カラオケ世界大会「KWC」で2016年に男性部門、翌年にはデュエット部門で2連覇を達成し、2018年6月にシングル「愛のカタチ」でメジャーデビューしたシンガーの海蔵亮太(かいぞうりょうた)が8月25日、3rdシングル「誰そ彼(たそがれ)」をリリース。2021年は2019年に放映されたテレビ東京系「THEカラオケ☆バトル」での歌唱が時を経て反響を集めた。その歌う姿から、なぜか“サイコパスなのでは?”というコメントが発信され瞬く間に浸透。多くのサイコパスを感じさせるコメントが発信された。それを受け海蔵も5月に「サイコパスのうた」を配信リリースし、TikTokなどSNSをおおいに盛り上げた。インタビューでは、この現象について今の心境を尋ね、離れ離れになった恋人を今でも想い続ける一途な男のホンネを綴ったラブソング「誰そ彼」の制作背景など、多岐に亘り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】
元ネタがあったことを強く言っておきたい
――サイコパスで盛り上がりましたが、改めてSNSの力ってすごいですね。改めてこういったネットワークで感じることはありますか。
SNSって大変ですよね。僕の思春期の頃はまだそんなに多くなくて、繋がっている人もmixiとかなんとなく素性がわかるぐらいのものしかなかったので。今の子達は思春期という大事な時期から見えない敵と戦わなければいけないじゃないですか。
――本当ですね。僕の学生時代はSNSがまだなかったので。
今、僕は土日はケータイに触らないようにしています。鳴ってはいるんですけど無視しています(笑)。もちろん仕事の連絡は取りますよ!
――最近は触らないように時限式のボックスにスマホを入れる人もいるみたいですよね。上半期は「サイコパスのうた」でバズりましたね。海蔵さんがフリー素材みたいになっていて、みなさんからいじられるという...。
もともと「僕はフリー素材」みたいなことは言っていました(笑)。その通りになって。
――コメントで溢れてましたけど、よくこんな事皆さん思いつくなと、感心しました。でも傷つきますよね?
あのコメントよりも僕の親友の方がすごいこと言っているので全然落ち込んでいないので大丈夫です。その親友はみなさんからのコメントを見て「ほとんど合ってるじゃん」って(笑)。
――(笑)。ビスケットの「たべっ子どうぶつ」の首を折ってから食べそう、というのを海蔵さんは特にお気に入りみたいですね。
めちゃくちゃいいですよね! そのことをコメントしたら、作者の方から「あれ、私が考えました」とメッセージがあって、僕からも「文才がすごい。これからもいい文章を考えて下さい」と送り返しました(笑)。
――報告があったんですね。ちなみに「サイコパスのうた」の反響はいかがでした?
反響はあったんですけど、YouTubeにアップされていた僕がサイコパスと形容される要因になった動画が著作権の問題で削除されてしまったんです。あの動画ありきの曲だったので、ただサイコパスというテーマで歌を出した危ないシンガーだと思われる感じになってしまって(笑)。この場でサイコパスと言われる元ネタがあったことを強く言っておきたいです。
――2019年の「THEカラオケ☆バトル」(テレビ東京)で歌唱したあいみょんさんの「マリーゴールド」のカバーですね。ところで、「サイコパスのうた」を作ろうという案はどなたから?
これはレーベルの方からの提案でした。たぶん僕の未来のことは考えていないんじゃないかなと(笑)。
――「うた」を平仮名表記にして少しまろやかにしているのも良いですね(笑)。
そうなんです。可愛くすればもしかしたらNHKさんで流してもらえるかなと思って。
――でも、テーマがサイコパスですからね...。でも、今回リリースされたシングルの1曲目はグッとくるバラード「誰そ彼」を持ってきているところが、「サイコパスのうた」とのギャップがあって良いですね。
最初聴いたときに美しい曲だなと思いました。懐かしい雰囲気もありますけど、聴く人によっては新鮮に聴こえる曲だと思います。こういう曲が10年後にも愛され続けて欲しいと思いました。
――ラブソングですが、どのような気持ちで歌おうと思いましたか。
僕は実体験を思い出して歌うというよりは、自分なりに物語を作ります。主人公の背景から住んでいる場所や、こんな生き方をしているなど細かく決めて、その人になりきって歌うんです。今回は男性をイメージしていますが、歌詞が女性だったらその女性になりきります。その中で自分の経験が重なる瞬間もありますが、ガッツリ重ねることはなくて。
――よく歌手の方が曲に入り込み過ぎては良くない、とお話してくれるのですが、それは海蔵さんも同じような感覚も?
