槇原敬之の「LOVE LETTER」は涙を堪えながらの歌唱
――さて、今回色んな曲を歌われていますが、選曲はどんな感じで進めていかれたのでしょうか。
最初はスタッフから「歌いたい曲ありますか」と聞かれまして、何曲か出しました。そのあと、スタッフと一緒にカラオケに行って歌って決めました。その中で僕が提示していない曲も試しに歌ってみて、良かったものを選曲させて頂きました。
――最初に海蔵さんが提示した曲というのは、どれだったんですか。
ル・クプルさんの「ひだまりの詩 」や槇原敬之さんの「LOVE LETTER」、AIさんの「Story」、さだまさしさんの「たいせつなひと」です。森高千里さんの「渡良瀬橋」とORIGINAL LOVEさんの「接吻」は僕は知らなかったんです。そのカラオケで初めて聴きまして。
――そうだったんですね。僕は今作で「渡良瀬橋」が特にお気に入りなので、選んでもらえて良かったです。
ありがとうございます。この曲を教えてくれたスタッフに伝えておきます! 実はこの曲を聴いた時、森高さんだからこそ良く聞こえる曲なんじゃないかなと感じたんです。なので、カバーするのが怖いなと思ってしまいました。でも、自分自身の声に合うアレンジもあると思って、アレンジを担当して下さったMAY'Sの河井(純一)さんと相談しながら作っていきました。
――オリジナルとは違う良さを引き出せてますよね。
そこはこだわったところです。アレンジでオリジナルとは違う良さを引き出したいなと思っていました。やっぱり聴く方たちはオリジナルのイメージがあると思うので、歌い方や表現の仕方は考えました。
――リード曲であるクリス・ハートさんの「I LOVE YOU」はカラオケで歌ってみて選ばれたナンバーですね。
そうです。歌ってみてやっぱり良い曲だなと思いました。あと、まだあまりカバーされていないというのも、選んだ要因のひとつです。
――この曲はどのようなイメージで歌おうと思いましたか。
まず今回、自分の声を一番聴いて欲しいなというのがアルバムを通してありました。アレンジも楽器の数を極力減らして、声の方に必然的に向いてもらえるようにしました。この曲の歌詞はすごく悲しいので、上手く歌うというよりは、歌詞を読んで感じた気持ちをそのまま歌声にするということを心掛けました。
――その歌詞の世界観に入りこむ為にやっていることはありますか。
それが特に無いんです。歌う時になると普段の僕とは違う海蔵亮太が出てくる感じがあるので、自然体でいけてしまうんです。歌い終わればスッと普段の僕が出てきて(笑)。
――理想的な形ですよね。さて、槇原敬之さんのカバー曲「LOVE LETTER」は、思い入れが強すぎて涙を堪えながら歌ったみたいですが、この曲にはどんなエピソードがあるんですか。
この曲は僕が小学生の頃に聴いたんですけど、曲を聴いて涙が出そうになった初めての経験でした。
――えっ! 小学生で。
そうなんです。覚えてはいないんですけど、もしかしたら恋をしていたのかも知れません(笑)。当時は歌詞の意味も完全に理解していたわけじゃないと思うんですけど、泣いてしまって…。それで今回もその時の気持ちを思い出してしまって、レコーディングで歌詞を見ていたら込み上げてきました。それで、2番では涙を堪えながらの歌唱になっています。
――でも、音楽って昔の記憶を呼び起こす作用があるので、自然なことではありますよね。
そうですね。原曲のアレンジはけっこう元気な感じなんですけど、今回バラードにしてしまったので、より泣ける感じになってしまったので、「ライブで泣かないで歌えるかな」という不安はあります。歌う側としては泣くのは良くないと思うんですけど、1曲くらいは許してください(笑)。
――ライブでは海蔵さんの目元にも注目ですね。さてORIGINAL LOVEの「接吻」も、渋い曲ですよね。
この曲を最初に聴いたときは「こんな曲があるのか」とビックリしました。田島(貴男)さんの歌声がこの曲をさらに次の次元へ引き上げていると感じています。今ではこういった曲調は沢山あると思うんですけど、90年代の前半でこの曲をヒットチャートに送りこんだというのは、凄いことだと思いました。J-POPに新しい道を切り開いたパイオニアだと思いました。
――確かに当時私はリアルタイムで聴いていましたが、チャートの中でも異色でした。田島さんの歌は個性的ですけど、この曲をどのように歌おうと思いました?
田島さんのように歌うのはもちろん無理なので、僕なりに大人でセクシーな感じを出せたらなと思いました。なので、今までそういった面を出しては来なかったので、チャレンジの1曲になりました。
――ちなみに「接吻」は色んなアーティストがカバーされていますが、それらも聴いてみたりしましたか。
聴きました。中島美嘉さんのボサノバ調だったり、他の方もけっこうアレンジを変えた歌い方でやっていました。でも今回僕は「接吻」に関してはオリジナルのアレンジに近い形にしました。他の曲はアレンジを僕の声に合わせた感じにさせてもらいましたが、原曲の感じを壊したくなかったんです。
――歌で変化を出そうと思ったんですね。
はい。クリス・ハートさんの「I LOVE YOU」や中島みゆきさんの「銀の龍の背に乗って」は、気合いを入れて歌わないといけなくて、「接吻」はダンスミュージック的な感じで、肩の力を抜いて楽に歌いました。それがすごく良い塩梅なバランスが取れたと思います。