majiko、孤独を癒すための孤独に敬礼を ツアー初日
撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
シンガーソングライターのmajikoが6月22日、東京・渋谷WWW Xでツアー『majiko PRESENTS “寂しい人が一番偉いんだ” RELEASE TOUR 〜SALUTE YOUR LONELINESS〜』の東京公演をおこなった。「孤独に敬礼を」という意味のタイトルがつけられた当公演は、majikoの最新作『寂しい人が一番偉いんだ』にちなんだもの。舞台は東京を皮切りに愛知、大阪と続いていく。majikoの情感たっぷりな歌唱と、それによる癒しを感じたツアー初日のもようをレポートしたい。【取材=小池直也】
この日は雨が降ったりやんだりの梅雨空。しかし、フロアは多くの人がひしめきあう盛況だった。開演時間を少し過ぎて、BGMの音量が不意に上がる。バンドメンバーに続いて、ストライプの衣装をまとったmajikoがステージイン。静寂のなかでドラムのスティックが4回鳴り、演奏がスタートした。
この日のサポートバンド陣は木下哲(Gt)、伊藤翔磨(Gt)、岸田勇気(Key)、北原裕司(Ba)、camacho(Dr)の5名。チームプレイとしての演奏はもちろんのこと、「エスケイパー」のパーカッシブな岸田のソロなど、個の力でも魅せてくれる。
majikoは序盤、マイクスタンドにすがりつくような姿勢で繊細に歌いはじめた。かと思えば「世田谷ナイトサファリ」の最後のメロディをワイルドにしゃくりあげるなど、メリハリあるパフォーマンスを展開。
「リリースワンマンにお越しいただき、ありがとうございます!たくさん新曲をこしらえてきたので、みんなで楽しんでいきたいので宜しくお願いします」
こういった快活なMCも今までに見られなかったもので、パフォーマーとしての成長を感じさせた。アルバムに収録された「春、恋桜。」や「レイトショー」といった新曲を交えながら、セットリストは進行していく。
majikoらしい感情を爆発させるハイトーンボイスは「ひび割れた世界」や「命に嫌われている。」で聴くことができた。なにかが憑依したような歌は、耳に入って心に刺さるような、鋭利さがある。彼女の歌に呼応して、バンドもそれぞれ体を揺らしながら演奏のギアを上げていった。
「WISH」のミュージックビデオも初披露された。majikoの腕をフィルタにして幻想的な自然が映し出される。この日のセットリスト全体を通して映像の美しさが演奏に華を添える場面が多い。そして後半戦は、持ち味のハイトーンを前向きに響かせる楽曲が続いた。特に「グラマー」は、タイトルと同じ言葉を連呼するサビに胸が熱くなる。
そして、この日のハイライトは終盤のMCだった。まずmajikoは、物販のラバーバンドの発売中止について、少し残念そうに報告してから「発売中止になったときのみなさんの気持ちを歌います。『パラノイア』」と話すと、フロアから大きな歓声と笑いが起き、会場は一気にハッピーな雰囲気に。それを感じて、majikoもリミッターが外れたのか、自由なフェイクを多用して歌いきったのだ。
この曲の出だしは<ちょっと待って/笑っちゃうよパラノイア>。まるでmajikoの「パラノイア(錯乱)」が「みんなのパラノイア」として共有され、それを一緒に笑い飛ばすことで、全員のさみしさが浄化された瞬間ではなかったか。それを見て、思わず彼女の孤独に口づけしたくなるほどの感慨を覚えた。
その後もmajikoは最高の笑顔と感情あふれるパフォーマンスで、アンコールまで快走。リリースツアーの初日を情感あふれるステージで飾った。
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