HASE-Tの美学、アルバム発売日に解散 幻のユニットになった「the WOB」
INTERVIEW

HASE-Tの美学、アルバム発売日に解散 幻のユニットになった「the WOB」


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年06月13日

読了時間:約13分

レゲエシーンの移り変わりと現代的なコラボのスタイル

HASE-T

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――レゲエシーンについてですが、90年代あたりから日本で人気が上がってきたという印象があります。映画『クール・ランニング』の主題歌や、ダイアナ・キングのブレイク、『踊る大捜査線』で織田裕二とマキシ・プリーストがコラボしたりなど、馴染みが深くなってきた時期ではないかと。

 ジャマイカがなくならない限りレゲエはずっとあると思うんです。そのなかで凄く変化をしていて、結局今のHIP HOPやR&Bに追い付け、追い越せ、という感じで音の感じもそっちに寄って行っているという感じですね。USのHIP HOPの影響が大きいですかね。DJをやっているときに、今のアメリカの曲のあとに90年代のレゲエをかけると雰囲気が合わないと。今のレゲエをかけると雰囲気が合うんです。音色の感じなども凄く似ているんです。

――日本でレゲエに火がついたのはいつ頃でしょうか?

 日本人が本格的にレゲエをやり始めたのはやっぱり90年代、80年代後半くらいじゃないですか?

――その時代から2000年代に入って現在まで、どういった変化があると感じますか?

 自分は始まった頃からシーンにいるので、レゲエを広めたいなという気持ちでやりました。「レゲエをわかってほしい」という気持ちでやってある程度広まって、クラブを中心に好きな人達が集まるというくらいになっていって。そこから大きくバーンと広まったという瞬間があって、それが横浜レゲエ祭(※1995年から行われている日本最大のレゲエ・フェスティバル)だったり。そうするとメジャーでMINMIや湘南乃風が出てきて、そういう広がりがあってひとつの到達地点があったみたいな感じですね。だからもう若い子達もレゲエという言葉を知っているというところまできていると思います。

――今後のthe WOBはどのように活動していくのでしょうか?

 the WOBは今回アルバムが出来ましたということで、一回ここで終了しましょうという感じで動いています。

――そうなんですか!?

 衝撃の解散という(笑)。本来だったら「次はライブやって、どこのハコを埋めて…」という感じなんでしょうけど、いかんせんユニットでという感じなので、各々個性がある人達が集まって、セッションバンドみたいな感じなんですよ。セッションを2年間やりましたという感じで「カッコいいもの出来たね!」という感じで。けど、2年間セッションしていたら「俺、自分のことやりたい」と思ってきて、とりあえず作品は出来たしそれは出そうと。それを経て、セッションは終わったので一回バラバラになってみようかというタイミングになっている感じです。

 ただ、これを経てそれぞれが活動するので、これを経たそれぞれの活動って進化した物と思ってもらいたいし、僕自体も、世の中別にグループとしてずっと存続しなければいけないルールもないじゃないですか? 例えばLSDというグループも、プロデューサーのディプロ、ヒットメーカーのシーア、シンガーソングライターのラビリンスの3人組でユニットをやっているけど、それを永遠にやるのかといったらやらないと思うし。そのときの閃きで「面白いことやろうよ」とフワッと集まって曲を作って配信して、また別れちゃえみたいな。それくらい今ってコラボの仕方が楽にできるって言うのかな…どこにいてもできるし、常に同じことをやる必要もないし、今の気分感というのも逆に今っぽいかなというところもあるし。

――the WOBサウンドもスタイルも、色んな角度から見て現代っぽさがありますね。

 そういう風に思って頂けたら最高ですね。ディプロもそうですけど、あらゆるものが混じっていて、活動の仕方とかも音も、良い所だけ取っちゃうみたいな。まあ、解散はしなくてもいいかもしれませんけど。奇妙礼太郎さんもピークのときにバンドを解散していると思うんですよ。この間ラジオで言っていたんですけど、何で解散したかという問いに対して「解散したかったんだよね」って。そんな感じなんだろう、みたいな。

――「何でやめるの?」と言われても「いや、そういう時期だから」みたいに、自身のなかでの漠然とした決定感があるような心境でしょうか。

 そういう感じなんですよ。そこに何か裏があって「実はこうで…」というのがあるようでないような。3人いて面白いものが出来たと、でもこの後3人でライブをやると言っても「自分のピンの活動したいよね」とか「自分の作品を作りたい気分だからさ」という風になっちゃったら、無理にビジネスのために3人で続けて行こうという方が不自然というか。

――不自由でもありますよね。無理矢理に次作を作るみたいなことにもなるし。

 あくまでユニットで、それぞれのピンが集まったセッションというか。ひとつの箱と考えて違うセッション、ミュージシャンで作品を作る可能性もあるし、考え方は自由です。

――それでは最後に、『the WOB』はどんな方々に届けたいですか?

 ダンスミュージックとかクラブミュージックとかを、踊らなくても聴いているような人達に聴いてもらって刺さってもらえたら一番いいかなという感じですかね。マニア向けではないと思っていて、一般の人に刺さればいいなと思います。今J-POPも変わってきていて、シティ・ポップの方々などもかなり濃くてカッコいいことをやっているじゃないですか? ああいう偏差値の高いものを普通の若い子達が聴ける土俵になっちゃったというのは凄く良いことだと思っているんです。そんな音楽ファンの耳の人に刺さったら良いなと思います。理屈じゃなくて感覚大切に。かっこいいなと思って頂ければ最高です。

(おわり)

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