西野七瀬の乃木坂46卒業コンサートが24日、京セラドーム大阪で盛大に開催された。『7th YEAR BIRTHDAY LIVE』の4日目にプログラムされ、5万人の観客が来場。2011年8月のグループ結成以降、活動期間はこの日で2690日。愛された24歳は「本当に幸せだなって思いますね。本当に悔いなく卒業できます」と感謝し、Wエースとしてグループを引っ張ってきた白石麻衣と数十秒間、抱きしめ合うシーンも。アンコール後には2度ステージに舞い戻り、“変顔”まで披露した4時間に及ぶラストステージ。最高の笑顔でメンバーとしての活動に終止符を打ち、新たなチャレンジの出発点に立った。(約6300文字)【取材=小野眞三】

西野七瀬・卒業コンサート

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緊張の幕開け

 午後4時を過ぎ、会場に暗闇が訪れる。西野のカラーである緑と白のペンライトが光るなか、会場から歓声が挙がった。スクリーンに映し出されたのは、西野のオーディション風景。息をのむ観客。Overtureの響きに合わせてレスポンスの声が会場を満たし、ステージにスポットライトが降りた。その光に照らされた西野は「気づいたら片想い」をアカペラで歌い出す。明かりが広がると、ステージにはメンバーの姿。最初の楽曲は、西野が初めてセンターを務めた大切な楽曲だった。

 さらに、西野と白石のセンター曲「今、話したい誰かがいる」と続く。中央の円形ステージに移動したメンバーが軽やかに歌い上げると、キュートに「ロマンスのスタート」を披露。そして、センター西野の掛け声で始まったのは「夏のFree&Easy」。満面の笑みが輝いた。

西野七瀬・卒業コンサート

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 最初のMCで、「ついに来ましたね。実感がわいたのが出番の1分前。円陣の前も普通で、『今日、卒業? ホンマ? みたいな。オーバーチュアかかってるときにエッ? ってなって」と直前の心境を吐露した西野。メンバーからは“なあちゃん”(西野の愛称)への思いが寄せられた。

 最後のステージに緊張を抱えているという西野。ただ、「緊張してないよ、って言い聞かせて頑張ってます」と意気込みを口にし、ソロ曲「ごめんね ずっと・・・」では優しい歌声を響かせる。「自分じゃない感じ」「トキトキメキメキ」「春のメロディー」で2期生や3期生らもステージを盛り上げ、「Another Ghost」では西野が登場し、齋藤飛鳥らと黒のドレススタイルで妖艶にパフォーマンスした。

西野七瀬・卒業コンサート

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 会場の熱気は高まっていく。ワイヤーに吊るされた白石麻衣らは「魚たちのLOVE SONG」をアグレッシブに歌唱する。堀未央奈らがユニット曲「失恋お掃除人」を披露すると、暖かい色合いのカクテル光線が照らすなか、たっぷりの情感がこもった「君は僕と会わない方がよかったのかな」のパフォーマンスと続いた。

“はかなく”も“たくましい”

 スクリーンにはデビュー当時の西野の姿が映される。「すぐに泣いてしまう西野」とナレーションがつく。自らを鼓舞するように涙を流す西野の映像だったが、次の楽曲でセンターを務めたときに西野は明らかに変わっていたという。ステージ前方に歩を進める西野は、白石らメンバーとフォーメーションを組む。流れたのは「命は美しい」のイントロだ。花火が打ちあがり、ステージは宙に昇る。“はかなく”も“たくましい”西野。会場はレスポンスの嵐となった。

 同じメンバーでの歌唱は続く。フォーメーションを可変させながら「何もできずにそばにいる」「羽根の記憶」「設定温度」をパフォーマンスすると、入れ替わるように4期生が会場中央の円形ステージに登場。「傾斜する」「強がる蕾」でエースの卒業コンサートを盛り上げる。8つのトロッコで会場を回った西野らは「転がった鐘を鳴らせ!」を披露した。

西野七瀬・卒業コンサート

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 ステージには高山一実と秋元真夏、そして4期生が並ぶ。遠藤さくらや柴田柚菜ら4期生の11名がそれぞれ自己紹介すると、高山と秋元からも懐かしの自己紹介を披露。会場は爆笑と歓喜に包まれた。

 ステージに舞い戻った西野は、ファンの根強い支持を集める7人編成の「他の星から」を披露。白石や生田絵梨花、松村沙友里の「ショパンの嘘つき」と続くと、西野は「Rewindあの日」で実際のクルマに乗るパフォーマンスも。さらに、「生まれたままで」「吐息のメソッド」「僕がいる場所」と3曲を続け、西野やメンバーは観客と一体となりながら突き進んだ。

 白石、生田、松村がステージに立つ。西野との思い出を語り、生田は最新シングルの「帰り道は遠回りしたくなる」で、Aメロで歌う際、西野の肩に触れて振り向くシーンを説明。テレビでも映らないことが多く、生田と白石が“変顔”などで西野を笑わせる企みをおこなっていたという。毎回違うパターンを用意していたといい、白石は「なあちゃんすごい笑ってくれるから嬉しくて」と笑顔を見せた。松村は西野との“変顔”にまつわるトークを展開。“人参顔”を披露していた西野のことを話し、観客を笑わせた。

