ソロは責任の全てが僕にある一番たいへんなものです(笑)
――「BACK STREET MIDNIGHT QUEEN」ではYMOなどでもご一緒されていたクリス・モズデルさんと作詞を共作されていますが、どのような経緯で共作されることになったのでしょうか。
クリスはサディスティックスの頃から一緒にやっていて「The Tokyo Taste」という曲でも書いてもらっています。クリスは僕の姉の家庭教師だったんです。詞をたくさん書いているというので見せてもらったのがきっかけです。
――そうなんですね。歌詞は日本語と英語で分かれていますが、どちらから作っていくことが多いのでしょうか。
クリスが先に書いてあったものに僕が日本語をつけるという時もあったと思いますけど、基本的には同時進行ですね。アーティスティックなんだけど、人間的にやりやすかったというのが大きいですね。
――英語もそうなんですが、今作にはイタリア語やフランス語もありますが、録り直すにあたって発音も意識されましたか。
もう結構直しましたね。フランス語は難しいですね。逆にイタリア語やスペイン語はある程度発音しやすいですよ。言葉を“巻く”のが出来ない人もいるとは思うんですけど。
――イタリア語も難しそうなイメージがありますが、意外でした。ちなみに今回歌い直してみて印象的だったことはありましたか。
曲によってはヴォーカルの入りのタイミングを忘れてしまっていたところがあったかな(笑)。エンジニアとかマネージャーの方が覚えていたりして。
――40年ですからね…。当時の制作で印象的だったことはありましたか。
レコードが売れるかどうかもわからないのに、パリでジャケット撮影をさせてもらったことかな。
――売れるかどうかわからなかったんですか?
その時はYMOもまだなかったし、こんな実験的なアルバム誰も買わないですよ(笑)。このアルバムは最初7~8000枚ぐらいしか売れてなかったんじゃないかな。YMOのおかげでファンのみんなが遡ってくれて聴いてくれてね。制作費に何千万も掛かってますから…最終的にはYMOが始まって何十万枚か売れたので恩返しはできたんじゃないかなと思うけど(笑)。
――今作の発売当時はアナログ盤がメインだったと思うのですが、CDというメディアが登場した時、幸宏さんは思うことがありましたか。
あったね。やっぱりCDは当初ハイ(レンジ)に欠点があったので。レコーディングした音を再現しきれていないというね。あとはデザイナーさんたちがCDのサイズがアナログ盤より小さいから困ったと言っていたのを覚えています。それに慣れるのにも少し時間が掛かったかな。CD、カセットテープ、アナログ盤と3つが同時に出ていた面白い時期もありましたね。例えば100万枚売れたら3分の1はカセットテープが売れていたという時代でした。
――ミュージシャンからすると、CDというのは音質的にはあまり好ましくなかったのでしょうか。
そういうわけではありません。すぐに音質的にもOKと言えるようになりましたから。メリットは場所を取らないということとか。教授は「いっぱい置けるから」CDが良いと言ってましたね(笑)。デジタルは再現できる音に限界があると言われてましたけど、今ではアナログ以上に再現出来るようになりました。でも、アナログは歪みとか中低域が独特なんですよね。あと、聴き込んでいくうちに変わるところとか。今回、『Saravah!』のオリジナル音源と比べてみて「微妙にテンポ落としてますね」とか言われるんだけど、マルチテープを再生するデッキの速度が微妙に違うということはあるかもしれない。アナログですからね。
――それがアナログの面白いところですね。最近またアナログレコードの人気が再燃してきたり、アナログブームだと思うのですが、幸宏さんも音楽を聴くときはレコードが多いのでしょうか。
レコードも多いですね。でも、車とかではポータブルプレイヤーからBluetoothで飛ばして流したりしてますよ。あと、たぶん意味はないんだけど、ダウンロードしたものも一度CDに焼いてから聴いたり。なんか物としてあった方が安心するんだよね。
――さて、11月24日には東京国際フォーラム・ホールCで『Saravah! 40th Anniversary Live』が決定しています。どのようなライブになりそうですか。
今回の曲はもちろん全曲やります。この9曲をしっかりと再現して、それだけじゃ曲が足りないから他に何を演ろうかなと考えているところです。考え中ではあるんですけど、ライブではあまりやったことのない曲を中心に選ぼうかなと思っています。もしくは、ライブでやっていてもアレンジをガラッと変えてみたりね。
――さまざまなプロジェクトで活動されている幸宏さんにとって、ソロ活動とはどのようなものですか。
責任の全てが僕一人にある一番たいへんなものです(笑)。他のプロジェクトは各々に責任が分散されるので。THE BEATNIKSは(鈴木)慶一と半々だけど、METAFIVEなんかメンバーが沢山いるからね。今度のライブはソロだけど、当時聴いていてくれた人たちと一緒に作り上げるという感覚なので、また意識は違うんですけど。でもこの再現ライブはちょっと緊張するかな。なんと言ってもこのアルバムを知り尽くしている人たちが観に来てくれるわけですから。歌が一番重要ですけど、演奏や雰囲気も大切にしたいなと思っています。
(おわり)