんです。
――ちなみに今、不安なことはありますか。
その時々の不安はあるとは思うんですけど、寝たら忘れるタイプなんです(笑)。私は基本ポジティブなので、未来への不安はあまり感じていないかも知れません。