最高の自分たちを更新、LACCO TOWER 挑んでいくというロック
INTERVIEW

最高の自分たちを更新、LACCO TOWER 挑んでいくというロック


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年08月22日

読了時間:約18分

タイトルを「LACCO TOWER」にしてもいいと思えるくらいのベストアルバム

――一方で、シンプルな曲作りに対し松川さんが作られた詞が、これまでのかなり複雑な曲に乗せられる詞と比べると、その乗せ方自体にも特徴的なものを感じたのですが、そういう部分では松川さんご自身にも、新たな挑戦があったのではと思いました。

真一ジェット(撮影=冨田味我)

松川ケイスケ 意外に明確にこれをやってやろう、みたいなのは、自分的にはそれほどないと思うんですけど…でも、意識的には結構、語幹を大事にしていたというところはあります。今までなんとなく押さえていたような部分を、逆にちょっと色濃く出してみたり、そんなところは結構あるかもしれない。だから例えば今回、自分で俯瞰してそれぞれの曲を見たときに“僕っぽいなと思う歌詞”と、“僕が好きだと思う歌詞”という2つのものが、ちょっと違っていたりします。

――4曲目の「薄荷飴」では、サビ前のフレーズとして「ほらね_いわんこっ_ちゃないね」みたいな、歌い方として変わった切り方をしている印象を覚えました。ここは、例えばもっとシンプルに、座りよくやる切り方もいろいろできるところかと思ったのですが、逆に敢えてこのようにユニークなフレーズにしているのがすごく印象的で。こういったところが、他にも何曲かにも感じられました。

松川ケイスケ そうですね。実はさっき言った“僕っぽい曲”と、“歌詞が好きな曲”という話で、歌詞が一番好きな曲はこの「薄荷飴」なんです。今言っていただいたところや、語幹もそうなんですけど、そういった点では確かにより新しい領域に挑戦しているかもしれません。

――LACCO TOWERが日本語にこだわっているという点では、この曲はメロディでも、結構サビの部分に和を感じさせるマイナーの音の積み方をしていますね。曲作りの段階で、もともとこういうメロディを作られていたのでしょうか?

真一ジェット そうですね。もともとこんな感じの和メロが好きなんです、僕が多分。でもあまりそういうのを前面に出しすぎるような曲は、狙いすぎと世間に思われると考えて(笑)、

真一ジェット そうですね。もともとこんな感じの和メロが好きなんです、僕が多分。でもあまりそういうのを前面に出しすぎるような曲は、狙いすぎと世間に思われると考えて(笑)、いつもは自粛するんですけど…でも今回この「薄荷飴」は一番、本当に何も考えずに作った曲、かつ僕も一番好きな曲なんです。曲を作っていたそのときの自分が、“今一番作りたい”と思って曲を作ったという感じでしたし。

――思いの強さが感じられますね。アルバムタイトルとして『若葉ノ頃』と命名したのは、どのような考えがあったのでしょう?

松川ケイスケ 前作をリリースしたときは、やっぱり今までのセオリーではなく、僕らの違う面を前面に出すような形として結構新しい境地を見せた感じがありました。でもそれを単に企画モノとして一発で終わるんじゃなくて、これから次、僕らがどうなるんだというところを示したいと思ったんです。

 生まれたばかりのころから、まさに今作は成長した姿を見られるという。その意味では、僕ら自身はまだまだ。他方、まだそれは完成しているわけでなく、今の段階でまたこれから新しい芽が育っていく、という意味を込めて、今回はこのタイトルをつけさせていただきました。

――松川さんはライブでも「最高傑作ができた」とおっしゃっていたのが印象的でした。また塩崎さんが「最高って、更新するんですね」と実感を込めておっしゃっていたのも。その意味でもLACCO TOWERにとって、現在の最高傑作になっているという所感かと思いますが、実際にはどのような印象でしょうか?

塩崎啓示 いや、まさしくそうだと思いました。毎回思うことでもあるんですけど…今作は多分、出来としてはそれこそ『若葉ノ頃』のタイトル案をみんなで話し合ったとき、“これは「LACCO TOWER」にしてもいいんじゃないか”と思ったくらいに、本当に自分たちのベストアルバムだと思っていました。“今までのアルバムを越える過去最高のものができた”と。ライブのMCでケイスケが「マジでスゲエいいものができた!」と言ったことも、本当にメンバーそれぞれが思っていると思うし。

 たまたま今回のライブもそうだったんですけど、今までいろんなライブをしてきた中で「それはいい」「一生忘れないだろうな」と思うライブもあったけど、“それを越えた”とライブ中に思えたんです。それというのも、今すごくいいバンドとしてもそれこそ芽が生えて、これからドンドン大きくなるというような時期だからなのかもしれないですし。

――なるほど。重田さんも同様に?

