俳優・中村蒼(30)が、現在放送中の日本テレビ系ドラマ『ネメシス』(毎週日曜夜10時30分)に出演している。広瀬すず演じる天才助手、美神アンナと櫻井翔演じるポンコツ探偵、風真尚希の凸凹バディが、探偵事務所ネメシスに舞い込む難事件を次々と解決していくミステリー。中村は、伝説の刑事に憧れる警捜査一課の刑事・千曲鷹弘(通称・タカ、演・勝地涼)とペアを組む四万十勇次(通称・ユージ)を好演中だ。昨年はNHK連続テレビ小説『エール』に出演するなど活躍目覚ましい中村。30歳を迎え、本作で13年ぶり日本テレビ連続ドラマ出演にも果たした。中村はどのような思いで臨んでいるのか。
燃え尽き症候群どころかまだ燃えている
2年前の夏。シェイクスピアの恋愛喜劇『お気に召すまま』に出演した。官能と性のカオスと化した森の中で性差を越え燃えあがる恋模様を描く作品。中村は前公爵の廷臣・ジェイクスを演じた。
演出を手掛けたのは熊林弘高氏。熊林氏作品は2017年上演の『アザー・デザート・シティーズ』にも出演している。中村はこの舞台で芝居への意識が変わる転機を得た。その熊林氏が演出を手掛ける作品ともあって「嬉しい」と喜んでいた。
それからの2年、中村の活躍は目覚ましい。その代表例に、NHK連続テレビ小説『エール』の出演がある。主人公の古山裕一(演・窪田正孝)と佐藤久志(演・山崎育三郎[)とで「福島三羽ガラス」とも言われた作詞家・村野鉄男を演じた。
「かなり濃い撮影期間でした。死ぬ間際に走馬灯に出てくるぐらいの作品で、皆で乗り越えた感じもありますし、何にも代えられない大切なものになりました。1年以上の時間を費やしている分、演じ方を変えなくても自然とスイッチが切り変えられるようになっていました」
中村自身は「朝ドラ」への出演を諦めかけていた。
「出演が決まった時は嬉しかったです。欲している時は手が届かないけど、あきらめかけていた頃に出演できることになって。そういうものなのかなって(笑)」
「濃い撮影期間」ともあって、しばらくは役から抜けられなかったという。
「(藤堂清晴役の)森山直太朗さんが『神様のカルテ』を見て下さったんですけど『福島弁が抜けていないね』って。現場でも記録さんに言われていて。他の方達は燃え尽き症候群になっているけど、僕はそれどころかまだ燃えているかもしれないって(笑)。気付かない所で抜けていないところがありますね」
それを経ての本作。寡黙という点では似たようなところもあるが、村野鉄男とは異なるキャラクラターを演じている。
軽やかなタカ&ユージ、最初は不安も
『ネメシス』では、警捜査一課の刑事、通称ユージの四万十勇次を演じている。勝地涼が演じる“相棒”千曲鷹弘(通称・タカ)とあの伝説的刑事に憧れており、“タカ&ユージ”とも呼ばれている。ユージは冷静沈着さがあり、正義感と男気に溢れているが少し抜けているタカを陰ながらサポートする。
YouTubeの日テレドラマ公式チャンネルの動画で中村はこう語っている。
「ユージには軽やかな感じというイメージがあるので、飛び越えられるものがあったら飛び越えて、階段からはなるべく2段前から飛び降りようと思います(笑)」
タカ役の勝地は同チャンネルの動画で、“ユージ”を演じる中村の印象を「意外とシャイで、その彼が一生懸命ユージっぽくやっているのがたまらない」と笑顔で明かした。
「そう言って下さるのは嬉しいですね」と表情を崩す中村は「話すのが苦手」と自身でもシャイな一面があると認めている。しかし、言葉には出さない芯の強さがある。そんな彼らしさがユージには表れている。
ただ、当初は演じられるか不安もあったという。
「コメディ要素が強いキャラクターをやったことがなかったので不安でした。撮影も最初の方はフワフワしている感じもあって。でもキャラクターの本人たちはかっこつけている。それが周りには面白く映っていているので、いかに真剣にかっこつけるかが大事だと思いました」
真剣にやっている姿が面白く映る、それは喜劇の大事な要素でもある。いわば『ネメシス』にはそうしたものも含まれている。
「毎回個性豊かなキャラクターが出てくるのでタカ&ユージが埋もれないようにした結果がああいう形になりました(笑)。でも狙い過ぎずると『ネメシス』のオシャレ感から脱線しそうなので程よいバランスが難しいです。でもそれは監督が出したOKを信じてやっています」
勝地との信頼関係
バディを組む勝地涼とは、タカ&ユージの息の合ったコンビ感を出すにために試行錯誤を重ねた。
