更なる芸術性求めて、LEO 新作は大学進学を経た出会いの集大成
INTERVIEW

更なる芸術性求めて、LEO 新作は大学進学を経た出会いの集大成


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年09月23日

読了時間:約11分

テーマは「出会い」

LEO(撮影=冨田味我)

——今作の制作に当たって、コンセプトなどあれば教えてください。

 前作は割と多様性を見せたり、自己紹介的なニュアンスがありました。なので今回はもう少し芸術性の高いものを出したかったんです。テーマとしては「出会い」があって、色々な作曲家とか、他の楽器の方とか、僕の高校の同期や後輩にも参加してもらっています。選曲は相談しながらではありますが、基本的には自分で決めました。

 タイトルには、ゲストで参加してくださった皆さんとの出会い、古典との出会いという意味があります。始めた頃からコンクールなどの節目節目で弾いてきた「箏のためのアラベスク」「三つの詩曲」「ファンタジア」といった曲にも僕の「箏との出会い」が詰まっていますね。

——1曲目の和と洋が混ざっていくような「邂逅 −六段とSerenadeによる−」から始まりますね。

 洋楽器と箏が一緒に弾くというのは僕ではないプレイヤーの方でもやってらっしゃるんです。そこで陥りがちなのが、洋楽器に対して箏の方が弱く聴こえてしまうということです。単純に西洋楽器の方が音量も大きいし、13本の弦しかない箏よりも色々な事ができるじゃないですか。でも、お箏が洋楽器と対等に共存できる様に、古典「六段」とシューベルトの「セレナーデ」が違うものとして進んで、だんだん混ざっていく様な構造になっています。西洋と和が協調して融合していく様な。楽曲はこのアルバムの為に大塚茜さんに書き下ろしてもらいました。アルバムのテーマにもばっちり合いましたね。

 あと今回のアルバムは全部推していきたい曲ばかりですが、特に印象深かったのは自作曲の「鏡」ですね。今の自分を全部詰めた様な曲で。アルバム全体が西洋楽器を含めたコラボが多くて、先ほどの「六段」以外は箏っぽい楽曲がないんです。この「鏡」はお箏っぽい音階で書いたのでこれを入れました。曲タイトルは「今の自分を映し出せたらいいな」と思って付けています。

 デビューした時は色々試して全部やってみようという気持ちがあって、自分のやりたい音楽が定まっていなかったなと思うんです。でもだんだん見えてきた。あとは自分の感情を自分の言葉で伝えたいと思って曲を書いたんです。この曲の後半は技巧的に難しくなっていて『情熱大陸』でも放送されましたけど、35テイクくらい録りました(笑)。録り終える頃には手がパンパンでしたね。そういう意味でも想い入れが深いです。

——ヴァイオリンの高木凜々子さんをゲストに迎えたきっかけは?(高木凜々子の高は正式にははしご高)

 日本と海外のヴァイオリニストは表現の自由さが全然違うじゃないですか。彼女は繊細でもあるんですけど、すごく情熱的でパワフル。芯がしっかりしていて「私はこういう音楽がしたいんだ」と言えている感じの人ですよね。日本人の学生でそういう人はあまりいないと思います。僕も感情があふれ出る様な演奏をするので、スタイルが似ていたんですね。目指す音楽の方向性も近いと思ったので「この人と一緒にやったら面白いな」と声をかけました。

 「One Summer's Day(あの夏へ)」で編曲をしてくれた冷水乃栄流さんも藝大生なんです。僕が探したというよりは、学校関係の演奏会でもともと関係があって。彼は若い作曲家には珍しく、箏についても詳しかったんですよ。今回は年も近い事もあって、密に相談しながら制作する事ができました。「ポップスをお箏でカバーしました」という動画はたくさんユーチューブに上がっているんですけど、お箏の良さが出ていないものが多いんですよ。ただ誰でも知っている入り口になる様な曲は入れたかったので、陳腐にならない様に打ち合わせしていきました。十七絃箏を重ねて録音していって、結果的にお箏でやる意味のあるカバーになったのかなと思います。

——「ファンタジア」についてですが、横浜インターナショナルスクール時代の後輩や大学の同期を呼んだ意図はあるのでしょうか。

 先ほども話したとおり、これは僕の音楽のルーツなんです。彼らも自由なんですよ。普通お箏をやる人は古典から入って、という感じなので。みんなはただ楽しそうに音楽していた。そういう子たちと一緒にやると自分の原点がもっと見えてくるだろうなと思ったんです。あと、同期の人達はずっと一緒にやってきた仲間なので、意識共有をしやすいというのもありましたね。

——このアルバムを経て、新たな目標はありますか?

 このアルバムを踏まえてコンサートもやりたいと思っています。まだまだ可能性はたくさんあるんですけど、去年よりも自分の進みたい方向が見えてきたんですよ。古典を勉強して再認識した分、箏の魅力を伝えられる様になったと思ってます。箏も西洋の楽器と何ら変わりないポテンシャルがあるものだと思っているので、色々な分野の人とコラボしたりしてそれをもっと伝えたいですね。

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