影響を受けて書きたいと思った、THE BACK HORN 住野よるとのコラボで生まれたものとは
INTERVIEW

影響を受けて書きたいと思った、THE BACK HORN 住野よるとのコラボで生まれたものとは


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年11月03日

読了時間:約15分

平行宇宙的なところが、このコラボのキー

THE BACK HORN(撮影=冨田味我)

──「ハナレバナレ」は、どういう流れでできたんですか?

山田将司 まず小説の企画段階から住野さんと話をさせていただいて、住野さんが途中まで書いた小説『この気持ちもいつか忘れる』を読んで、その段階で曲を作ったんです。その曲を住野さんが聴いて、感じたものを小説の中に組み込んでいってという流れです。

菅波栄純 完結した小説を読んでから曲を作ったわけではなく、リアルタイムに影響を及ぼし合いながら作ったので、生々しい部分もあるんですよね。それに連載が始まる前に、先に曲が発表されたじゃないですか。小説のネタばれになっちゃいけないから、その部分で難易度が高かったです。小説と関連したものじゃないといけないし、THE BACK HORNの曲として格好いい曲じゃなきゃダメだし。そういう色々なものをぶちこんだら、こういうすごくパンクな感じの曲になりました。

──ファンからは、どんな反響がありましたか?

山田将司 THE BACK HORNらしいと、言ってもらうことが多いですね。でも、これだけテンポ感があって駆け抜けていくような曲は久しぶりでした。

菅波栄純 最近は、どっしり系が多かったから。

──冒頭の<ハートブレイクな世界よ くたばれ>というフレーズが、格好良いしキャッチーさがあって。個人的に、まずそこでやられました。

菅波栄純 これは住野さんの小説に出てくる主人公の気持ちにも重ねているし、THE BACK HORNの曲によく出てくる「ちょっとやさぐれたヤツ」のことも、自分の中では重ねていて。

 それで、サビが2つあったら面白いと思ったんですよね。まず頭で<ハートブレイク>のところはパンクっぽい感じのサビで、曲中に出てくる<心臓が飛び出して>というところは、「ドキドキしちゃってます!」みたいな、恋をしたときのキュンとした気持ちが表れていて。そういうパンクなサビと、キュンとしたサビが、短い曲の中に2つとも入っていたら、俺らの持ち味が面白く出せるんじゃないかと思って。

──そこは住野さんらしさとTHE BACK HORNらしさの、両方が出ている気もしますね。

「ハナレバナレ」配信ジャケ写

山田将司 主人公は、不器用な感じがあるよね。不器用ながらに、頑張って生きている。それは住野さんが描くものとも、リンクしていると思う。

菅波栄純 住野さんもこの曲を聴いて、すごく喜んでくれました。「ライブで聴きたい。そのくらいがつっと曲としてきました」と言ってくれて。「小説を読めば、すごくリンクしていることが分かるから、めっちゃ驚きました」とも。そう言ってもらって、僕らもめちゃめちゃ嬉しかったです。

──Dメロで、<今時恋愛小説でもないよ>というところがあって、小説とのコラボでそういうフレーズを出すのは、「やるな~」と思いました。

山田将司 さすが。そこはもう、(腕を叩いて)ここが上がっているから(笑)。

菅波栄純 住野さんの作品は、主人公が脳内でしゃべる言葉がかなりの分量で、そのモノローグ内で、自分が言ったことに自分でツッコんだりするんですよ。実生活でも「俺は何をやっているんだよ」とか、頭の中で言っちゃう時ってあるじゃないですか。そういうところからも影響を受けていて、めっちゃ走っている自分にツッコんでいるんです。

──住野さんテイストが、そうやって細かく落とし込まれている。

菅波栄純 ちゃんと影響を受けて、書きたいと思ったから。コラボって、相手の作品を好きになって影響を受けてこそ、本当のコラボだと思うし。こうやって自然に影響が出てくるといいなと思ったから、ここが書けたときは嬉しかったです。

──Dメロは音の雰囲気も変わって、モノローグの世界であることが表現されている。場面展開する曲は今までもありましたけど、ここまでフワッとした感じになるのは、意外性がありました。

菅波栄純 リアルに対するファンタジーみたいな感じで、急に世界観がパンクじゃなくなるんです。俺もすごく好きなところで、実はこのDメロの感じだけで1曲作りたいくらいなんですけど、それをこの一部分にぜいたくに使っています。

──歌うときの気持ちは、小説の主人公の気持ちですか?

山田将司 いえ、コラボではあるけど住野さんの『この気持ちはいつか忘れる』の主人公として歌っているわけではないです。主人公像は、読み手がそれぞれでイメージしているから、強制したくないし。むしろTHE BACK HORNの山田将司というものを、強く出したいという気持ちがありました。

 だからTHE BACK HORNの曲と住野さんの小説は、ずっと並行しているけど、決して交わらないんです。歌詞と小説の登場人物たちは決して出会わないし寄り添わないけど、その2つを繋げるのが、読み手と聴き手の頭の中なんです。

──小説と曲は、パラレルワールドみたいな関係ということですね。街並みや世界は同じだけど、どこかちょっと違うみたいな。

菅波栄純 ある意味で、そうだと思います。完全に同一ではないところが、すごく面白いんです。そういう平行宇宙的なところが、このコラボのキーになっています。

──今後はどうなって行くんですか?

山田将司 これが第一弾として、次があることを期待して待っていて欲しいですね。

菅波栄純 僕らもすごく楽しみです。このコラボ自体が、会社的なって言うとあれだけど、そういうところから始まっていないので。お互いのリスペクトがあって、面白いことがやりたいと始まった、すごくピュアなものだから、ぜひ続けていきたいです。

──住野さんの読者が、曲を聴いてTHE BACK HORNに興味を持ってくれたり、ライブに足を運んでくれるようになるかもしれないですね。

山田将司 そうなったら嬉しいですね。俺らの音楽を知らない読者は、きっといっぱいいたはずだから。そういう人たちと出会わせてもらえたのは、すごく嬉しいことです。

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