西野七瀬・卒業コンサート

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 3人のトークに続き、暗転した会場に「ひとりよがり」のイントロが流れる。ステージに一人たった西野の最初のソロ曲だ。花柄のあでやかな衣装を着た西野は、しっとりしながら力強い歌声を響かせる。西野や桜井玲香らのユニット曲「隙間」や「遠回りの愛情」が披露されると、西野と白石がWセンターを務める「きっかけ」へ。美しく、可憐にステージを彩った。

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 ステージに残ったのは井上小百合、桜井玲香、中田花奈。西野を含めた「94年組」。西野との思い出にトークの華を咲かせ、中田が大粒の涙を流す一幕も。「キリがないくらいの思い出がある」としんみりすると、3人は心機一転、観客にさらなる盛り上がりを呼びかけた。

西野七瀬・卒業コンサート

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 ここで西野と白石のストーリーが映像で流される。そして、2人がユニットを組んだ楽曲「心のモノローグ」の披露に移った。西野は純白、白石は黒の衣装を着てステージに立つ。Wエースと呼ばれ、グループをけん引してきた2人の“奇跡”のユニット曲。起立した観客は、2人がステージで魅せる息の合ったパフォーマンスに釘付けだった。

 そして、メンバーはステージ中央でフォーメーションを組む。「インフルエンサー」の登場だ。西野と白石がWセンターを組んだ2017年の大ヒットナンバー。会場はペンライトで赤く染められ、激しいステージパフォーマンスに観客はうなるようなレスポンスで返す。会場の盛り上がりは最高潮を迎えた。

西野七瀬・卒業コンサート

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 ライブの興奮はさらに加速する。「別れ際もっと好きになる」「嫉妬の権利」「かき氷の片思い」のパフォーマンスに続き、西野は「無口なライオン」でトロッコに乗って会場を回る。ファンに手を振り、満面の笑顔を見せると、ステージに上がって「やさしさなら間に合ってる」をパフォーマンス。「やさしさとは」で西野、生田、松村がゴンドラに乗って会場を巡る。駆け付けたファンへの感謝を伝えるように歌に力をこめ、アグレッシブな「My rule」がボルテージを高めた。

万感、ラスト

 ここでスクリーンに映像が流される。西野が生み出した、耳かきの先のフサフサの部分「どいやさん」が登場。彼? のリクエスト曲「せっかちなかたつむり」がキュートにパフォーマンスされると、なんと巨大なバルーンと化した「どいやさん」が会場に登場。吊るされたゴンドラに西野が乗り、「スカイダイビング」を熱唱する中、白石や松村らメンバーはステージを移動。「会いたかったかもしれない」を軽快にパフォーマンスした。

 そして、ステージに戻ったメンバー。「ありがとうございます」と手を振りながら、西野が駆けつける。「そんなこんなで、最後の曲になります。次が」と話すと、観客席は残念がる声。「とっても楽しかったです。卒コンだけあって、すごい出てる実感があった」と笑顔を見せながら、「いつかできるから今日できる」へ。乃木坂46の“次”を担う齋藤とのWセンター曲を最高の笑顔でパフォーマンスした。

西野七瀬・卒業コンサート

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 歌唱を終えた西野は「ありがとうございましたー。汗だくです」と、顔をびっしょりと濡らしながら笑みをこぼす。「本当に楽しかったです。こんなに大きな会場、京セラドームは初めてで、地元なので最後にできてすごくうれしいなって思います」と感謝と感激の声。そして、「はー、終わっちゃう、さみしいですね」としみじみ続け、長いお辞儀でファンに感謝し、ステージを去った。

出し切った

 ただ、緑と白の光に染まった観客席からは「七瀬」コールが響く。西野のメンバーとして最後の時間を惜しむように、アンコールの声がこだま。すると、スクリーンに西野のVTRが映し出され、西野が一人、ステージに舞い戻った。

 西野は「アンコールありがとうございます。七瀬っていう声がすごい聴こえて来て、みんなと『七瀬コール、揃ってる』って」と舞台裏の様子を明かし、「自分にとっての乃木坂って存在がすごく放したくないもの、知らない間に例えようのない大事なものになっていたんだなって、始まる寸前に気づかされました」と続けた。

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 アカペラで歌い出した最初の楽曲「気づいたら片想い」について、西野は「本番になると練習のときにはない感情がたくさん生まれてきた。練習どおりには上手にはできなかったと思ったんですけど、これがリアルというか、そういう姿を皆さんにお見せできるのも悪いことではないなって」とありのままの自分をぶつけた。

