MIYAVI「ケミストリーや爆発を体感して欲しい」ニュー・ギター・ミュージックへの挑戦
INTERVIEW

MIYAVI「ケミストリーや爆発を体感して欲しい」ニュー・ギター・ミュージックへの挑戦


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年12月09日

読了時間:約14分

ギタリストとして僕は邪道

『SAMURAI SESSIONS vol.3 - Worlds Collide -』初回盤ジャケ写

――今年6月にリリースされたhideさんのトリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』に収録された「Pink Spider」もリミックスで収録されています。

 自分もhideさんの影響を受けた身として、デビュー当時は制作チームも一緒で彼が描こうと思っていたものを、自分で勝手に引き継いでいかなければいけないと背負っていた時期もありましたが、正直しんどくなり、彼の音楽やヴィジュアル系というカルチャー自体に距離を置いていました。でも今、また改めて自分で作り上げた音や歩いてきた道を経て、まっすぐフラットにhideさんの作品と向き合えることができるのかなと思い、挑戦させてもらいました。

――その中で改めてhideさんのすごさにも触れて。

 何よりも曲が色褪せないというのはすごいことだと思います。時代を超えてずっと聴ける、愛される音楽というのは、もはやクラシックですよね。それは一つの時代では分からない、何十年も経ってはじめて評価されるもの。その作品をまた今の自分たちの時代の息吹をもって、新しいクリエーションとして蘇らせられるというのは、本当に光栄なことです。そう意味でも意義のあるコラボレーションだったと思います。

――長く残る曲の要因とは何だと思われますか。

 結局、流行り廃りだけで作っているかどうかが大きいと思います。例えるなら冷めても美味しいご飯みたいな感じじゃないかなと。温かくて美味しいのは当たり前で、冷めてからどうなのかという。僕もそれを意識しながら作ることは多いです。売れる音楽か、残る音楽か。もちろんどちらも大事ですし、たまに例外もありますけど。まあ、でもこればっかりは冷めてみないとわからないですから(笑)

――どうなるかは時を待つしかないということですね。さて、MIYAVIさん自身のサウンドのトレンドは?

 スラップで一発音を出せばMIYAVIだとわかる音を出せるようになってきた。そんな中で今、ギターで歌いたい、と強く感じています。

――テレキャスターにトレモロアームを付けている人は少ないですよね。

 そうですね。ギタリストとして僕は邪道かもしれません。ピックアップも3つあって、アームもついていて、ほぼストラトキャスターですから(笑)。僕は王道とか邪道とかどうでもいい。大事なのは、どういう音を出したいか。何を表現したいか。そして、そのために何が必要なのか。僕はギタリストではありますけど、ミュージシャン、ロックアーティストという枠組みに収まるつもりはないです。俳優業もしますし、ファッションショーにも出ますし、UNHCRの親善大使としての活動も続けていきます。大事なのはクリエーションしていくなかで、何を届けたいか。届けるべきものがある。ギタリストというのは「こうでなければいけない」というのに、とらわれるつもりは全くないです。それがギタリスト然としていなくても結果、人の心に届けられればそれでいいと思っています。

――もっと大きなところなんですね。

 例えば5年後10年後、AI(人工知能)が音楽を本格的に作りはじめたとして、その時に僕たちはどう存在しているべきなのか、そもそも存在していられるのか。進化の中で、古いものの良さ、音の太さ、鳴りなどに敬意を払いつつ、新しいことにチャレンジしていく。それが僕たちの時代のアーティストの使命のような気がしています。どんどん完全なものが生まれてくる中で、人間としての不完全さを持ち合わせながら、完全なものとどう共存していくのか。「俺ら不完全なんだよ、アナログなんだよ」と、ふんぞりかえってしまったらそこで終わってしまう。

 今、実際アメリカにしてもギターミュージックがあまり聞こえてこない。その中で、新しいアイデンティをどう確立していくか。今回アルバムにおけるソフトなトーンでの表現法も僕の中でのすごく意味のある挑戦なんです。これはギタリストとしての意地でもあります。

――ではMIYAVIさんにとってテクニックとは?

 伝えたいことを表現するためのツールです。音楽を作るためにメッセージがあるわけではなく、伝えたいメッセージがあるから音楽を作っていて、音楽があるからギターを弾いている。そして、ギターでパッションを表現したいからスラップをしている、ギターで人を包みこみたいから優しくつまびく。とにかく作品を聴いて欲しいですし、感じて欲しいです。

――Day2に突入したことが良くわかる曲たちですよね。

 こういった挑戦を続けていけること自体幸せなことだし、ギタリストとして、アーティストとしての責任でもあると思っています。僕たちが進化を止めれば、音楽の進化も止まってしまう。僕たちが聴いてくれる人たちをグイグイひっぱって、新しいレベルへ連れていかなければいけない。なので、失敗を恐れずにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。

――参加アーティストもすごい実力を持った人たちばかりですから。

 本当にそう。無名でもすごいやつらは世界にはゴロゴロいますから。ワクワクしますよね。

――MIYAVIさんがコラボレーションしてみたいと思うポイントはどこにありますか。

 やっぱり自分にないものを持っている人かな。あと、上手い人はいっぱいいますけど、熱量がなかったら、もちろん音楽的には素晴らしいんですけど、作品をつくるという点では違うかなと。極端な話、熱量、パッションがあれば下手くそでも何でもいい。伝われば正解だと思います。

――『SAMURAI SESSIONS』は対戦型ということもあって、そこに重要なのは熱量で。

 一曲一曲、個々のアーティストと、そこで生まれるケミストリーを大事にしています。

――さて、2020年の東京五輪が近づいてきていますが、何か考えていることはありますか。
 
 世界中からたくさんの人たちが日本に訪れるわけで、皆で胸を張ってウェルカムと言えるようにしていきたいですし、その一員として自分も磨いていきたいなと思います。

――いつでもベストを出せるようにしているということですね。

 そうですね。変わらず精進していたいと思います。

――MIYAVIさんが思う日本人の武器とは?

 “狂気とホスピタリティ”だと思います。

――ありがとうございます。最後に、読者にメッセージをお願いします。

 音楽に国境はないと言われていても、実際にそこに壁はあります。でも、それは一人では壊せない。今回、国内外問わず素晴らしいアーティストたちとの楽曲を一つの作品に込めました。ここで起きているケミストリーや爆発を体感して欲しいです。この作品を手に取った瞬間が爆発のはじまりです。ニュー・ギター・ミュージックの冒険、宇宙旅行を感じてください。

(おわり)

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