過去と向き合った理由、強くあるためにさらけ出した「弱さ」
<モデルであるために無理なダイエットの繰り返し。連日、早朝から夜までの撮影で、精神的にも追い込まれ、ホルモンバランスがどんどん崩れていく自分自身を後回しにし、数年生理が来ないまま放っておくこともあった過去。彼と出逢い子供を望んだものの、自分が見聞きしてきたほど、“妊娠”というものは、すぐには訪れなかった。“あの時、きちんとホルモンバランスを保っていなかったから”と、過去の自分を責めた>
エッセイのなかの一文だ。
西山茉希と言えば、女性ファッション誌『CanCam』の専属モデルで活躍。フジテレビ総合格闘技番組『SRS』の5代目レギュラーMCをはじめ、番組やCMに引っ張りだこ。同誌卒業3年後には第1子妊娠が発覚したタイミングで早乙女太一と“授かり婚”。2016年には第2子を出産している。
エッセイでは、第1子は望んだ妊娠ではあったものの「喜んでもらえるかな」「絶対、否定される」「またマイナスな報道が広まる…」という葛藤があり、“彼”に打ち明けることができずにいたが、それを伝えたときに大喜びしてくれたことで救われた、とも綴っている。
「自分の言葉を使ってここまでの分量で残す、発言するのは初めてです」という西山。記者の「華やかなイメージがあるから、葛藤とは無縁だと思っていました」という質問に「そんなことはないですよ」と柔らかな表情を浮かべ首を横に振ると、このタイミングで過去と向き合った理由を語り始めた。
「いま、出産を控えていたり、もし妊娠に気づいていても口にできない気持ちを抱えている人がいたら、『自分だけじゃないんだ』と背中を押せるような本として残しておきたかったんです。届けたいというよりも、誰かに見つけてもらって、当時の私が苦しんだように、いましんどいと思っている方々に、『一人じゃないよ』と思ってもらいたい。でも、自分がしんどかった過去や当時の場面を、自分で発信するのは難しくて、もしかしたら『可愛そうだったんですよ、私』と捉えられてしまうかもしれない。だけど伝えたかった」
テレビに映る西山はサバサバとした印象がある。同書の発売に合わせておこなわれた報道陣による囲み取材でも、記者から「生活の中で夫に腹が立つときはある?」と質問されると「夫婦だから腹が立たない日はないじゃないですか(笑)。そこは嘘をつかずに言います。きれいな夫婦だとは言いません(笑)」とあっさり。その姿勢は、包み隠さずにしたためたエッセイにも表れている。
「自分の感情で記憶に残っているものは、ごまかしたくはなかった。本を作る上で編集の方に『読者は母としての感情を知りたいと思う』と言われた時に、良いことも悪いこともさらけ出さないと伝わらないのではないかと思いました。私自身が、きれいごとやよくある素敵なストーリーは読んでも響かないタイプ。きっと読者のみんなも、リアリティを求めていると思ったので、ありのままに文章で残しました」
過去の苦い経験や失敗などには背を向けたくなるものだが、彼女はそれらを含めて「自分自身」だとして受け入れているという。そのことをみても、彼女自身の強さがうかがえるが、本人は決してそうだはないと否定する。
「強いと思ったことは一度もないです。弱さも一周すると、(弱みを)言った方が強くいられる気がして。逆に隠し続けたらずっとじめじめと過ごしてしまい、どんどん引っ張られてしまう。吐き出して『私はこうだよ』と自ら発信したほうが自分自身を支えられる。でもそれって『究極の逃げ』かもしれないですね。私の性格としては、強くいられるためにはどうしようと考えて、結論が出たら思い切りは良い方だと思います(笑)」