ひとつに執着しない――、ストレイテナー 自由な空気感で変化し続けた20年
INTERVIEW

ひとつに執着しない――、ストレイテナー 自由な空気感で変化し続けた20年


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年04月27日

読了時間:約12分

同期を使うには覚悟がいる

ホリエアツシ

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――そうなると、ライブでは「音源を再現する」「生演奏を優先」などの選択肢があると思います。そこはどうお考えでしょう。

 そこは手探りでやってますね。今は同期を使っていますけど、全く同期を入れずにやっていた時もありますし。その時その時で自分たちでブラッシュアップしながら今に至っています。同期を使うのはある程度、覚悟がいるんですよ。「(生演奏せず)怠けていると思われたくない」というのがありました。あくまで人力にこだわるのか、とかも考えていましたし。

 でも恐れずにやりはじめてからはメンバーも楽しめるようになってきたんです。パフォーマンスに解放感が生まれるんですよね。ドラムもやりづらいのかなと思っていたら、逆にやりやすいらしくて。その覚悟ができたのは、楽曲作っていくなかでだったと思います。それありきで作曲していくタイミングがどこかであった様な気が。

――いまだに同期を使った演奏には「口パク」「嘘つき」という様な誤解があると思います。それついては?

 もちろん打ち込みっぽい音楽を全部生演奏でやっているバンドを見たらすごいと思いますよ。ただ、ライブの場の良さがロックバンドに限らず、誇りに思えるものなんじゃないですか。例えばアイドルとか、ポップなジャンルの人たちはダンスと歌でステージを作りますよね。僕もそういうことに昔は興味がなかったんですけど、今見るとすごい刺激になるんです。「パフォーマンスのどこを見せるか」ということを素直に受け入れられる様になってきていて。

 そんなのはカラオケなら当たり前だし、ダンスしている時は歌声も出ていたりするじゃないですか。そういうのも「この人たちは重視しているものが違うし、違って当然だ」と。表現者としての違った目線のリスペクトがあります。自分にないものを見た時に感動するじゃないですか。そういう場面は少しでも多い方が自分にとってはいいのかなと思います。やっぱり目指すべきところがある人たちからは刺激をもらいますね。

 自分たちと全く同じジャンルの音楽とか編成とかを見てもあんまり面白くないんです。フラットに自分の興味がそそられるものって、全く違うところにあることが多くて。例えば演劇の舞台とか見ても、どこか自分の表現にフィードバックしていきますから。

――映像化したライブで披露された新曲「スパイラル」はデジタルリリースされましたね。

 ライブDVDにも収録されるから、この曲もレコーディングして発表したかったんです。なので今回は手軽にできる配信リリースで、ということになりました。曲自体は去年1年間で2回ツアーがあったんですけど、幕張のライブに向けて何となく「ツアー」をイメージした曲を作ろうと。ストレイテナーとファンのみんなの絆みたいなものを歌にしたかったんです。この時のライブでスクリーンに映っていた映像は、ツアーの道中に撮影していたもので。最初から「曲と映像をリンクさせて作ろう」と決めてつくっています。

 何年かぶりにおとずれる街の風景にワクワクしたり、ライブが素直に自分を解放できる場所だと思ってくれているファンの気持ちなどが交差していく曲に仕上がりました。伝えようという意識と、僕らだけが主役じゃないという想いもあります。

ホリエアツシ

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――ホリエさんの地元である長崎の魅力発信事業『長崎○○LOVERS』の一環で制作した「LOVERS IN NAGASAKI」については?

