笑顔で弾けるように難易度を上げない
――カップリングの「てのひらジャーニー」なのですが、この“てのひら”というのはどのような意味があるのでしょうか。
湯毛 この曲のテーマがわかりやすい応援歌というものがありまして、こんなにきれいな歌詞を書くのは自分の中であまりないんです。
フジ 普段とは違う人格が出ていますから。
せらみかる 爽やか路線の応援歌ですね。
湯毛 そこでタイトルをどうしようかとなったわけです。最後までタイトルが決まらなくて…。サビの頭で花というワードが出てきているんですけど、別の言葉で花を表現しようと思いました。その中でてのひらが花みたいだなと。その手のひらは背中を押す、応援することもできるといったダブルミーニング的なものになっています。でも、てのひらだけだと意味深過ぎるかなと思って、夢に向かって旅立っていく人たちへという想いを込めて、旅立ちの「ジャーニー」をくっつけました。この平仮名と片仮名の9文字がすごくしっくりきたんです。
――歌い上げる系の楽曲でライブでも本編ラストやアンコールで良い感じに響きそうですよね。
湯毛 けっこうエモくなったなと思います。
フジ そうそう。デモの段階からめちゃくちゃエモかった。この感覚は初めてだと思うんですけど、みかる君のデモ音源から泣けてきましたから。サビの展開で涙腺をやられました。
せらみかる 確かにこの「てのひらジャーニー」のサビは今までとは違うことをやっているぞという意識はありました。実は偶然この感じになったんですけど、すごく良いなと思いまして。この浮遊感が自分の中でも癖になりました。
フジ これはもうデモの段階ですごく良いものになるなと確信がありましたから。そこからアレンジを詰めていったんですけど、想定していたものよりもだいぶ忙しい感じになりました。例えばドラムパターンが毎回違うことをやっていたり。
せらみかる メンバーから出てきたフレーズが全部良くて、それを盛り込んだらこんな感じになりました。パターンが変わるのでドラマーの記憶力泣かせな部分もあります(笑)。
フジ この曲には演奏面での裏テーマがありまして、笑顔で弾けるように難易度を上げないというね。周りを見れるくらいの余裕と言いますか。「シグナル」と「感状線」は自分たちが没頭して演奏出来る曲で、仮に3曲とも勢いのある曲でも良いとは思うですけど、バンドの空気感を伝えるフックになる曲が欲しかったんです。
湯毛 肩の力が抜ける曲があると良いなと思いました。
せらみかる でも結果的に演奏面は難しくなったという(笑)。ちょっとクラシカルというかメロディを他のパートが追っかけるというのを意識したり、意外とタイトな演奏が求められる曲になってしまって。
湯毛 ヒラノ君が一番大変かもしれないです。
せらみかる ヒラノ課長のギターは一番動きがあるので、シンプルに聴こえる曲でも意外と大変なんです。今回も「難しいやんけ!」とクレームが来ましたから(笑)。
――さて、続いて「感状線」なんですが、自分この“感状”という言葉は初めて知りました。
湯毛 この感状は単体での感状とは意味は違うんです。タイトルはどちらかというと造語です。環状線に近い感覚で環状線の一周する感じと感情を掛けています。なので区切るとしたら感・状線ですね。ニュアンス的には気持ちがループしている感じなんですけど、歌詞自体は結構尖ってますね。この文章だけでブログに載せたらちょっと心配になるかもしれないです(笑)。この曲はみかる君のデモの段階で悲壮感みたいなものがあったんです。もうそれに浸ってみたといいますか。
――<ゆうらり揺れる>のところが日本の民謡を彷彿とさせて、怪しさを感じさせますよね。
せらみかる そうなんです。
湯毛 「かごめかごめ」と歌いたくなりますよね(笑)。
――この歌詞はどのような心境の時に生まれたのでしょうか。
湯毛 この歌詞の内容は僕が常日頃思っていることなんです。なので、ある時にふと思ったことではなくて。「シグナル」と並べると良い感じの歌詞になったと思います。
――曲の雰囲気にすごくあった歌詞になっていますよね。曲自体は最近書かれたものでしょうか?
せらみかる 「感状線」は前からデモはありました。
フジ それを僕が推したんです。「デンシンタマシイ」が完成して、次の新曲の話になった時にデモとしてすでにあったこの曲をやりたいと推しました。
湯毛 フジのその言葉から練習し始めましたね。この曲はちょっと重いけど「シグナル」とはまた違った活力を与えてくれる曲になりました。
せらみかる 歌詞とリズムが憂鬱な感じもあって酔える曲にもなったなと思います。
――サウンド的にもフジさんが大好きな感じになってますよね。前回のインタビューでわくバンはもっと激しくなっても良いんじゃないかと言っていましたし。
フジ (笑)。もうこういう曲大好きなので、演奏中のマスクの下はすごくエモい顔になってますから(笑)。
――マスクのトゲももっと伸びますね(笑)。ギターもイントロからカッコいいですし。
湯毛 イントロのギターのリフは僕が弾いているんですよ。本当はヒラノ君が弾くべきパートだと思うんですけど、ヒラノ君がバッキングのなまめかしいコードの方を弾きたいと言ってきたので委ねました。
――確かに普通は逆のことが多いですよね。「シグナル」と「感状線」はライブでもマストナンバーになりそうですね。
湯毛 そうですね。この2曲は僕らも演奏にのめり込みやすいですし、あとは「感状線」の歌詞を皆さんがどのように捉えるかですね。
――歌詞を読んでじっくり考えてもらうというのもいいですよね。さて、8月から12月にかけてツアーもありますが、どのようなツアーになりそうですか。
湯毛 ライブとなると東京や大阪あたりが多くなってしまうのですが、なかなか行けないところに行くというのも我々のテーマにあるので、どれだけ時間が掛かったとしても全県回りたいというのがあります。なかなか行けないということもあって、今回はいつも通りの自分たちを見せられたらいいのかなと思っています。
フジ 良い意味でいつも通りやりたいよね。
せらみかる ゲーム実況という部分でも中野サンプラザのようなホールでやらせて頂いて、一つの経験になりました。今回のツアーではいつものような近い感じのゲーム実況になるのですがそれもまた楽しいんです。
――音楽はもちろんなんですけど、ゲーム実況という部分では進化というものはあるのでしょうか。
湯毛 会場によっては画面が出せない場所もあるんですけど、そういうときは書き物だったりアナログな感じのゲームになったりします。そうするとより対話が多くなるんですけど、そういうところは進化していく要素はあるのではないかなと思います。
――コントローラーを持つようなものばかりではないんですね。さて、バンドとしての下半期の目標はいかがでしょうか。
せらみかる この上半期に作ってきたものをしっかりと全国に届けていきたいです。
湯毛 そうだね。その想いは強くあります。ライブ自体の目標としては大きな無駄をなくそうかな。僕自身のことだったりするんですけど(笑)。
(おわり)