明るい歌詞を乗せるのはやめようと思った
――音楽は記憶とすごく結びついていますからね。さて、新曲の「Stay Together」は明治のブランドタイアップもつきました。
誰もが知っているブランドで、チョコレートという身近な商品のタイアップということもあってすごく嬉しいです。
――この曲ってもしかしてSNSで2月頃に「どうなることかと思ったら、めちゃくちゃ良くなった!!!!」と呟いていた曲ですか。
そうです。今まで作った曲の中でも一番大変でした。というのも、普段はギターで弾き語りで作っていくんですけど、トラック先行で作りました。そこにメロを付けていったので、いつもと作り方が違いました。あと、明るい曲を作るのが難しくて。私は切ない歌詞が好きなので、自分でゼロから作ると切ない感じになりがちです(笑)。タイアップも決まっていて、楽曲のイメージもあったので、初めてそういう環境で作ったということもあり本当に難しくて。
――新年度ということもあって、やっぱり明るい曲がいいですよね。
歌詞も今回段々前向きになって行くんですけど、曲の最初は切ない感じで。出会いと別れの季節なので、切ないながらに、どこか前向きになれたり、背中を押せるような楽曲になれたらな。と、思い制作しました。
――ちょっと切ないというところで出だしの感じが凄く良いんです。波打ち際でセピア色のような世界観に惹き込まれていく感覚で。これはどなたのアイデアなんですか。
これはいつも一緒に音楽を作っている方のアイデアです。彼は私が音楽を作り始めた頃からずっと一緒に作っているので、私の通訳さんなんです。
――通訳?
私は言葉で説明するんですけど、感覚的に喋っているので、基本的には何を言っているのかなかなか伝わらないんです(笑)。でも彼はそれを理解してくれて形にしてくれます。たぶん私の性格も一から十まで知られていると思います。私はすごく感覚肌で彼はすごくロジカルなんですけど、うまく噛み合っているんです。
――ちなみにどのようにアイデアを伝えるんですか。
わかりやすく話すと日本語だとベタッとしてしまうのを、英語みたいなグルーヴにしたいと、その場の感覚で喋ってしまうのでわかりにくいんです。でも、それを理解してくれます。なので今回も日本語のところがベタっとしないように歌い出しの前に<“ん”簡単に言わないで>とか前に“ん”を入れてグルーヴを出してみたり。
――そうするとすごく躍動感が出ると聞いたことがあります。
そうなんです。それがわかってプリプロから歌い方を全く変えました。最初はBPMとかキーとかで悩んでいたんですけど、歌い方を変えたらすべて解決しました。歌は楽器と違って無限に表現方法があるので大変でした。いつもだったら歌も3本くらい録ってその中から良いテイクを探していくんですけど、今回は何本録ったかわからないくらいで。いろんな歌い方を試した中で一番良いのを選びました。
――今まで以上に大変なレコーディングだったんですね。歌詞に関してはタイアップということで注文はあったんですか。
歌詞は特に注文はなかったんです。なので自由に書かせていただきました。トラックを聞いた瞬間に明るい歌詞を乗せるのはやめようと思いました。たぶんそうすると普通のポップスになってしまうなと思いました。なので敢えて切ない歌詞で詰めていきました。
――歌詞はどう書いていくんですか。
頭からストーリーを考えるように書いていきます。サビから書いたこととか今まで一度もないと思います。ストーリーを考えないとサビの歌詞が思い浮かばないんです。
――そのストーリーはどのような時に考えることが多いですか。
日常生活の中で考えることが多いです。感じたことをスマホにメモしておいて、海に行ってそれを一回リセットするんです。戻ってきてから改めてそのメモを見てストーリーを考えていきます。普段の日常だとクリエイティブな脳になっていないので、チャンネルを切り替えるために海にいっているんです。
――この曲はどこのビーチでリセットして制作した曲なんですか。
昨年はタヒチに行ったりしていたんですけど、年始にオフがあったのでハワイでインスピレーションを得て、そこから帰ってきてすぐ制作したんです。あと締切というか、制作期間というのを設けないと、なかなか曲を作ろうという感じにもならないんです。