 ライブをおこなう上で、多くの人に支えてもらったことに感謝する西野。「ライブができることが当たり前じゃない」と改めて感じ、「自分が楽しい気持ちで歌ったり踊ったりできるのは、観て下さる皆さんが、視線を向けてくれる、手を振ってくれる、アピールしてくれるのはすっごい力になりました」と言葉にすると、感謝が涙声に変わった。

 それでも、気丈に言葉を振り絞る。「『みんな私を見て欲しい』ってできる場所なんですよね、私にとって、ステージ上は。降りると恥ずかしくて『見ないで―』ってなるんですけど」と続ける。ライブを通して自身を育ててきた西野は「見てくれるファンの方に喜んで欲しいのが原点にある。そういうふうに思わせてくれたことが、ありがたいことだなって思います」と感謝した。

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 ファンからの「ありがとう」のコールが響くなか、「なんか、もう、恥ずかしくなってきました」と笑った西野は、ライブに集まった5万人の観客や開催されているライウビューイングなどで見届けた人に感謝。「本当に幸せだなって思いますね。たくさんの方が力を貸してくれて私たちは活動できている存在ですから、その気持ちはアイドルだけじゃなく、ほかの仕事にももちろん生きると思う。この乃木坂の7年間で、そうやって覚えて行ったこと、教訓的な自分で考えたことはどこにいっても役に立ってくれるものだと思っていますね」と、メンバーとしての活動がかけがえのない時間だったことを伝えた。

 そして、「乃木坂の西野七瀬じゃなくなりますけど、西野七瀬はずっと生きて行きます」とし、「綺麗な形ではないかもしれないですけど、気持ちをお伝えできたなかって思います」と言葉を連ねた西野。歌唱したのはソロ曲「つづく」。卒業後も変わらない、ファンとの絆を表現するような歌詞。途中、おえつを堪えきれないような仕草を見せながらも、西野は、力強いメッセージとしてファンに届けた。

西野七瀬・卒業コンサート

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 暗転するなか、「シンクロニシティ」のイントロが流れた。センターの白石やメンバーは、西野を精一杯送り出すようにキレのあるダンスを披露する。西野は「ありがとうございます」と声を張り上げ、「もういっちょ盛り上がりますか!」と観客に呼び掛けると、「ダンケシェーン」へ。生田が西野の腕を引き、メンバーは中央のステージに移動する。観客席に向かって歩を進め、西野の純白の衣装がひと際輝く。そして、「めちゃくちゃ楽しかったよ。出し切った」と西野は話し、自身がセンターを務めた最後のシングル「帰り道は遠回りしたくなる」へ。白や黄のライトが全方位に広がり、涙を見せるメンバーの姿も。西野は笑顔を絶やすことなく、パフォーマンスを終えた。

 観客は「出逢えて良かった」「これからもよろしく」などのボードを掲げ、西野を感激させる。ステージ中央でメンバー1人1人と手を合わせ、ハグをし、泣き崩れそうなメンバーを支えた西野。秋元真夏と抱きしめ合ったとき、相好は崩れた。それでも、齋藤飛鳥の両頬を掴んで“小顔”をいじり、最後、白石と数十秒間、抱きしめ合う。ささやく白石に西野は笑みを見せていた。

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 西野は「本当に楽しい時間をみなさんありがとうございました。本当に悔いなく卒業できます。私がいなくなっても乃木坂46は、これからもどんどんキラキラ輝くと思いますので、私が応援します、皆さんも応援しましょう。本日は本当にありがとうございました」と感謝の言葉を残し、ステージから去った。

また会おう

 アンコールを終えた後も観客は「七瀬」コール。これに応えた西野は自身のソロ曲「光合成希望」をメンバーと一緒に歌う。「ソロ曲をみんなで歌ってもらうの凄く新鮮だった」と感動の言葉を寄せたが、「どうしたらいいんだろう。終わりたくないですよね、さみしいです。はあ。でもね、どうしよう。一実、助けて」と率直な気持ちを吐露し、会場を沸かせる。困惑気味の西野だったが、メンバーからの提案で横一列に並び、手をつないだ。マイクを使わず、メンバー全員が生声で「ありがとうございました!」。反対側の客席にも届く大きな声だった。

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 ステージを終え、帰路の案内をする場内アナウンスが流れた。席を離れる観客も出ている最中でも再び「七瀬」コールが起こる。すると、駆けだすように西野がステージに舞い戻った。西野は松村が話していた“人参顔”の披露へ。観客の「3、2、1」の掛け声に合わせて、白い歯をのぞかせながら食いしばったような表情を見せた。

 そして、「そんなこんなで、皆さん帰り、気を付けてくださいね。長い時間、脚とか疲れたと思いますので、帰ったらしっかり休んでください」とファンを労い、「またねー、バイバーイ、また会おうー」と最後の挨拶。手を振り、口だけで「バイバイ」とつぶやき、西野はステージから去った。

 およそ4時間にわたった西野の卒業コンサート。彼女の人柄がにじみ出るメンバーとしてのラストパフォーマンス。思いの丈を目いっぱいステージにこめ、乃木坂46のエースは、新たなスタートラインに立った。

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