the pillows・山中さわお「想像を上回った」結成30周年記念映画は人との縁
INTERVIEW

the pillows・山中さわお「想像を上回った」結成30周年記念映画は人との縁


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年09月13日

読了時間:約15分

初めて味わう苦労もあったサントラ制作

the pillows・山中さわお

――主人公・祐介の「何かに本気で向き合う」という姿勢が伝わってきて、それがサントラと凄く馴染んでいました。

 サントラは凄く苦労しました。使われた楽曲の他に膨大な量の曲をボツにして。初めての経験でしたし、ピアノやストリングスで作るのも大変でした。そうやって凄く苦労して作ったものが秒殺でボツになるんですよ! 監督やプロデューサーは、僕が思うよりシンプルなものが好きで。僕は音楽が脇役になるものを作ったことがないので、頑張って音楽を作っちゃうんですよ。すると「これは芝居よりも音楽が目立ちすぎるので、もっとシンプルにして欲しい」とか。例えば、僕は規定秒数内の楽曲は最後に「終わるぞ」というアレンジにしちゃうんです。

――一作品として成立する感じで。

 そうすると、芝居よりも先行して「この場面が終わるよってバラすのはやめてくれ」とか、考えてもいなかったことがいっぱいありました。ただ、世の中の映画を観ていると、全ての映画音楽がシンプルではないので、たまたま今回の監督とプロデューサーの好みがシンプルなんだなと。あと、リクエストの仕方や僕への接し方は凄く優しいんですけど、ハードルはメチャクチャ高いというか(笑)。「こうしてくれませんかね…」と、柔らかく言ってくるんですけど、「要するにボツですね?」って。

――厳しいですね。

 the pillowsだと、僕が作ったものにダメ出しをされる経験がないので、良いと思って作ったものがダメと言われたらどうしていいかわからないんです。オクイシュージ監督も「これではない」ということはわかっているんだけど、音楽用語はもちろんわからないので、「もう少し寂しい感じ」と言われても、「寂しい感じで作ったけど…」と、専門用語が出てこないので伝わりづらいんです。どの楽器、拍子、コード進行かと言ってくれないと制作スピードが遅くなるんです。本当に暗闇の手探り状態で出しても「これではない」となるので、けっこう苦労しましたね…。

――なるほど、そういった種類のご苦労だったのですね。

 あと、ピアノやストリングスなど、普段は使わない楽器を入れたので。

――そういったことは感じさせない自然さがありました。最初の「祐介のテーマ」も、心に火が付く前の祐介の心情が表れていました。

 最初に凄く時間をかけて作った凝った曲があったんですけど、それも秒殺でボツになりました(笑)。サントラとしては失格だけど、普通の音楽としてのインストとしてはボツになった方の曲が気に入っています。でも芝居の邪魔をしてしまうので、サントラとしてはダメだと。あくまで映画のための音楽なので、残ったものがベストなのは僕も納得しています。

 絵がなければ音楽的という。芝居には合っていないということですね。似合わない服を着せているというか。ハンガーにかけている状態だと、その服の方が気に入っているという感じです。でも、その劇伴を作っているときに、たまたま『風の谷のナウシカ』をテレビで観たんです。音楽は久石譲さんでサウンドトラックの第一人者じゃないですか? メチャメチャ凝った音楽でしたけどね(笑)。

――何が正解かわからなくなりますね(笑)。

 とにかく今回は監督の言うことが正解なので。イニシアチブを握る人がいて作るのが良いと僕は思っています。the pillowsもそうやっていますし。みんなの意見をちょっとずつ合わせるとだいたい平均80点みたいになっちゃって、100点超えみたいな魔法が働かないと思っているんです。だから全ての完成形がわかっている人に委ねたほうが良いと思ってやりました。

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