オーセンティックな音楽を追求する松尾レミと亀本寛貴によるロックユニット・GLIM SPANKYが6月8日、東京・豊洲PITで全国ツアー『LOOKING FOR THE MAGIC Tour 2019』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは2018年11月21日にリリースされた4枚目のアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』を引っさげて、3月2日長野・CLUB JUNK BOXを皮切りに全国24都市27公演を回るというもの。アルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』から全曲を披露し「怒りをくれよ」など、アンコール含め全21曲を披露したツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

ライブの醍醐味はアイデンティティを爆発させること

松尾レミ(撮影=鳥居洋介)

 今作は自分の桃源郷だと小媒体のインタビューで話してくれたGLIM SPANKY。そのアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』を引っさげ約3カ月続いた全国ツアーも、残すは東京・新木場STUDIO COASTでの追加公演と香港、台湾のアジア公演のみで、ここまでの集大成、進化した姿をこの日見せてくれた――。

 開演時刻になりSEとしてアルバムの1曲目に収録された「4 Dimensional Desert」が鳴り響き、混沌としたサイケデリックな世界へといざなう。その不思議なサウンドのなかサポートメンバーに続いて、松尾レミと亀本寛貴の2人が歓声のなか登場。オープニングを飾ったのは「Love Is There」。アルバム曲の中でも毛色が違ったミディアムナンバーは優しく我々を迎えてくれた。

 ステージから聴こえてくる音の波に酔いしれるなか、空間を切り裂くような、けたたましいロックサウンドが投下された。「TV Show」、「END ROLL」、「怒りをくれよ」と、ハードなナンバーを立て続けに披露し、一気にボルテージは最高潮まで高まった。オーディエンスもGLIM SPANKYのサウンドに応えるかのように腕を掲げ大きな盛り上がりを見せていた。

 MCでは初の豊洲PITでのライブということもあり、このステージから見える景色の新鮮さを伝える。MCに続いての「愚か者たち」では、らしさ全開のエッジの効いたギターサウンドがクールに響けば、松尾レミのスモーキーで倍音豊かな歌声が心を揺さぶりかけてくる。続いて、アカペラからスタートした「闇に目を凝らせば」は、叙情的な歌声も相まって小説でも読んでいるかのような、ストーリーを感じさせ、グッとオーディエンスの心を掴む。そして、どこかLAのサルベーション・マウンテンを彷彿させるような映像と融合した「The Trip」、続いてキラキラとした万華鏡のような光のフラグメントが投影されるなか歌唱した「The Flowers」と、音と映像の親和性が高いセクションで、視覚的にも楽しませてくれた。

GLIM SPANKY(撮影=鳥居洋介)

 ライブは中盤戦へ。GLIM SPANKY流ダンスチューンともいえる1曲「In the air」では、天井で回転するミラーボールも高揚感を煽り、幅広い音楽性を提示し、オーディエンスもグルーヴに身体を預け音を堪能。サビでの空気のようにフワフワと漂うようなファルセットでの松尾レミの歌声も印象的に響いた。アップチューン「褒めろよ」に続いてのMCではツアーの思い出を話す2人。ライブはそれぞれの楽しみ方で楽しんで欲しい、ロックのライブの醍醐味はファッションなど好きなアイデンティティを爆発させることで、それを体現してライブに来てくれる人たちがいることに喜びを感じていると話した。

 続いては、松尾レミが地元にいた頃好きだったという土曜日の朝をテーマに「みんなの心地よい朝を思い浮かべながら聴いてくれたら…」と制作された1曲「Hello Sunshine」へ。松尾レミによる乾いたアコギの音色が、干し草の香りを連れてくるかのようなカントリーサウンドが新鮮だ。さらに松尾レミがバンドを組んでみたいと興味をもち、中学生の時に仲間たちとDVDで見た『ウッドストック・フェスティバル』の風景を封じ込めた、バンドへの初期衝動が詰まった重要な1曲「ミュージック・フリーク」でオーディエンスを扇情。

みんなと新しいカルチャーを作っていきたい

亀本寛貴(撮影=鳥居洋介)

 ライブは佳境に突入。大陸を感じさせるスケールの大きさを感じさせた「NEXT ONE」では、オーディエンスも叫ばずにはいられない、そんな衝動を掻き立て、ライブの醍醐味のひとつ、オーディエンスと共に作り上げていく空間というものをより強く感じさせてくれた。続いて、亀本寛貴のワウワウペダルを使用したギターサウンドが心弾ませた「To The Music」で、音楽の楽しさ魅力を余すことなく伝えれば、松尾レミも「めっちゃ楽しい!」と歓喜の声。

 MCでライブの理想像として、亀本寛貴はGLIM SPANKYのライブは仕事帰りにふらっと立ち寄れるライブというのが理想だと話し、松尾レミは「7月7日の追加公演は打ち上げのようなつもりで来て下さい」と語った。そして「みんなに届くように歌います」と、松尾レミが大きく息を吸い込み、緊張感のあるなか始まった「大人になったら」。ロックキッズに向けたメッセージを込めたナンバーで、亀本の熱量の高いギターソロも伸びやかに極上のトーンを放っていた。

 本編ラストはアルバムでも最後を飾る表題曲「Looking For The Magic」。この曲は昨年5月におこなわれた武道館公演の後に訪れたサルベーション・マウンテンへ向かう旅の貨物列車の景色から「すごいスピードで砂埃を立てて行くだけ」と自分たちの人生と似ていると重ね合わせ生まれた一曲。そのLAでの旅の車窓からの風景を想起させる映像をバックに、最高の歌と演奏で空間を彩っていく。「ロックに死ぬも生きるもない、私達とみんなで新しいカルチャーを作っていきたいと思っています。こんなに仲間がいてとても幸せです」と話す2人からは、確固たる信念と未来への希望を感じさせた。

GLIM SPANKY(撮影=鳥居洋介)

 アンコールの声に応え再びステージに2人が登場。サポートメンバーも呼び込み「(ツアー)を回ってきて、ロックが大好きな気持ちをみんなに届けたい」と投げかけ「話をしようよ」、さらにロック特有の閉塞感のあるバースから、開放感のあるサビへの流れが心地よい「いざメキシコへ」、ラストは決意と覚悟を感じさせる1曲「アイスタンドアローン」を高らかに歌い上げ、『LOOKING FOR THE MAGIC Tour 2019』は大団円を迎えた。

 このツアーで一回りも二回りも成長したことが、何も言わずとも音から伝わってきた。2人は現在新曲のレコーディングも終えたことを報告。そして、7月7日に開催される追加公演は、今回のツアーとはガラッとセットリストを変えて演奏することも明かした。

 ロックの可能性を追求する2人の旅はまだまだ果てしない、新たな桃源郷を目指し邁進するGLIM SPANKYに期待したい。

セットリスト

『LOOKING FOR THE MAGIC Tour 2019』
6月8日@東京・豊洲PIT

01.Love Is There
02.TV Show
03.END ROLL
04.怒りをくれよ
05.愚か者たち
06.闇に目を凝らせば
07.ハートが冷める前に
08.The Trip
09.The Flowers
10.In the air
11.褒めろよ
12.Hello Sunshine
13.ミュージック・フリーク
14.All Of Us
15.NEXT ONE
16.To The Music
17.大人になったら
18.Looking For The Magic

ENCORE

EN1.話をしようよ
EN2.いざメキシコへ
EN3.アイスタンドアローン

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