テレビ番組『情熱大陸』への出演によって話題になった、箏(こと)アーティストのLEOが8月1日、アルバム『玲央 Encounters:邂逅』をリリースした。同作は大学進学とともに出会った人々や古典を学び、成長した彼の音楽性を感じるものに仕上がっている。多様性を求めたデビューアルバムとは違い「芸術性の高いものを作りたかった」という彼は、箏という楽器を西洋楽器と同じように楽器として世に広めたい想いをより強く思っている様子。そんな彼に新作について、大学生活について、趣味でもあるファッションなどについて多岐にわたり話を聞いた。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】
古典の作法を通して見えたもの
——約1年半前のメジャーデビュー後から周りの反応はいかがですか。
前作では色々なタイプの曲が入っていたので、様々な良い感想を頂きました。昨年4月から東京藝術大学に通っていて、1年間は学外での演奏禁止でした。なので2年生になってまた活動をし始めたという感じです。デビューした時は実感がなかったんですけど、だんだんと責任感を感じる様になりました。特に先日『情熱大陸』にも出させて頂いてからは、街中でも声をかけてもらえる様にもなって驚いています。まだ学生ですけど、プロになったという事で気持ちの変化はありましたね。
——学生生活はどうですか?
藝大は、師弟関係や礼儀作法を厳しく教えてくださる学校なんです。なのでお茶出しをしたり、先生がいらしたら荷物持ったり、部屋の掃除などをします。僕はもともとインターナショナルスクールに通っていたので、先輩も後輩もなければ、先生とも友達感覚で。英語なので敬語もありませんし。そういうところから厳しい環境に入ったので、対応するのが大変な1年でした(笑)。
それから僕は結構自由な演奏をするんですけど、藝大では基礎をしっかりという事で古典の演奏をみっちりやりましたね。活動の制限もあり、自分としては辛い事もあった1年で。ただ新作を制作してみて、この1年でより豊かな演奏を出来る様になった自分に気付いたんです。なので『玲央 Encounters:邂逅』ではレベルアップした僕を見せられているんじゃないかと。
——前回のインタビューでも「古典をもっと勉強したい」とおっしゃていましたよね。
そうですね。ただ想像以上に礼儀作法などが厳しくて、自分の演奏を根本から直さなくてはいけなかったり。そういう意味でも本当に大変でした。箏は知っての通り、伝統楽器なんですよ。僕が横浜インターナショナルスクールで始めた時は堅いイメージでなく、普通の楽器と同じ様に自然と箏に触れる事ができたんです。でもプロになるに当たって、受け継がれてきた伝統の部分も知る必要があるなとは感じています。礼儀作法や師弟関係の在り方って音楽に直接的な関係はないと思うんです。でも実際に先生のお手伝いなどやレッスンを受ける前のあいさつ、といった学ぶ姿勢が大事なんですね。それがしっかりしていると、音楽家として演奏していない見た目もそうですし、心構えも定まる。
先輩を立てたりする部分も最初は「何でこんな事しなきゃいけないんだ」と思っていましたが、今になってみて何ごとも姿勢から伝統の音楽ができているんだなと感じました。メンタルも鍛えられますし。料理もそうらしいですけど「教わるのではなく、先生を見て盗む」という考え方が邦楽にはあります。先生が弾いたものを自分なりに盗むというのは、自分で考えて行動する自主性も育ちます。
——他の学部の学生との交流もあるのでしょうか。
邦楽科は1学年全体で25名です。その中で箏が6、7人くらいです。僕が入っているのは現代箏曲科という新しく新設された科で、僕が1期生。意外と邦楽科は他の音楽科との交流が少ない印象ですね。ただ今回のアルバムはヴァイオリンや、作曲の方と一緒にコラボレートしています。自分から割と声をかけて探しましたね。最近は段々と洋楽器の人とも知り合いが増えてきましたし、『情熱大陸』の影響で僕を知ってくれている人もいて、交流が増えています。あとサークルも最初はバスケ部に入ったんですけど、箏の練習が忙しくて結局行かなくなってしまいました(笑)。