「当初は、勝地さんもそうだと思いますが、探り探りでした。勝地さんはこうしようとしているのかなって察しようとしていましたが、今はちゃんと口に出して言える余裕も出てきて。途中からは僕もコミュニケーションを取った方がやりやすい役だなと思って、勝地さんにも積極的に声をかけるようになりました」
共演者として対峙して引き出されるものはある。
「台本を読んで想像しているときと、いざ相手の方と対峙すると変わることもあります。お芝居は自分がやりやすいようにというよりかは相手の方がやりやすいようにするものだと思っていています」
相手への配慮は特に、今回の様な息の合ったコンビという役柄では大きく影響を与える。
「好き勝手に芝居をしたらまとまりがないので、ワンシーンでもリハーサルが終わったら話し合いはしています。こういう風にしていたら僕はこうしていますとか、その逆もあったり、自由にやっていたそうで実はそうやっています。でも気兼ねなく意見交換できているのは勝地さんのお陰です」
役柄としてだけでなく、共演者としても“タカ&ユージ”の信頼関係は構築されている。
シリアルのなかでの和らぐ安定の味
コミカルに見えるタカ&ユージだが、第3話から変わってきた。1話と2話では、お手並み拝見するかのようにチームネメシスを一歩引いて見ていたが、第3話の連続爆破事件では真相を解明するために、共に行動する。
「ついに!と言う感じです。タカ&ユージが事件に立ち向かい刑事(デカ)らしさが出てくるのでまた新しい一面が見られると思います。2人が犯人を追い詰めるようなシーンもあるので、いつになく熱量高めに犯人を追い詰めるところも見て欲しいです」
回を重ねるごとにシリアスになっていくという。デカとしての熱量も上がっていく2人だが、大事な軸はユーモアさ。
「シリアスになっていっても2人だけは変わらないトレンディ感があって、それは変わらない良さでもあると思っています。観てくれる人たちが、この2人を見て『待ってました!』と思ってもらえたら嬉しいですね。実際に撮影現場でもスタッフさんが楽しく撮っているような気もするので、シリアスな場面が増えていくなかで和らぐような安定の味という存在になれたらいいですね」
ただ、そんな緩和剤のような役割だが、所々で見せるデカとしての顔も注目して欲しいと語る。
「2話では、殺人容疑は免れたものの詐欺罪で捕まる容疑者が出てきました。施設で育った容疑者に『ちゃんとお別れの挨拶をして来いよ』というセリフがあって、そういう所々にある人情味のある姿や刑事らしい姿も見て欲しいです」
「楽しみ」な未来
中村にとっては13年ぶり日本テレビ連続ドラマ出演だ。オフィシャルコメントでは「空白の13年を埋めるつもりで、13年の集大成をぶつけたいと思います」と語っていたが、「気負いせず目の前のことを頑張るのみです」と気を引き締める。
「セットや登場人物の衣装など、監督やスタッフさんの細部のこだわりがあります。そうしたこともあって、なんともないシーンでもかっこよく見えますし、オシャレだったりします。それはスタッフさんの力のお陰。『ネメシス』の良い所は、もちろんミステリーやユーモアさもありますが、この画力も一つだと思います。それは映画のスタッフさんが撮っているのも大きいと思います」
監督を務めるのは、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』や『AI崩壊』などの大作を手掛けてきた入江悠監督だ。
「決まった中でしたら自由にやらせていただけています。でもそれはそれで試されている感じもあるので緊張もあります。でもある一定の緊張感のなかで自由にやらせていただけるのはありがたいことだと思っています」
熊林弘高氏と同じく入江悠監督らからも刺激を受けている。
そんな中村に改めてこの2年を振り返ってもらった。
「まだまだですが、素敵な方たちと仕事ができて嬉しい分、その人たちがいかにすごいかを肌で感じていますのでより頑張らないとと思っています。30歳になって、周りの人から節目でこれからは?と聞かれますが、これからについて考えるとちゃんとやっていけるかという不安にはなる部分もあって。もっともっと実力をつけていきたいと思う」
それでも「楽しみ」という期待の方が大きい。
「これからの10年を考えてきたときに、これまでの10年を振り返って、素敵な方たちとご一緒出来たので、これからもそういう出会いが待っているのかなと思うとワクワクする気持ちです」
チームネメシス、そしてタカ&ユージの展望もそうだが、今描かれている、そしてこれから描かれる中村蒼の未来も見どころ満載といえそうだ。
(おわり)
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