藤澤ノリマサ「音楽は呼吸」唯一無二の音楽スタイル“ポップオペラ”の神髄
INTERVIEW

藤澤ノリマサ「音楽は呼吸」唯一無二の音楽スタイル“ポップオペラ”の神髄


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年03月19日

読了時間:約10分

クラシックとポップスのクロスオーバー的なことが出来たら

藤澤ノリマサ

――歌唱法なのですが、オペラの部分はベルカント唱法という歌唱法なんですよね。どういったものなのでしょうか。

 19世紀末から20世紀にかけてイタリアで開発された歌唱法なんです。声帯に負担を掛けない、世界で一番美しい発声法と言われています。オラトリオやルネッサンスの時代は歌い方がちょっと違ったみたいで、ベルカントは2時間をノーマイクで歌い切るのに適した歌唱法なんです。僕は武蔵野音楽大学の声楽科にいて、歌曲の時にベルカント唱法を勉強しました。

――他にも唱法があるのでしょうか。

 ドイツやフランスにもそれぞれあって、ちょっと違うんです。言語の違いも影響していると思うのですが、ドイツは言葉を明瞭に引き立つように歌う感じだったりします。僕の習っていた先生がイタリア専門の方だったので、それでベルカントを教えてもらいました。

――ポップオペラに行き着くまでのきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

 僕はクラシックも好きなんですけど、ポップスも好きなんです。父がバリトン歌手だった事と、母が歌謡曲の先生をやっていた事が大きいです。それもあって、クラシックとポップスのクロスオーバー的なことが出来たら良いなと考えていて、ポップオペラというところに行き着きました。サビ以外をポップス風、サビをクラシック風といった感じで使い分けています。

――この10年でその使い分けも変化した感覚もありますか。

 基本的にはAメロ、Bメロを書き下ろしのポップス、サビでクラシックの曲をオペラの歌唱法で歌うというパターンでしたが、アルバムで色々挑戦していく中で、声を変えると「おっ!」となるんですけど、詞の内容によっては「ここでベルカントにしても伝わらない」と感じて、詞の内容に合わせて全編ポップスにしたり、逆に全編オペラにしたら壮大になるなとか、カバーアルバムではそういう使い分けをしました。でも、前述のパターンがポップオペラの基本になります。

――それは武部さんのアドバイスでそういうスタイルも?

 武部さんは多くは語らなくて、音で会話する感じです。武部さんはレコーディングで僕に3回以上歌わせてくれないんです。それは僕の場合ファーストテイクが良いからだと話してくれて、すごく嬉しかったです。

――レコーディングでのエピソードもお聞きしたいです。

 僕と武部さんは光栄なことに感覚が似ているところがあります。その中で尾崎豊さんの「I LOVE YOU」はクリックなしで録りました。この曲は揺らぎがあった方が良いだろうという判断なんですけど、武部さんが僕の肩の動きでブレスを確認しながら、演奏して下さいました。逆に寺尾聰さんの「ルビーの指環」はクリックを聞いて歌いました。

――曲調によって変えるんですね。バラードは間が大切だったりしますよね?

 マリア・カラスというソプラノ歌手の映画があるんですけど、その中で「休符も音楽」というセリフがあります。その言葉通りだと思います。ブレスも音楽なので、すごく大事にしました。

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