4人組ロックバンドのTHE BACK HORNが2月8日、東京・日本武道館で全国ツアー『THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」~KYO-MEI祭り~』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは結成20周年を記念して昨年10月の新宿LOFTを皮切りに、日本武道館まで総動員数は約2万人を超える全国21カ所21公演をおこなうというもの。ライブはこの20年の集大成にふさわしいインディーズ時代のナンバーから、昨年9月にリリースされた「ハナレバナレ」まで全21曲を披露。終始、熱量の高い演奏と歌で武道館を共鳴させた。そのツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

色んな思いをここに充満させて最高の夜に

山田将司【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 特にロックバンドの聖地と呼ばれる日本武道館。天井からは日の丸が掲げられ、他の会場とは空気感が違うのが感じられる場所だ。THE BACK HORNの武道館公演は2008年、2013年に続いて3回目となる。MCで岡峰光舟(Ba)が「3回も日本武道館でワンマン出来るバンドだったんだね」と、しみじみ話していた言葉が印象的だった。

 会場には20周年を祝福しようと全国各地から多くのファンが集結。ステージ後方のスクリーンにはツアータイトルと存在感のある狼が投影。これから始まる祭りへの昂揚感は高まるばかりだ。開演時刻になり暗転するとこの20年間にリリースされたCDのアートワークが走馬灯のように次々と映し出されていく。そして、メンバーがオーディエンスの大歓声のなかゆっくりとステージに登場。SEに合わせ菅波栄純(Gt)が手拍子を煽り、ツアーファイナルは結成時の衝動が詰め込まれた「その先へ」で幕は開けた。

菅波栄純【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 序盤からステージには特効の炎が立ち上り楽曲をもり立て、1曲目からクライマックスのような雰囲気さえ醸し出していた。メジャーデビューシングルの「サニー」では感情を叩きつけるかのように歌い上げる山田将司(Vo)。1曲1曲に込められた熱量は、どんどん高まっていくのがフロアにも伝染していく。

 松田晋二(Dr)が「俺たちもたくさん色んな思いを持ってきています、でも、みんなも色んな思いでここに集まってくれていると思います。その色んな思いをここに充満させて最高の夜にしましょう」と投げかけ「罠」を投下し、静と動が見事に融合したナンバー「ジョーカー」へと流れ込んだ。山田の狂気的な声が武道館に響き渡った。そして、インディーズ時代のナンバーからの「ひとり言」はバンドのエモーショナルな一面をより強く打ち出していた。

岡峰光舟【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 スクリーンに映し出された<有罪>の2文字が存在感を放った「悪人」、そして、スクリーンに映し出された螺旋の渦が強烈なインパクトをサウンドとともに放った「雷電」と、映像と音の相乗効果でテンションはうなぎ登り。「コワレモノ」では、菅波が<神様だらけのスナック>の部分をコール&レスポンス。オーディエンスの盛大なレスポンスに興奮を隠せない菅波。

 MCでは松田が「THE BACK HORNの20周年をきっかけに集まってくれた忘れられない夜がたくさんあって、俺たち続けられて良かったなというのを噛み締めた時間でした。出会えた喜びを感じ取ります」と、このツアーへの想いを語った。

松田晋二【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 ライブは中盤戦へ。岡峰のずっしりと響くルート弾きから始まった「初めての呼吸で」、続いて、山田による鍵盤ハーモニカの演奏が楽曲に新たな彩りを添えていた「ヘッドフォンチルドレン」、言葉の一つひとつが聴くものの感情を揺さぶりかけた「美しい名前」、山田は声が掠れながらも熱いメッセージを叫び続けた「未来」と、ミディアムナンバーを立て続けに投下し、武道館の空気感を一転させた。

今日ここからが俺たちの出発です

山田将司【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 ここで山田が「胸がいっぱいです。人生の半分以上をTHE BACK HORNとしてやってきて、THE BACK HORNやみんなから、人としてちゃんと生きていこうと力をもらっている気がします。THE BACK HORNには色んな曲があるけど、その一曲一曲がちゃんと届いているからこそ、みんながそういう顔をしてくれているんだなと思っています。今日この日まで生きてこれたことを祝福するようなライブを、これからもずっとしていきたいと思っています」と決意と想いを語った。
 「KYO-MEI祭り、まだまだいこうぜ!」とライブは後半戦へ。昨年リリースした1stミニアルバム『情景泥棒』から「Running Away」。どこかと置く桃源郷へといざなってくれるかのような、疾走感のあるロックチューン。再び炎がステージ前方で立ち上ぼるなか、力強いコーラスが我々の背中を押してくれる。

 ラストスパートはイントロからフロアからパワフルな掛け声が響いた「コバルトブルー」。音と音の衝突が生み出す新たなエネルギーに、オーディエンスも拳を掲げ、バンドの放つサウンドにジェスチャーで応えていく。本編ラストは人気曲の「刃」。この20年間で研ぎ澄ましてきた“刃”は、これからもまだまだ尖り続けるというアティチュードを音から感じさせ、メンバーはステージを後にした。

 アンコールに応え、メンバーが再びステージに登場。松田は「21年目以降も、まだまだ皆の心に届く音楽を作っていきたいと思います。結成当初は続けていくことはそんなに考えていなくて、その時の気持ちを曲にして自分たちが救われていたかも知れません。でも、同じような気持ちを持っている人たちが集まってくれて、20年経って色んなことが変わってきて、前向きになって力が出たり、バンドと音楽に救われてきたし、これからもみんなの心の満たされない何かを作れる音楽を目指します。今日ここからが俺たちの出発です」とこの20年の想いを話しインディーズ時代のナンバーから「冬のミルク」、そして、昨年、小説家の住野よるとコラボした最新曲「ハナレバナレ」を届けた。

ライブの模様【撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】

 山田が「また生きて会おうぜ!」と投げかけ、この20周年のツアーを締めくくったのは「無限の荒野」。銀テープが宙を舞い、武道館の客電も点灯。ステージとフロアは更に強固な塊となり、最高の一体感を作り上げ、この場にいる全員がこの20年間の全てをぶつけ、至高の時間『THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」~KYO-MEI祭り~』の幕は閉じた。

 THE BACK HORNの目の前に広がるのは“無限の荒野”。きっと彼らにはゴールはなく、見えない何かを探し続けていくのだろう。21年目に突入し、ファンと共に新たなスタートを切ったTHE BACK HORNの未来に期待がより高まったステージだった。さらにこの日、メンバー自らが企画・演出をおこなうイベント『マニアックヘブン Vol.12』が8月12日にSTUDIO COASTで開催されることも発表された。

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