naNami、声だけで届けることの意味や表現を提示したカバーライブ
オリジナルの新曲も織り交ぜメッセージ性の強いステージとなった
シンガソングライターのnaNamiが6月18日に、東京・二子玉川KIWAで単独公演『この歌がいつか誰かの決心になりますように リリースライブ』をおこなった。4月26日にリリースされたアニソンカバーアルバム『この歌がいつか誰かの決心になりますように』のリリース記念ライブで、昼と夜の二部構成で届けられた。鍵盤に、にしのえみ(Key)を招き、全編アコースティックスタイルで披露。二部では「はじめてのチュウ」や「世界が終るまでは…」に加え、オリジナルの新曲も織り交ぜメッセージ性の強いステージとなった。8月26日には同所でワンマンライブの開催も発表した。今回はその二部のもようを以下にレポートする。
最高の思い出をもらった存在は音楽
落ち着きのある空間には、naNamiのパートナーであるアコースティックギターと、本日のサポートメンバーである、にしのえみの鍵盤が置かれていた。開演時刻になると、会場の明かりが落とされ西野がステージに登場し、温かいエレピの音色が会場に響く。その音に導かれるようにnaNamiがステージに登場。温かい拍手で迎えられた。ギターを手に取り、1曲目はアニメ『キテレツ大百科』のOPテーマの「はじめてのチュウ」。ゆったりとした曲調のなか、空気を多く含んだ、優しい歌声に会場は包まれた。
2曲目はガラッと曲調を変え、オリジナルの新曲「いけない口づけ」を披露。キスというワードをテーマに、ファンキーなアコギのカッティングに力強い歌が印象的な楽曲。先ほどとは180度違う情熱的な歌い方で、二面性を打ち出していく。カバー曲を披露した後にnaNamiが想う同じテーマの楽曲を披露していくという。
そして、続いてはアニメ『スラムダンク』のEDテーマ「世界が終るまでは…」を披露。少し肩の力を抜いた歌い方で、“終わり”の中にも微かな光を覗かせるような、naNamiの世界観で歌唱。90年代を思い出す、どこかノスタルジックな気持ちにさせる瞬間だった。続けて、オリジナル楽曲「灰人」を届けた。彼女が想う“世界の終わり”を表現した楽曲は、会場の空気を重苦しく一変させる程、鬼気迫るものだった。
LOOPER(演奏を録音し繰り返し再生させる機器)を使用したナンバー「secret base ~君がくれたもの~」では、naNamiがアコギのボディを叩き、パーカッションのように演奏。それをループさせ、伴奏の一部とし、にしのの鍵盤と歌で届けた。naNamiは手拍子を促し、会場全体でグルーヴを作り上げていく。
naNamiは「最高の思い出をもらった存在は音楽。恋をした時、孤独を感じた時だって、音楽が助けてくれていたような気がしています。音楽を始めて10周年、夢と私の楽曲を作りました」と最高の思い出について語り、「君と生きている」を届けた。自身の幼少期を振り返るような歌詞が、リアルに響き渡る。少し切なさも漂うメロディに観客も酔いしれていた。
自身の記憶を来世に引き継げたら
MCでは「しばらく今日みたいな日が来ないのかな、と思うのがすごく寂しいです。こんなに自分のことを応援してくれる人が集まってくれる夜があるというのは、嬉しい。今日みたいに幸せな夜もあれば、皆さんも眠れない夜もあると思います」と投げかける。
そして「そんな時に私は考えることが1つあります。死んだらどこにいくのだろう?」という誰もが一度は悩み、考えるテーマを示し「メモリーカード」を届けた。「メモリーカードで自身の記憶を来世に引き継げたら」という願望の中から生まれた、彼女らしい発想の楽曲。まっすぐな眼差しで歌う姿が、どこか神秘的な面影を映し出す。
一転して感情を叩きつけるようなアコギのストロークが心を打つ「行き場のない唄」、そして2ndシングルから「偽愛」と展開。力強くエモーショナルな歌声を会場に響かせた。ここで「チューニングという曲を聴いてください」とnaNamiはギターをチューニング。ギターの開放弦の音だけが鳴り響く。滞りなく終了すると「チューニングという曲でした」とおどけて見せた。
本編最後は今回のカバーアルバム『この歌がいつか誰かの決心になりますように』をリリースしたきっかけにもなった楽曲「Next 2 U」。自分の歌ではない楽曲を歌う機会を得て、声だけで届けることの意味や表現を考えたという。それも踏まえた上で自身の楽曲への愛も深まったと話すnaNami。そんな“気づき”を与えてくれた楽曲は、ドラマチックに展開。naNamiのイントロでの風のようにそよぐファルセットに、にしののシンセパッドが絡み合う。全編英詞で届けられた楽曲は透明感に溢れ、会場を心地よい空間に変えていった。
そしてnaNamiコールに応え、再びnaNamiがステージに。アンコール1曲目は「去れ負け犬よ」。弱い心を後押ししてくれそうな応援ソング。naNamiのエネルギッシュな歌声が、観客の体に浸透していく。途中、マイクから離れ生声でサビを歌唱。リアリティ溢れる瞬間だった。ラストはギターと歌のみで自己紹介の歌、「愛をください」を情感を込め歌い紡ぎ、『この歌がいつか誰かの決心になりますように リリースライブ』の幕を閉じた。
(取材=村上順一)
セットリスト
▽第一部 01.夢を信じて ENCORE EN1.I live for love ▽第二部 01.はじめてのチュウ ENCORE EN1.去れ負け犬よ ■ライブ情報 ~ naNami「ギターなんて大嫌い~vol.3」【1st Stage“笑顔のrequiem”】×【2nd Stage“涙のrequiem”】 ~ 【問い合わせ先】 |