 せっかくこういうオファーを頂いたので、普段やれないことをやりたいなと思っていたんです。老若男女、色々な人が聴いてくれると思っていて、よりバンドにも興味をもってもらえたらなと。先日長崎駅前でイベントがあったんですけど、おばあちゃんとかも立ち止まって観てくれていて。そういうところまではバンドをやっていたら届かないので、意味があるものにしたいなと考えた結果、ストリングスのNAOTOさんにお願いしました。弦のアレンジに関しては全ておまかせしています。出来上がりは最高。

 事前にNAOTOさんとは打ち合わせで、ストレイテナーぽくした方がいいのか、普遍性のものにした方がいいのかと話していたんです。そこで僕は普遍性の方を選びました。それはせっかくやるんだから、もっと受け取る人のものになってほしいと思って。そういう意味では音楽作家っぽい感覚が自分にはありました。

――昨年からナカヤマさんとともに長崎市観光大使に任命されていますが、地元への思い入れみたいなものは強いのでしょうか。

 逆に地元のフェス『Sky Jamboree』に呼ばれたり、長崎の方々が僕らを頼ってくれるんです。それは若い時にはなかったことなので、そういう関係性は徐々に芽生えてきている感じがしますね。自分の地元なので無意識に見ている風景ではあるんですけど、東京でバンドをやっていると長崎にライブなどで行ったバンドから「美味しいごはんが食べれるところ教えて」と連絡もらったりします。それで「行ってよかった」「街の風景がよかった」「街の人々がよかった」と言われることが多くて。それが嬉しいんです。東京に出たからこそわかることでもありますから。これを伝えられるのは僕たちしかいないと思います。

――活動21年目を迎えて、これからのアイデアなどはあります?

 今は特にないですね。自分が面白いと思うバンドでありたいので、音楽的にももっと新しいことにトライしたい。インプットしながら、作りたいものを形にしていきたいです。音楽シーンは今変わってきているなと感じてるんですよ。よりジャンルレスになっています。ロックバンドがロックバンドで固まるんじゃなくて。ヒップホップやR&Bとかを日本人も天然でやり始めていて。そういう動向に刺激を受けています。これから楽しみですね。負けられないなと(笑)。

 すでに先ほどのNAOTOさんの弦楽四重奏とのステージもありました。自分で意図して変えていきたいというわけではないですが、そういう機会があると今後の新しい挑戦にもつながっていくのかなと思っています。

――ホリエさんに限らず、ストレイテナーの他のメンバーのみなさまも個々で色々と別の活動をされていると思います。それはバンドにとってどう作用していますか。

 僕はもともとバンドとソロに垣根がないんです。先ほども話した通り、自分にないものに惹かれるので。ベースのひなっちと松下マサナオ(Yasei Collective)がやっているHH×MMのセッションに参加させてもらったりもしました。そこからバンドにフィードバックしていくものもあると思うんです。忙しくなりすぎて、とっちらからない内は僕も楽しんでやっています(笑)。

 ひとつのバンドでやり続けるのも素敵ですし、そういう方ももちろんいると思います。でも僕らはもともとが色々と興味を持って、それを自然と取り込んでいくし、ひとつのことに執着したくないという人間の集まりなんです。だから仲良くいられるし、正直でいられると思うんですよ。誰一人自分を偽っていないのがストレイテナーの魅力でもあると思うので。

 今後もmajikoとかは関わっていきたいですね。この1、2年はストレイテナーのことでいっぱいいっぱいで、他のことを考えたくなかったから(笑)。先日はASIAN KUNG-FU GENERATIONに「廃墟の記憶」を提供しました。自分としては遊び心で作った曲だったんですけど、アジカンのなかに入ると「めちゃくちゃホリエの曲だよね」と言われるので「あ、そうなんだ」と(笑)。

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――今後コラボしてみたいアーティストなどはいます?

 ロックバンドではない人への曲提供はしてみたいですね。ダンスミュージックとか作ってみたいですね。もちろんすごい方々はたくさんいますが、僕なりの角度で作れるものも確かにあると思うんです。

――the band apartとのツアー『G.J.R.C TOPUR 01』もありますね。

 the band apartは同期というか、同世代なので「20周年を終えて、ふんどしを締め直そうぜ」的なものになると思います(笑)。狙ってやったわけではないですけど。6月に一緒にツアーをまわるACIDMANやTHE BACK HORNもそうなんですけど、ここまで続けているバンドって、それぞれの道があるからこうして今リスペクトしあえるんですよね。独特な世代感なんですよ。上の人たちは縦にがっとつながっていたりしますけど、僕らはそれぞれのバンドをそれぞれが大事にしてきて今があると感じます。

(おわり)

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