今までの演歌ではない「春な女」
――6月にリリースされた「春な女」は“ニュー演歌”と呼んでいるそうですね。
歌詞とメロディは演歌の王道という感じなんですけど、アレンジが凄く変わってるんです。「このリズムで演歌歌うんや」みたいな。「この伴奏で歌にはいるんだ」というギャップが逆に凄く気持ち良くて、今までの演歌ではないなと感じて“ニュー演歌”とくくりにしました。
――作詞に水木れいじさん、作曲に中村泰士さんですが、このお2人の組み合わせは珍しいみたいですね。
珍しいですね。中村先生はいま一番間近で僕の歌を聴いてくれている方なんです。だから僕の一番響きの良い声の高さなど凄くわかっておられて、その特徴を出せるような歌を作って頂けるので、素直に歌えるんです。
――そうするとレコーディングもスムーズに?
普通はデモテープを聴いて、それからカラオケ録りをして、レコーディングするまでくらいしか僕達はしないんですけど、今回の場合は何もない状態から中村先生と一緒に「詞はどうしよう」とか、そこから始まって。デモテープを作るときも僕が歌いながら作っていきました。それが一番良いところの高さでエレキギターが入るとか、すごく僕に寄り添ったアレンジになっています。大輔さんの歌声に合わせて調整されたアレンジという。アレンジってそこまで考えられているんだという勉強にもなりました。
――ちなみに大輔さんはご自身で作詞作曲はされないのでしょうか。
しないですね。20周年までは演歌歌手おおい大輔という感じできたんですけど、ここから先は振り返らずに、演歌歌手というくくりから音楽的なくくりでいけたらいいなと。アーティストや音楽家、みたいなほうでスタートできたらなという感じはあります。
――歌詞には女性の奥ゆかしさがあります。
2番の歌詞なんか特に、いまどき三歩下がって歩く女性は珍しいと思うんです。今は「あんた荷物持って」くらいな時代に「三歩下がって歩く女」なんておらへんやろなと思いながら(笑)。そういうギャップも、全部がマッチしているかなと。
――タイトルも女や人ではなく「ヤツ」と読むのがインパクトあります。
タイトルも最初は「おまえ一人」という、演歌っぽいタイトルが付いていたんですけど、インパクトがあったほうがいいんじゃないかということで、水木先生と中村先生と色々相談して、「春な女(はるなヤツ)」なりました。演歌って歌詞に出てくる言葉がタイトルになることが多いんですけど、最初は「春な女(はるなひと)」と話していたんですけど、中村先生が「『ヤツ』でいいんじゃない?」と。ちょっと乱暴な感じなですけど、インパクトもあったほうがいいということで。
――特に気に入っているフレーズはありますか。
「春な女」は、<おまえひとり>のところが僕の特徴が一番出せるように中村先生が作ってくれたんです。僕はビブラートに特徴があるらしくて、それがそこにスコンとはまるように作られています。だから最初に歌ったときに「ここで自分が出せるんや」と思いました。
――カラオケでこの曲を歌う際のコツはありますか?
縦のリズムというか、カラオケがそうなっているので、気持ち良くリズムにジャストに入っていくと気持ち良いと思います。
――演歌の歌いかたらしい、リズムが前後する感じではなくジャストなのですね。
僕がジャストだと思っていたのはちょっとずれていたみたいで(笑)。中村先生が「お前、ジャストだと思って歌っているけどちょっと後だぞ」と(笑)。
――ややタメて歌っていたのですね。
そう。だから速め速めに歌ったら「これ、気持ち良いですね」と。言われないとわからなかったんです。「今まで(ジャストに)入ってなかったん?」って、最近気づいたんです。中村先生のアドバイスで凄いなと思ったのは、「歌っているとき、自分の歌を聴き過ぎているんじゃない?」というのがあって。自分の歌ではなくオケをメインで聴いて歌ってみると、キッチリジャストに入るんですよ。今までちゃんとカラオケ聴いてなかったんやなって(笑)。新しい気付きがありました。
――20年目にして新たな気付きですね。
不思議な感じですけど(笑)。いままで歌っていた他の歌も、自分の歌をなるべく聴かずにカラオケをメインに聴きながら歌うと、あまり伸ばしたりできなくなるんです。ちゃんとカラオケがそういう風にできているんですよね。歌重視で聴いて歌うと、自分は気持ち良いんですけど、聴いている人はたぶんカラオケとピッタリのほうが気持ち良いんじゃないかなと思います。最後のフィニッシュのところはまた違うんですけど。それは天童さんも大事にしていていて、3番の終わりのフィニッシュはドーンと来るような感じですから。あまり考え過ぎても、というのもあるんですけど今回はいろいろ勉強になりましたね。