LACCO TOWER「信念が確立されているほど強いものはない」目指すべき理想像へ
INTERVIEW

LACCO TOWER「信念が確立されているほど強いものはない」目指すべき理想像へ


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年08月23日

読了時間:約14分

声はヴィンテージになる

――それから作品全体を通して松川さんのボーカルの質感が柔らかくなったような気がしました。

松川ケイスケ 今回のアルバムは結構そういう感想があるんですよ。全体を通していろいろな歌い方にチャレンジさせてもらってはいます。大介がアンプのセッティングを少し変えて「どっちがいいと思う?」と聴いてくれるんですけど、その作業と同じような流れを自身の「声」でやることができました。歌い方のセレクトの変化が質感に影響を与えたのかもしれません。

 例えば「必殺技」は、とてつもなく”がなってる”テイクもあるんです。最終的に真一ジェットと「印象的にはどっちがいいかね?」と話し合った結果、今のものになりました。歌って印象なので、周りの音と混ざったときにうまいことザラっと聴こえたほうが良いとか。

 1曲目ならこういう感じだけど、それだと濃すぎるからこうしようとか。他にも「若者」の次に来る曲だから、ギターとドラムから始まるけど歌いだしはどうしようか、と考えたうえで選んでいます。結局、本人以外よくわからなくて、他の人は「まあ、どっちでもいいんじゃない?」ってなるんですけど(笑)。

細川大介 みんなこだわるところって違うんですよ。音程にこだわる人もいれば、リズムにこだわったり、声ならブレスの入れ方を気にする人もいる。それは本人しかわからないので、本人がどうしたいかというところに行きつくんじゃないですかね。でもリハとかで昔の曲をやるときとか歌い方、変えてるよね?

松川ケイスケ リハはね。リハは練習に使ってるみたいな…まあ当たり前なんだけど(笑)。いろいろな歌い方にチャレンジしてますね。

細川大介 「あ、今日すごいファルセット多いな」とか。そんなに多いってことはあえてやってるんだろうな、と思ったり。

松川ケイスケ そう。練習してるんです。

細川大介 僕もそうなんですけど、昔の曲だったとしても同じことをずっとやりたくないんです。それでケイスケもいろいろ試してるんだな、と。リハとかレコーディングでチャレンジしているからこそ他の曲にも反映されるのかなと思います。

――昔の曲でギターソロを変えたりもしますか?

細川大介 僕はわりと変えちゃいます。

松川ケイスケ 音は毎回違いますね。いい意味ですけど。

細川大介 音楽続けてるのも欲求があるからなんですよ。満足できちゃったら辞めちゃうかもしれないと思うくらい。僕が加入した7年前の曲をやるにしても、まったく同じには弾きたくないんです。その時の自分がどういう風に弾きたいかの方が大事なので。でもあまり変えちゃうと不満なお客さんもいますからね。

松川ケイスケ 好きなアーティストでも、アレンジが効きすぎて何の曲かわからないこともあるよね(笑)。

細川大介 あのソロが聴きたかったのに、ずっとノイズ出してたとか(笑)。それでがっかりしたこともありました。でも変えて演奏する気持ちもわかるんですよ。葛藤のなかでアレンジをしているんじゃないかなと。

松川ケイスケ 戦っている感じがいいですよね。「これだから」と決めるのもいと思いますけど、迷いながら進んでいくバンドの方が僕は色っぽいと思う。そういうバンドでありたい。

 THE YELLOW MONKEYの吉井和哉さんが「声ってヴィンテージになっていくから、そこを楽しんだ方がいいよ」仰ってたんです。すごくいい言葉だなと。今の音楽はデジタルですけど、声って生活や考え方とかすべてに関係してきますから。今作はそんなことを考えながらボーカリストとして録音できたなと思います。

――いつまでも挑戦できることがあるということがあることが素敵ですね。

松川ケイスケ 最近は悔しい夢で目が覚めることがあるんです。そういうことはここ数年なかったんですけどね。まだまだ音楽的に満足してないんだなと改めて思ったり。「もっと俺らってこうなれるんじゃないかな」とか17、18歳くらいで考えそうなことですよね(笑)。意外と僕もそういうところがあるんだなとその日は眠かったです。

――「地獄且天国」は『伊勢崎オートレース2019』のイメージソングだから、このタイトルなんですか。

松川ケイスケ よく訊かれるんですけど、曲が先なんですよ。

細川大介 この曲は最初タイアップ用の曲じゃなかったんですよ。でもオートレースさんが曲を聴いて「絶対これを使わせてください」ということで。それで急遽これに決まったんです。そのときは歌詞ももうできてました。

松川ケイスケ もしかしたら「地獄か天国か」みたいなところがピンときたのかもしれませんね。

細川大介 担当の人は今までのLACCO TOWERの曲で一番好きみたいです。30回言われました(笑)

――ミュージックビデオもシックな感じでした。

松川ケイスケ 今回の監督さんはもともとライブ映像を撮る方が多いんです。映像の切り方とかカット割りの仕方、映し方がすごく好きだったので声をかけさせていただきました。時間のないなかで嫌われるくらい無理を言いましたね(笑)。3日間で6回くらい編集してもらってます。

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