重田雅俊 そうですね、自然に近くなってきたかな、という感覚があります。昔は"俺はこうだ”みたいな主張があったんですけど、各々のパートで普通に入ってこられたというか。今回のアルバムの、制作のときから。だからみんなが同じ方向に向いている証拠だと思います。

――では、今後はあれこれといわなくても曲ができていくような(笑)

重田雅俊 まあ、それはうちの“天才”がどうかはわからないですけどね(笑)

――アルバム自体のリリースツアーについてもおうかがいできますでしょうか?

塩崎啓示 リリースツアーなんですけど、LACCO TOWERとして初めてのホールツアー(「五人囃子の新時代」)があります。

――何か新しいことは考えられたりしていますか?

塩崎啓示 東名阪と自分たちの地元の群馬で行いますが、とりあえずホールでやること自体が初めてなので…。

――初となると、不安も?(笑)

塩崎啓示 もちろん(笑)。やっぱり距離感とか、あと熱量という点では、今までとも違うし。これは僕らにとって“新しく切り開く”という意味で、「新時代」というタイトルをつけているんですけど、ここも新たな挑戦なので。でもやっぱりホールになれば来やすくなって、実際お子さんから年配の方まで、お客さんも増えるだろうし。

 そんな中で、ホールならではのライブの広げ方とか、スケールの大きさみたいなものとして、僕らのこの『若葉ノ頃』の楽曲は、多分ピッタリとはまるんじゃないかと思っています。そんな思いを反映したツアーにしたいです。

――それは“是非楽しんで!”とアピールしたいところですね。では最後に、これから17年目に向けた意気込みを語っていただければ。

重田雅俊 16年このバンドをやってきたけど、その間いろいろメンバーチェンジもあった一方で、”黒白”のように昔の曲も今やれたり、今の俺たちでできる“最高”を常にやっています。だからこれを17年にも、もちろんそうしていきたい。で、あと16年、例えば52歳までやれたらいいなと思うけど(笑)。常に“最高”の自分たちを“更新”していけたらと思っています。

塩崎啓示 基本的なLACCO TOWERのスタンスは変わりません。挑んでいくというロック、ロックバンドであるLACCO TOWERの定義は変わらずです。

 ただ当たり前のようにバンドも年をとれば、メンバー自身も年をとるわけで、そういう意味でやっぱり周りでバンドはドンドンいなくなったり、それこそ新しい若いバンドが出てきたりということは、ずっとそうだと思う。でも俺たちの中では、挑んで成長していく。変わっていくということが、大きな軸にはあるので、あまり頑なにあぐらをかかないように、ある種“変わらずに”変わっていくというスタンスで、17年目も頑張りたいと思います。

松川ケイスケ 年齢と共にカッコよさとか、自分のやることの意味、みたいな定義は変わっていくと思うんです。20のときと今では、カッコいいものというのは全然違っていて、大事なものというのも変わっていく。

 その中でずっとこのバンドと付き合ってきた自分もいるので、やっぱりLACCO TOWERとしては、17年目もこの5人でカッコいいと思えることをしたいですね。17年目も“ちょっと大変だけど、でも俺たちカッコいいね”と5人が5人とも縦に首を振れるような、そんなバンドでありたいと思います。

細川大介 アルバムって、思いの部分があると思うんですが、僕らは今まで“こういうアルバムを作ろう”といってアルバムを作ったことはないんです。だから今僕らが作ったこのアルバムが、まさに今の僕らの心境というか、今のバンドの状態を示していると思っているんです。その中でこのアルバムを聴いてもらえれば、“挑戦”や“最高傑作”という点で、今バンドの状態がすごく良いのがわかると思うし、17年目という区切りを、自分たちが自信を持って作ったこのアルバムと一緒に、駆け抜けていければと思います。

真一ジェット 17年目になりますが、まだまだ落ち着かずに、ドンドンいろんなことをやってみたいなと僕は思っています。曲に関してもそう思っていて、あまり型にはまりたくない、もうここで完成したくない、という思いもあるので、「『若葉ノ頃』も未完成だった」といえるくらいに、17年目も頑張っていきたいと思います。

(おわり)

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