解散後は良い下積み、元ヒスブル・Sabao デビュー20年を振り返る
INTERVIEW

解散後は良い下積み、元ヒスブル・Sabao デビュー20年を振り返る


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年09月10日

読了時間:約18分

「未 RISE」はこの20年間に寄り添える歌詞

Sabao

――さて、今作『MeRISE』には新曲「未 RISE」が収録されていますが、アルバムのタイトルと曲名の読みは同じでも意味合いが変わりますよね? これにはどのような意図があるのでしょうか。

楠瀬タクヤ 「未 RISE」もアルバムタイトルと同じ「MeRISE」でも良かったんですけど、そうすると自然と自分を鼓舞するような曲になったと思うんです。でもやっぱり僕らは“未だRISE”していないんじゃないかなと思って「未 RISE」にしました。それは、僕たちはすぐにデビューさせて頂いて下積み時代がなかったことも影響していると思います。それもあって僕は解散後、ヒスブルで稼いだお金がなくなるまでは全部音楽に投資しようと思って、バイトもせずにバンド活動をしていました。今思えば解散してから下積みをしていたような感覚で。良いことも悪いことも経験して、いまだに音楽を辞めずに続けて来ている人は数多くはいないと思うんです。

――お二人のような経験を積んできている人はそうそういませんよね。

楠瀬タクヤ 僕とTamaは特殊な星の下でやってきた感覚があります。この先20年は体力など衰えてきて、これからは知見と経験、柔軟性が財産になっていくと思います。若い素晴らしいミュージシャンが増えていく中で、「昔は良かった」というようなオジさんにならない為にも、自分にはまだ伸びしろがあると思いたくて、ここまでの20年を全て肯定して越えていきたいなと思いました。歌詞にはそういったことを匂わすようなことも描いていて、それでも私は上っていくということを書きました。凄く覚悟はいると思うんですけど。「未 RISE」は最初から20周年記念盤に入れようと思っていたので、自然とそういう曲になりました。

――Tamaさんはこの「未 RISE」の歌詞を読んだ時はいかがでした。

Tama 空いてしまった期間はありますけど、この20年間に寄り添える歌詞だなと思いました。聴く人それぞれが感じることは違うと思うんですけど、無理をせずに入っていける感じが私はしました。

――意外だなと思ったのはバラードナンバーだったということなんです。お二人には元気な曲というイメージがあったので、良い意味で裏切られました。

楠瀬タクヤ 確かにそうかもしれませんね。アルバムの曲を並べたときにパワーがある曲は沢山あるなと思って。アルバム構成バランスやライブのことを考えたときにバラードがしっくりきたというのがありました。「未 RISE」のAメロはSabaoで最初にライブしたときからあったんです。ライブで「春〜spring〜」を歌う前に前奏として制作したメロディなんです。自分でも忘れていたんですけど、ふと、このメロディを思い出して。それって何か意味があると感じて。

Tama そうだったんだ(笑)。

楠瀬タクヤ 歌詞は違いましたけど。確か<明日もまた続けてみるかな この歌を>みたいな感じで、「春〜spring〜」にいくための序奏みたいな。

――覚えている人は少なそうですね。

楠瀬タクヤ 誰も覚えていないと思います。作った僕ですら忘れてましたから(笑)。こういうアルバムで新曲を1曲入れるというのは、すごくプレッシャーでハードルは高いんです。名刺代わりになるような曲なのか、パワフルでキャッチーな曲なのか、メロディが自分は命なんだと思っている中でサビのメロディが浮かんで、これは良いなと思って。一番良かったことは重永(亮介)さんにアレンジをしてもらえたことですね。重永さんはヒスブルを聴いていてくれた世代で。

Tama 世代と言うよりもガチのファンだったみたいで。

楠瀬タクヤ それもあってアレンジの中に「春〜spring〜」に出てきたフレーズなんかを組み込んでくれたり。趣旨を理解してやってくれているというのが彼にしか出来ないことだなと思います。「未 RISE」の最後は転調して1曲目の「春〜spring〜」に繋がるようにキーを揃えました。「未 RISE」は当初予定していた「春〜spring〜」のプレリュードソングとして2曲が繋がるようになって。制作自体はタイトでしたが内容的には「これしかない!」という強靱なものが出来ました。

――この曲を聴いて色々感じ取ってもらえたら嬉しいですね。

楠瀬タクヤ そうですね。15曲で時代を駆け抜けるような構成になっているので、そのまとめとして「未 RISE」は良い曲になりました。

――過去、現在、未来が詰まった凄いアルバムになりましたね。未来の展望もお聞きしたいと思います。

楠瀬タクヤ Sabaoの活動7年間でようやくできた1枚なので、これをゼロから作ろうと思ったら次は10年後ですね。30周年のお祝いとかでもないと身が持たないな(笑)。

――せめて25周年でもう1枚お願い出来たらなと思うのですが(笑)。

楠瀬タクヤ 頑張ります! 既にヒスブルをしらない世代も出てきていると思いますので、そういった方々にも聴いて頂けて、曲が曲として残るような手応えがあれば25周年を待たずとも、何か制作するかもしれません(笑)。でも今回のアルバムは10年後でも色あせない曲が出来たのが良かったです。「春〜spring〜」はヒットした曲で僕らも大好きな曲ではありますけど、ずっとそればかりに固執して過去を顧みている人にはなりたくないなと、僕もTamaも思っているし、もちろん僕らの財産なので一生演奏していきたい曲なんですけど。

――今の目標は?

Tama  Sabaoとして初めてのアルバムと初めてのツアーで、今まできまぐれでやっていたようなライブもしっかり期間を決めてやるというのは、私たちにとっては凄く特別なことなんです。まずはそれをしっかりとやり遂げるというのが、今の一番の目標です。その先のことはその時になってみないとわからないかな。ちょっと私たちの中で20周年というのが大きすぎて、21年目からがまだ考えられない(笑)。

(おわり)

ライブ情報

Sabao TOUR 2018 「LASTING HOPE」

9月23日 大阪RUIDO
16:30開場 17:30開演

10月7日 福岡Public space 四次元
17:30開場 18:00開演

FINAL STAGE「LAST HOPE」

10月28日 新宿ReNY(ゲストとしてTAKUYA(ex.JUDY AND MARY)の出演が決定)
17:00開場 18:00開演

作品情報

8月22日発売

「MeRISE」(読み ミライズ)

これまでの軌跡を網羅したベスト選曲と、HystericBlue時代の楽曲のセルフカバーやリミックスを収録

<収録曲>
01. 春 ~spring~(Sabao ver.)
02. なぜ…(Sabao ver.)
03. ふたりぼっち(Sabao ver.)
04. dear(Sabao ver.)
05. グロウアップ(Sabao ver.)
06. BIG VENUS(豊丸産業「CR SEXY FALL」挿入歌)
07. アップデート(ドラマ「イタズラなKiss~Love in TOKYO~」主題歌)
08. ||:Repeat:||(豊丸産業「CR SEXY FALL second season」挿入歌)
09. アソビ
10. Milk
11. あいうえおで へ~んしん(小学館ドラゼミ 特典収録曲)
12. なぜ… [electro remix] byアサキ
13. 春 ~spring~[jazz piano remix] byござ
14. 今 ~present~
15. また明日
16. 未RISE

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