橘ケンチ「日本人としてどこでも勝負できる存在に」マルチに活動する秘訣
INTERVIEW

橘ケンチ「日本人としてどこでも勝負できる存在に」マルチに活動する秘訣


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年06月08日

読了時間:約13分

音楽が感情を後押ししてくれる

橘ケンチ

――量より質に変わってきたんですね。さて、その中で今回は役者のターンで、「魍魎の匣」という京極夏彦さんの作品の舞台です。このお話はいつ頃あったのでしょうか。

 実は今回の話はこちらからオファーさせて頂いたんです。丸山ゴンザレスさんという『クレイジージャーニー』などに出演されている方と最近仲良くさせて頂いていて、丸山さんが京極先生と仲が良いという話になり、京極先生はご自身の作品の映像化や舞台化にすごく協力的な方だと聞いたんです。ちょうど舞台をやろうとプロデューサーと話していて、作品を何かにするか、考えている時だったので、京極先生の作品をやらせて頂けたら最高だと思って、スタッフに相談したら、「魍魎の匣」がいいじゃないかというアイデアが出たんです。それで京極先生にお願いをして、オッケーしていただいたんです。

――そうだったんですね。どのような舞台にしたいと今はお考えでしょうか。

 まだ稽古も始まっていなくて、演出家と話しているところで大枠しかないんですけど、原作をできる限り忠実に再現をすることと、舞台にした時に、どういった飛躍の仕方をするのかというところを追求していきたいと思っています。(取材日は5月中旬)

――原作を読まれてみて、どのような感想を持ちましたか。

 タイトルだけ見ると、魑魅魍魎、妖怪など怖いものを想像されると思うんです。最初僕もそんなイメージがあったんですけど、読んでみたら人間関係のお話なんですよね。その中で生まれる感情や怨恨などが引き起こしていくお話なので、根底にあるのは人間ドラマだなと思いました。それもあってより興味が湧きました。

――人間の色んな部分が出ていますよね。ケンチさんは主人公の京極堂こと中禅寺秋彦を演じますが、どのように演じようと考えていますか。

 セリフ量もすごく多いと思うんです。こういう役柄は僕にとって挑戦です。今まではアクションで体を使って、まくし立てるような役が多かったのですが、今回は静かなんだけど内側で燃えているような、表現の仕方になっていくのかなと思っていて、セリフで斬っていくというところですごくやり甲斐を感じています。

――中禅寺とケンチさんがリンクする部分はどこにあると思いますか。

 本が好きというところは重なると思いますが、かなり浮世離れしているイメージもありますし、かなり特殊な人物で、まだ自分とはかけ離れた存在だと思っています。そこから接点を見い出しながら、橘ケンチが演じる京極堂というのを見つけ出したいなと思います。

――京極堂は陰陽師の要素も持ち合わせていますから。そういう意味ではホラー要素も少なからずあるのですが、ケンチさんはホラーはいかがですか。

 喜劇やコメディが好きで、ホラー自体はあまり好みではないのであまり観ないんです。でも、前回の『幽劇』や『ドン・ドラキュラ』はホラー要素もあって、自分と縁があるんでしょうね。周りからのイメージ、僕のビジュアルや表現が、そういったものに合ってるんだと思います(笑)。

――映像と舞台はまた違った魅力があると思います。ケンチさんが舞台に立つ時に心掛けていることはありますか。

 映像だったら画面に映っているものが、パッと目を惹くものであればアリだと思うんですけど、舞台は表情や所作もそうですし、主役が舞台に立った時、劇場に1000人いたとしたら、その1000人を魅了する存在感がなければいけないと思っています。なので、その存在感というのはすごく意識します。存在感や集中力を保ったまま、本番を繋げるということはものすごくカロリーを使うんですけど。

――パフォーマーの時とはまた違った感覚なんですね。

 違った緊張感はあります。ライブの時は自分が楽しいと思った表現、自分が絶頂に行ける表現を目指し、体を動かしてお客さんとコミュニケーションを取りながらやるので、それはハイになります。舞台の場合はそれとは違ったコミュニケーションになります。お芝居という表現はパッとはお客さんの世界には行けないんです。舞台上の空気を濃いもので充満させなければいけないんです。

――両方やられているケンチさんだから分かることでもありますよね。舞台では音楽も流れると思うのですが、音楽は演者としてはどのような効果をもたらしてくれますか。

 音楽はすごく重要です。その音楽で感情を後押ししてくれることがあります。

――セリフを言いながらも、その音楽を聴いていて。

 聴いています。映画でも音楽ってすごく大事じゃないですか。ドラマチックに盛り上げてくれるので、音楽が与える要素というのは大きいと感じています。映画では演技しているその場で音楽が流れているわけではなくて、イメージしながら演技しているんですけど、舞台でのお芝居は、演技しているその場で音楽が流れているので、よりその世界に入りやすいかも知れないですね。

――その辺りも注目して見てもらえるとまた面白いかも知れないです。さて、今回セリフというところで、アドリブの部分も出てきそうですか。

 どうでしょうね。今回はセリフ量が多いので、決まっているセリフを自由にどれだけ表現出来るかの方が重要かも知れないです。

――原作を読むのと台本の読み方の違いはありますか。

 原作を読む時はその世界観に入り込んで読みます。今回は原作を読んでいるタイミングで台本がまだ来ていなかったので、原作を読みながら、このセリフは入って来るかな? とか想像しながら読んでました。あと、京極堂という人物がどういった人物なのか、そこに迫った読み方をしているような気がします。台本は舞台の事をイメージしてキャストさんのことも考えながら読みます。

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