伊藤ふみお「一人で聴いて自分に説得力のあるものに」音楽が繋いだ絆と約束
INTERVIEW

伊藤ふみお「一人で聴いて自分に説得力のあるものに」音楽が繋いだ絆と約束


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年03月26日

読了時間:約17分

“FRIENDSHIP”の賜物のアルバム

伊藤ふみお

――『FRIENDSHIP』で伊藤さんのお気に入り曲はありますか?

 「Pizza Margherita」かなあ? やっと10年間の約束を果せたし。この曲をあのバンドメンバーに「すいません、新曲が出来たんですけど」って持って行った自分を褒めたいし、それを真に受けてちゃんと曲にしてくれたバンドメンバーに対しても相当なリスペクトを捧げたいし。あと、このアルバムに入れようと思った自分にも賞賛の拍手を送りたい感じですかね(笑)。3年前とかだったらこういうユーモアというか、クスッと自分が笑えるようなことやらなかったかもしれないもんね。

――本当に“今の伊藤ふみおさん”なんですね。アルバム制作にあたって、アナログレコードのA面・B面のようなアプローチも含めたりしたのでしょうか?

 けっこうあるかもしれないですね。曲があまり長くなくていいかなって思って。カセットテープをけっこう聴いていたんですよ。古いラジカセ買って。スペシャルズのアルバムとかはすぐ終わっちゃうんだよね。「カチャッ」ってすぐA面が終わっちゃうんですよ。そういうのも面白いかなと。なんとなくの意識ですけどね。ラジカセのちょっとこもったような音というか、あまり分離が良くなくて、あまりクリアではなくて、その方がアナログレコードやカセットテープを聴いていてインスパイアされる部分は大きいですけどね。クラッシュとか、スカスカの音であっさりしてて、メロディがしっかりしてて…聴き方は時代によって変わるんだろうけど、今はほとんどスマホでしか聴かないんだろうなって思いながらも作ったけど、今も昔も音楽って基本的に一人で聴くじゃない? そこは今回凄く意識したかな。一人で聴いて自分に説得力のあるものにしたいなと。

――確かに、このアルバムを聴いた感覚と、今こうして伊藤さんと対話しているような感覚には同じような感覚があります。

 正に「伊藤ふみおと、その人」の関係性でしかないでしょ? そのときに感じてもらえないことの方が多いかもしれないけど、やっぱりみんなにみんな何か感じてもらえると思って作っちゃ駄目だとは思ったんだけど、それでも自分を限りなくさらけ出して、聴いて自分の心が動くようなものじゃないと、少なくとも誰かには伝わらないなというのは凄くあったから。だから歌詞も音も凄くこだわったというかね。自分的には究極に肉を削ぎ落とした楽曲。

――今作を聴くと、意識に残るのではなくて、無意識に残るんです。寝起きのふとしたときに裏打ちのリズムが鳴ったり<POSITIVE!>と聴こえたり。それは伊藤さんの言う「無駄なものを削ぎ落とす」ということがなされているからかなと感ました。意識しない長い記憶に残るような音楽の作り方をしているのだなと。

 そうなってくれると本当に嬉しいですよ。

――冒頭に挙げたザ・クラッシュのやボブ・マーリーの音楽も、そういった意味で今作に近いものを感じたんです。

 音楽ってなんとなく聴くものだと思うんだけど、その“なんとなく”を「何でなんだろう?」って。ずっとKEMURIの活動を続けたり、生きていくということで考えるタイミングってけっこうあるんですよね。それが全部釈然としたわけではないんだけど、釈然としたものはちゃんと自分のなかで、より釈然とするようにしたいなと思って作ったんですけどね。

――いちリスナーとして、そういった制作の仕方で出来た作品なのだということが釈然とする内容と感じます。

 本当にみんながよく理解してくれて。メンバー、エンジニアも含めて。“FRIENDSHIP”の賜物のアルバムですね。

――ジャケットのデザインですが、どのようなイメージなのでしょうか? 信号のようなカラーですね。

 そうなんです。ATATAのギタリストDai Toriiにお願いしたんです。彼はKEMURIのことも僕の性格とかもよく知ってるんです。ジャマイカの音楽が好きで。「伊藤ふみおで何となく」と言ったらこれを作ってくれたの。最初に「こういう風にしてくれ」とか伝えていないんです。

――伊藤さんのイメージなんですね。言わずとも伝わったのでしょうか。

 そう。信号に見えるんだけど、ジャマイカのレゲエの赤と黄色と緑で。それを遠回しにやっているというか。『FRIENDSHIP』 の“F”だったり、伊藤ふみおの“F”だったりね。

――本当ですね。Fの形のデザイン部があります。

 よく見るとね。色んな意味が含まれていて、いいジャケットを作ってくれてね。

――4月7日に新代田FEVERでのアルバムレコ発ライブがありますね。

 このアルバムの曲はできれば全曲やろうと思っていて。本当に今の伊藤ふみおを満喫してもらうライブをやります! 一緒にやってもらうのがTHE REDEMPTIONとSKA PUNKZOMBIESという、ずっとスカ・パンクシーンのなかでそのシーンを大切にしてきたバンドに出てもらうんです。その人達にも伊藤ふみおなりのスカ・パンク愛を感じてもらえるようなライヴにしたいなと思っています。自分にも他人にも説得力のあるライヴをやろうと思っていますので、是非観に来て頂きたいと思います。

(おわり)

作品情報

伊藤ふみお(KEMURI)
『FRIENDSHIP』

1. Rusty Nail
2. Brave Heart for Glory
3. Long Train Running
4. POSITIVE (津田紀昭(KEMURI/THE REDEMPTION)作曲)
5. Pizza Margherita
6. Beautiful Dreams(斉藤和義 作曲)
7. Silly Love Song
8. YOU (Mike Park(Skankin' Pickle/The Bruce Lee Band/The Chinkees)作曲)
9. Lonely Shadow
10.Shooting Star
11. LOVE (難波章浩(Hi-STANDARD/NAMBA69)作曲)
12.HOME(Instrumental)

Brave Heart for Glory(Music Video) 『FRIENDSHIP』Recording Document ary

公演情報

Fumio Ito show 2019 vol.1
『FRIENDSHIP』 開催日:4月7日(日)
開場:18:30
開演:19:00 会場:新代田FEVER W/THE REDEMPTION,SKA PUNK ZOMBIES
チケット:adv 4000円(税込) Door 4500円(税込)
チケット情報:発売中
ぴあ146-947
ローチケ72874
e+https://eplus.jp/sf/detail/2897900001-P0030001

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