演じる楽しさを知った――、中村蒼 転機与えた恩人と再び:お気に召すまま
INTERVIEW

演じる楽しさを知った――、中村蒼 転機与えた恩人と再び:お気に召すまま


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年08月08日

読了時間:約6分

 中村蒼(28)が7月30日に上演が始まったシェイクスピアの恋愛喜劇『お気に召すまま』(東京芸術劇場は8月18日まで、ほか各地で上演)に出演している。一般的にはユートピアとされている物語の舞台・アーデンの森を、演出を手掛ける熊林弘高は「人間のあらゆる性的欲望がうごめく暗闇」と解釈。官能と性のカオスと化した森の中で性差を越え燃えあがる恋模様を描く。前公爵の廷臣・ジェイクスを演じる中村が、熊林作品に出演するのは2017年上演の舞台『アザー・デザート・シティーズ』以来で「転機になった」と語る作品。2年ぶりとなる熊林作品出演に「嬉しい」と語った中村に話を聞いた。【取材・撮影=木村陽仁】

“恩人”熊林弘高、転機となった2年前の作品

――出演が決まった時の気持ちを教えてください。

 熊林さんとは、2年前に舞台でご一緒して、こうしてまた呼んでいただけて、ご一緒できることは嬉しいです。シェイクスピアの作品は、僕自身やったことがないので、それに対する不安もかなりあります。ただ、ほかの出演者の方が素晴らしい方たちなので、そういう方々とやれるのは嬉しいですし、楽しみです。

――役柄にはどう向き合っていますか?

 常にこの作品を考え、役柄も自分の中に存在させている状態です。正直、不安なところがおおいですが、演出は熊林さんですし、きっと導いてくれるという安心感があります。

――ジェイクスは哲学者的な要素もありますが、印象は?

 魅力的な男だと思います。女性男性問わず魅了するような、セクシーな人間だなと。台本を読んでいてもそう感じますしね。ただ、僕がそれを出せるかは別として。

――作品の紹介文には「あなたは本当に自分の思っているようなあなたですか?」「あなたが愛するのは本当にその人ですか?」と問いかけている一文があります。2006年に舞台「田園に死す」で主演デビュー後、俳優として活躍されていますが、今のご自身は想像できましたか?

 いや、できていないです。

――数年前に出演された番組で、人生の浮き沈みをグラフで表していました。それによれば14歳の時にガクンと落ちて、25歳で上がっている感じでしたが…。

 正直、グラフで言えば決して上の方ではないですよね。だけど、2年前に熊林さんの作品(アザー・デザート・シティーズ)に出て、それがすごく楽しくて。それは単純にお芝居の指導を受けるのがすごく楽しくて。僕自身がそれまで舞台などの経験が少なくて、年に1回ぐらいのペースだったんです。映像もそうですけど、全部が全部楽しいというか、自分の好きなことばかりじゃなくて。やっぱり大変なこともあるし、自分が思っていることと、相手が思っていることが全然違っているときもある。むしろその方が多くて。

 2年前の舞台は、自分にとって初の海外戯曲で、熊林さんはいろいろと教えてくださって、あの時味わった満足感というか、もちろんお芝居は大変だし、熊林さんはいろんなことを見逃さないので、自分のなかで固まっていないとそれを暴いてしまう人なので、緊張感はありましたけど、それよりも充実感が勝って。それが今夏に味わえるのはとても嬉しい。そういう意味では今は充実している、良いレベルにいますね。

――舞台が楽しいと思えたのは以前から? それとも2年前の舞台がきっかけで?

 いや今も大変だなとは思いますし、この仕事が自分に合っているとは思えないです。それでもこの人とまた仕事でご一緒したいなと思える人は何人かいて、熊林さんは間違いなく入っています。

――その舞台で新しい自分が見出せた感覚でしょうか?

 その時はとにかく夢中だったので、客観的に見れていないんですけど…。難しいものだと結構、考えこんじゃうタイプなんですよ。こうしたほうがいいんじゃないかと。でもすごく楽に考えられたというか。人間ってすごくいろんな感情がうごめいているし、「この人ってこういう人だよね」「この役はこういう人間だからこう演じないといけない」というのがあまりなかったというか。「一人の人間はいろんな顔を持っているから、いろんなことをしていいんだ」と決めつけなくてよいことを学びました。それでも今回が2回目で、前回教えてもらったことを最初からできるかといったら難しくて、2回目は2回目で怖い気持ちはあります。「前回がなんだったんだ」と思ってもらわないようにしないといけないというか。

――それからの2年間はどういう期間でしたか?

 私生活はかなり変わりましたね。でもお芝居に対する気持ちはあまり変わらないですかね。現場に行ったらやらないといけないし、終わったら気持ちを切り替えて、そういう感じで過ごしていました。

中村蒼

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