遊助「みんなを喜ばせたくて頑張って歌う」ファンのために駆け抜けた10年
INTERVIEW

遊助


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年07月03日

読了時間:約12分

「そのときの感情って二度と戻ってこない」

遊助

――以前のことが正解だったか確かめるために、過去の曲を聴いたりVTRを見返したりしますか?

 全然見ないし、振り返らないですね。見て気付くこともいっぱいあるのかもしれないですけど、結局次を見ています。5年後、10年後にこういう風になっていたいという思いの逆算の中でやっているので、過去のものを見ても自分の思っている以上のことはないので、見てもしょうがないというか…。「10年後にこんな感情で見るだろうな」と思っていたのと変わらないんです。

――作品が出来たときとその後のイメージは変わらないと。常に明確に未来をイメージしているのでしょうか?

 漠然とですけど。「こんな感じになりたいな」となるためにはどうするべきかと。もちろん先を見過ぎてということはなく目の前のことに必死なんですけど、ちょっとだけ先を見て予想しておこうという気持ちがあるんです。お芝居やバラエティなど色々なことをやらせて頂いているので、自分のやるべきことをスパンと決めないと、全部が追いつかないので。ツアーひとつでも、スタッフさんなど一人ひとりのフォローもそうだし、照明や演出にセットリストなども24時間365日けっこう考えているんです。レギュラー番組やMCなどもあるなかで、振り返っている場合じゃないというか(笑)。

――今が最優先でしょうか?

 今が最高、というのを狙って頑張るんですけど、過去のベストはその時代の景色があっただろうし、そのときの感情って二度と戻ってこないだろうから。「だからそのときにこういう表情したんだろうな」とか、「こういう歌詞が出たんだろうな」とか思っていても、意外にそのときの感情ってそのときの僕しかわからないんです。思い出そうとしたって無駄な時間になっちゃいそうで。

――その時の作品は、そのときの感情が形になったものなんですね。

 その時代の流行りもあるし、そのときに見た景色や感情を思い出すことはできても、思い出しているつもりだけであって、そのときの僕は一生思い出せないんです。だから「考えてもしょうがないかな」って思うんです。

――確かに「その瞬間の印象」と「思い出す印象」は別物ですね。常にその瞬間の思いを歌詞にしているのでしょうか?

 「History」の各曲は自分の物語を書いたんですけど、他の曲は全て自分の物語ではないですね。その場その場の感情で、何かにスポットライトを当てるんです。「誰かがこんなこと言ってたな」とか、「この人をドラマにしてみよう」とか。「こういう人達って最後はどんな言葉を待っているんだろうか」と考えながらサビに落としていったりします。

――リアルタイムの瞬間に凄く集中しているのですね。一瞬一瞬が作品に繋がるモチベーションはどこから生まれますか?

 そこなんですよね…。僕も40歳になって、みんながどんなモチベーションでやっているのか改めて色んな人に興味を持ち始めたんです。逆にどうやってモチベーションを出しています?

――家族のため、仕事に対する矜持、趣味が楽しみ、などが一般的でしょうか。私は趣味もないので悩むところです…。

 僕も趣味がないんですよ! 趣味がなくて困るということはないんですけど「趣味がないってなんなんだろう?」と思います(笑)。

――では遊助さんが好きなことは?

 ゴルフが好きで最近行っているんですけど、ゴルフをやることよりも一緒に行く奴らが好きなんです。結局“人”が好きなんですよね。こういう取材での会話も好きですし。強いて趣味を挙げるとしたら「心配」です。

――心配が趣味!

 心配性というか、気になるんです。「あいつ元気にしているかな?」とか。

――やっぱり“人”が関わってくるのですね。「千羽鶴」も心配から生まれた部分もあるのでしょうか? 

 そうかもしれないですね。オラオラな感じなのに「あいつのLINEの返事の感じ、大丈夫かな?」とか、メチャクチャいっぱい心配があるんですよ! 常に良いものにしたいという思いがあるから気になることがたくさんあるんです。

――そういう気質が見られるということは、遊助さんは親分肌なのでは?

 僕は副キャプテンというか、そういう感じかもしれません。ボスは「いいよ、好きにやって」というところもあるじゃないですか? 僕は策を立ててイチから組み立てたいんです。ボスはドンと構えててという感じなので、一人二役という感じなんです。それは趣味ではないわけですし、やっぱり趣味って難しいなと思います。

――車や楽器を買って楽しむというのも趣味の一つですよね。遊助さんはそういう物欲が含むような趣味も薄い方でしょうか?

 車や腕時計が欲しいとか、そういうのも昔からないんです。感覚として格好良い車だなと思うことはあるんですけど、「この車に乗るのが夢だ」というのがあまりないんです。釣りとかサーフィンとか楽器とかに没頭できる人が凄く羨ましいんです。僕はそういうのが全くないから。

――作詞などは、やりたくて没頭するというモードとは別?

 なんと言うか、僕は趣味と仕事が合体しているのかもしれません。他の歌手の方などと話すと、みんな音楽が好きなんですよ。僕ももちろん好きなんですけど、ライブが気持ち良いとか一回も思ったことないんです。自分が行きたいと思ってカラオケに行ったこともないし。

 僕は「みんなが喜んでくれるなら」という感じで歌うんです。自分が好きで歌うというよりも、みんなを喜ばせたくて頑張って歌うんです。ライブでは自分が楽しむ余裕がないというか。「あっちにおじいちゃんがいて、こっちには子供もいる、みんな楽しんでるかな?」という風に必死で。だから自分が気持ち良いというのはないんです。みんなが楽しそうで「仲間に入れて楽しい!」というのはあるんですけど、「自分がライブをやって最高!」という感覚ではないんです。

――それって究極のサービス精神だと思います。

 みんなに言われますよ。「そんなの遊助くらいだよ」って。

――武道館などの大きい会場でライブをしたら、さぞかし気持ち良いんだろうなと思うのですが…。

 自分の気持ち良さより、みんなが楽しんでくれることが好きなんです。必死なんですよ。「楽しんでる?」という感じで。飲みに行ったりしても「昨日は楽しかった?」って確認しますし。「ちゃんと帰れた?」って。

――確かにそういう方はいますが、遊助さんの場合はそれの究極版ですね。

 その延長線がライブというか。なんなら集まってくれたお客さん達を全員家まで送りたいです(笑)。ライブの帰りに何か別の嫌な思いをしたら、ライブで楽しんでいたのが台無しじゃないですか? お願いだから楽しい気持ちのまま無事に帰ってねって思うんです。

――「今日のライブは大成功だったな」と、自分でうっとりしたりしないんですね。

 普通に一人でラーメン食べて帰ったりします(笑)。

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