僕の場合、入り込むにも時間が掛かるタイプで、1曲5分という時間では入り込み過ぎるまで行くのは正直難しいです。なので、自然といい塩梅の入り込み方になっているかもしれません。おそらく入り込みすぎるには映画一本くらい見ないとダメかも(笑)。
――それは長い(笑)。ちなみに海蔵さんはどんな映画がお好きですか。
僕はサクセス系の映画が好きです。例えばレディ・ガガが出演していた『アリー/スター誕生』やクリスティーナ・アギレラの『バーレスク』とか。それは何か自分を重ねて観ている部分もあって、その道の途中に自分もいたらいいなと思いながら観ています。他には、『天使にラブ・ソングを…』も好きです。
――音楽にまつわる映画がお好きなんですね。さて、タイトルの「誰そ彼」というのはどのような意味があるのでしょうか。
この曲の歌詞は古風な言い回しが多いんですけど、「誰そ彼」は黄昏の語源になっている言葉なんです。「誰そ彼」は日が暮れていき、良く見ないと誰だかわからない、そうなった時のことを表しているみたいです。その中で懐かしさを感じるメロディラインだったので、そのニュアンスも入りつつ、「誰そ彼」の色合いも入っているこの言葉をタイトルにしようとなりました。
――この曲に登場する人物はどんなイメージですか。
主人公は都会人ではないなと思いました。ゲームの『ぼくのなつやすみ』にありそうな自然が豊かでのどかな場所に住んでいて、主人公が想いを寄せている相手がいて、それは幼馴染という僕の設定があって。その2人が大人になり働くために上京して、社会に揉まれてすれ違っていってしまった2人が最後は別れという選択をするという、僕の物語がありました。でも、その主人公が別れた後に2人が出会った始まりの場所に戻り、相手のことを思い続ける、そんな曲かなと思いました。
――かなり細かく考えていたんですね。お気に入りのフレーズは?
主人公はすごく優しい性格の人だと思うんですけど、耐えられなくて思わず本音、弱さが出てしまった、それが<愛して>というサビの最後ワンフレーズに入っているんじゃないかと思い、それが僕自身にも当てはまるところがあると感じましたし、一番気持ちが入った言葉なんです。
――MVもこの曲の情景を立体的にしてくれますね。
撮影は西伊豆町で7月だったので、すごく暑くて大変でした。でも、すごく良いものが撮れたと思っているので皆さんに見ていただきたいです。僕が考えていた曲のイメージにすごく合っていて。
――学校のシーンはもしかして母校で?
いえ、これも西伊豆の廃校をお借りして撮影しました。母校での撮影だったら、ちょっと照れますね(笑)。
――なぜですか。
その都度僕はチャンネルを切り替えてきたので、当時の自分に戻るようなものは苦手で、まだノスタルジックに浸るよりも前に進みたいんです。
皆さんに委ねるのも面白い
――カップリングにキリンジの「エイリアンズ」が収録されていますが、歌ってみてどんな曲だと思いました。
この曲を歌ってみて、すごく日本語のバランスが良いなと思いました。何年も色褪せない、バランス感覚に優れた曲はそんなに多くないんじゃないかと。それで、色んな方がこの曲はカバーされているので、それらを聴いてみたら、ボサノバ風やオリジナルに忠実だったり、様々なカバーがありました。でも、アレンジがR&Bというのは僕が聴いた中ではなかったこともあって、R&B的なアレンジになりました。アレンジをして下さった(Shin)Sakiuraさんのサウンドがすごく好きで、ずっとご一緒したいと思っていたので嬉しかったです。
――この曲を選ばれた経緯は?
