ひとえに言えば、謙虚で自然体。しかし、音楽となれば、感情をむき出す。その音楽も独特の歌詞表現で人を惹き付ける。石崎ひゅーい。一度触れたら人の心を掴んで離さない人間味あふれる人だ。

 石崎が、友人・菅田将暉に楽曲提供した「さよならエレジー」という曲がある。山崎賢人主演の日本テレビ系ドラマ『トドメの接吻』の主題歌で、ドラマ人気とともにこの曲もヒットした。

 <愛が僕に噛みついて 離さないと言うけれど>

 サビのなかの一文だ。キスをすると7日前に戻る、というドラマの物語にも重なる言葉だが、<愛が僕に噛みついて>という表現はそう簡単には浮かばない。石崎の表現のセンスが光る。

 1月に公開された映画『そらのレストラン』に俳優として出演した。映画出演は2度目だ。北海道のせたな町を舞台に、海が見える牧場で作り出されるチーズと様々な食材が仲間と家族の心を繋ぎ、絆を強めていく様を描いた。

 主人公の設楽亘理役を務めた大泉洋を中心とする仲間の一人、漁師の野添隆史役を演じた。普段はおっとりとし、調和を重んじる彼があるとき、感情をさらけ出し、友人を殴る。映画のワンシーンだが、そこに映る野添は石崎の人柄がそのまま表れているかのようだ。

 愛されているのはその人柄だ。

 公開に先立ちおこなわれたイベントでは、撮影中のエピソードが明かされた。

 撮影地には約1カ月滞在した。撮影地から離れの繁華街に宿舎を選んだ、マキタスポーツを中心とする岡田将生、高橋努、そして石崎は、移動距離が長いため現場入りが早かった。大泉が撮影に入る頃には既にウォーミングアップを済ませている状態で、その姿を見た大泉は「劇団八雲」と名付けた。

 「温泉に入りたい」という理由もあって、「劇団八雲」は大泉と同じホテルに宿舎を移した。念願の温泉に浸った“団員”だが、座長のマキタスポーツがはしゃぎ過ぎて岩から転倒。裸体をさらけ出した。石崎らはその時の思い出を満面の笑顔で振り返っていた。

 その撮影では、石崎の音楽に心を掴まれたという話もあった。撮影に協力した現地の人に招かれおこなわれた宴会。お礼を兼ねて石崎は「花瓶の花」をギター弾き語りで歌った。彼の歌に周囲は泣いた。なかでも大泣きしたのはマキタスポーツだった。

 3月10日にフジテレビ系で放送された音楽番組『Love music』で大泉がその当時の状況を明かしている。

 「歌の力たるやすごい。それまで大爆笑していて、でもボロンと弾いたらもう…。初めて聴く歌は歌詞までしっかり入ってこない。でも彼の歌はちゃんと届く」

 更に彼の演技力を「役者には出せない、良い意味で演技してない。人間味が伝わる、俳優としても憧れる」と語った。

 また、以前から交流のある岡田将生は同番組にコメントを寄せ、彼の魅力を語った。ある役を演じるためにギターを教えてもらったエピソードを明かし「練習をしてもできなくて、その時に『聴いてくれる?』と言って制作途中の曲を聴かせてくれて、心を持っていかれました」。更に「かっこいいなって。役者は『今、何かやって?』と言われてもできない」と述べた。

 コメントでは、岡田の家に遊びに来たときのことも明かされた。トイレに行ってくると離れた石崎は、お風呂の湯を溜めるいたずらをしたとも。岡田は「その日、浸かる予定はなかったのに」と笑顔。スタジオにいた石崎は「いたずらをしたくなる」と岡田の人柄を語ったが、どこか「劇団八雲」と重なる。

 まるで少年のようで、無邪気だ。

 ミュージシャン仲間も多い。石崎のファンだった、あいみょんは石崎と対バンをやりたくて、握手会に並び、直談判した過去がある。その後交流を深め、菅田を含めた3人でユニット「ジ・ラバーズ 愛の伝道師たち」を結成した。同番組にコメントを寄せたあいみょんは、3人で朝まで公園で歌っていたとも明かした。

 そのあいみょんは石崎の魅力を「人柄は凄く、自然体、優しい。アーティストでいえば、あの声は誰にでも出せない」と語った。そのあいみょんが好きな曲として挙げたのは「僕がいるぞ!」。その理由を歌詞の一部<目の下の熊を森に帰して二人きりでいよう>とミュージックビデオを挙げ、「存在感があります。MVから溢れている」と明かした。

 彼に出会った人が一様に称えるのは、その人柄だ。記者も直接取材したことがある。そのおっとりとした口調で、どこか温かみがある。包まれているような感覚だった。

 音楽、そして芝居からも溢れ出ているのは人間味。彼の魅力はまさに「人間味」と言えるだろう。

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