スタッフさんからこの曲は僕に合うんじゃないか、と言ってもらえたことがきっかけでした。僕の場合、デビュー曲の「愛のカタチ」もそうなんですけど、周りの方から勧められることが多くて、それが毎回すごく良い方向に行くんです。
――歌ってみていかがでした?
歌は難しくて手こずりました。特にサビに入る前の表現にすごくこだわりました。盛り上げたいけどファルセットに行きたい、そんな選択肢に迫られる感じのレコーディングで、その選択によって曲の世界観が大きく変わってしまうんです。なのでいつも以上に練習してレコーディングに臨んだのですが、こんなに練習したのは初めてかもしれません。
――もう一曲の「繋がってる...」は「誰そ彼」とテーマがリンクしている感じもありますね。
繋がっている、というところでは重なる部分はあります。「誰そ彼」は一人に向けて歌う、でも、「繋がってる...」はもっと大きなイメージで「ウィ・アー・ザ・ワールド」のような感覚が僕にはあります。今は一カ所に集まることが難しくて、リモートでの飲み会など色んな方法で繋がることが出来たと思うんですけど、一人じゃない、ということがこの曲を聴いてイメージがすごく湧きました。
――メロディもすごくいいですね。
作曲をして下さったのがDick Leeさんという方なのですが、洋楽的なメロディに感じました。この曲は日本語の歌詞なんですけど、もともと英語詞があってそれを和訳したんじゃないかと思えたんです。オリジナル曲ではあるのですが、僕の中では洋楽を日本語でカバーしているかのような感覚もあって、他の言語で歌ったら世界中で愛される曲になるんじゃないかなと思いました。
――最後に今はサイコパスというキャラで盛り上がっていますが、次はどんなものが良いとか希望はありますか。
もう人間じゃなくてもいいかも知れないです。例えば歌うモンスターとか(笑)。でも、こういうのは狙ってどうにかなるものではないなと感じているので、皆さんが僕の曲を聴いて、何か思うものを発信してくれるのが自然でいいんじゃないかなと思います。今回のサイコパスの件で皆さんが僕のことをどう思っているのか、というところにすごく興味が湧きました。自分の価値を自分で決めるのもありですけど、今は皆さんに委ねるのも面白いです!
(おわり)
作品情報
海蔵亮太
3rdシングル「誰そ彼」(読み:たそがれ)
2021年8月25日発売
TYPE-A (CD+DVD) CRCP-10466 3,850円(税抜価格3,500円)
TYPE-B (CD) CRCP-10467 1,200円(税抜価格1,091円)
●TYPE-A
CD
1.誰そ彼
2.サイコパスのうた
3.繋がってる...
4.誰そ彼(Original Karaoke)
DVD
海蔵亮太LIVE 2021「僕が歌う理由(わけ)」
@大手町三井ホール(2021.06.12)より
1.紫陽花
2.Story
3.Everyday Heroes
4.Believe in you
5.秘密
6.アイシテル×アイシテル
7.素敵な人よ
8.サイコパスのうた
9.しゃぼん玉
10.Stripes
11.イッショケンメイ
12.僕が歌う理由(わけ)
13.愛のカタチ
14.誰そ彼
●TYPE-B
CD
1.誰そ彼
2.サイコパスのうた
3.エイリアンズ
4.誰そ彼(Original Karaoke)
<ワンマンLIVE情報>
海蔵亮太 LIVE 2021 「Restart」
●2021年11月23日(火・祝)渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
開場/16:15 開演/17:00
●2021年11月29日(月)名古屋・ボトムライン
開場/18:15 開演/19:00
<リリースイベント情報>
●2021年8月28日(土)私物サイン会:14:00~
パレマルシェ西春店4Fイベントスペース
●2021年8月29日(日)2ショット撮影会:14:00~
新星堂アスナル金山店店内イベントスペース
(今後の状況によっては、開催内容を変更する場合があります。詳しくはHP・SNSを確認してください。)
<リリース記念オンラインライブ情報>
●2021年10月2日(土)19:00〜
タワーレコードオンライン特設ページ
https://tower.jp/article/feature_item/2021/08/18/070