35年でようやく知った天命、浜田麻里 ロック歌手としての誇り
INTERVIEW

35年でようやく知った天命、浜田麻里 ロック歌手としての誇り


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年08月02日

読了時間:約15分

 4月にデビュー35周年を迎えた浜田麻里が8月1日に、ニューアルバム『Gracia』をリリース。1983年にアルバム『Lunatic Doll〜暗殺警告』でデビューして以降、ロックボーカリストとして、日本のハードロック/ヘヴィメタルのシーンをリードし続けてきた彼女。26作目となる本作には世界屈指のミュージシャンが集結し、ハードロック/ヘヴィメタル、ラテン、シンフォニック、プログレなど多彩な楽曲が収録された重厚な作品に仕上がった。「35年にしてようやく、歌うことが天命だと思えるようになった」と話す浜田。今作については「今の等身大の自分と、これまで積み重ねてきたノウハウをすべて凝縮した」と話しており、圧倒的なハイトーンを武器に、世界を舞台に活躍してきた彼女の35年が集大成した作品だと言える。本作のリリース、そして35周年を迎えた今、浜田は何を思うのか。【取材=榑林史章】

“誇り”“真摯な姿勢”“意志”を集約

『Gracia』通常盤ジャケ写

──デビュー35周年ということで、率直にいかがでしょうか?

 デビューした直後や20代のころは、35年後に今のような気持ちと姿勢で、こういったアルバムを作るとは夢にも思っていませんでした。自分が当時想像していた以上の自分になれているのは、とても幸せなことだなと思います。

──15歳でキャリアをスタートさせたときは、自分の中で音楽はどういうものでしたか?

 単に歌うことが得意で、それが仕事になっていって。まだ子どもだったので、与えられた仕事を全うすることしか考えていませんでした。でもそれ以前から、プロとしてこの仕事をやっていくんだという気持ちは明確にありました。だからその根底にあった気持ちは、今も変わっていないと思います。ただ当時は、使命というものではなかったわけで、単に得意なことを仕事にしているという感覚でした。

 20歳でデビューしてからは、それが当たり前の生活になっていって、今ぐらいの年齢になってようやく“これは天命だったんじゃないか”と思えるようになった印象です。何十年もやってようやく、そういうことを言葉にしても、みなさんから“プッ”って笑われないくらいになったかなって。若いうちは、恥ずかしくてそんなこと言えないですし、そもそもそういう自覚もなかったですからね。

──10年やそこらでは、天命なんてことは言えないですよね。

 はい。その先もまだ分からないくらいでしたからね。年齢を重ねながらこの仕事を続けて、やっとみなさんに理解していただけた部分が多いと、私の場合はすごくそう思います。

──今は、40周年、50周年に向けて?

 あまり先のことまでは考えていませんけど、40周年はそんなに先ではないので、そのあたりまでは何となく見えています。ただ、体力とか自分の頭のクリアさやノドの状態など、いろんなものがどうなるか分からないので、それ次第ではありますけど。

──浜田さんのボーカルは、普通のポップスのスタイルとはまったく違うので、喉をより酷使するというか。

 そのため喉に関しては、かなり努力はしています。やはり若いころは、日頃からメンテナンスなど気にしていなくても、自分の思い通りの体調に持っていくことができましたけど、今は相当に自分自身を管理しながら、声帯のメンテナンスもおこなっています。

 デビュー前から数えると40年プロで歌っていますので、独学的ですけど自分の中でメンテナンスの方法があって。喉に関してはアスリートと同じだと考えていますので、声帯は周りの筋肉を衰えさせないことが一番です。そこで筋トレのようなものをおこなっていますね。

──前作『MISSION』は、長年歌ってきたハードロック/ヘヴィメタルへの“使命感”を投影してタイトルに込めたものでしたね。

 ハードロック/ヘヴィメタルということよりも、歌うこと自体が、使命と言うか、自分の天命なのではないかと。これだけ長くやってきてそれを感じたので、『MISSION』では、そんなようなことをテーマにしました。

──今作の『Gracia』では、何かそういったテーマはありましたか?

 特に考えていたわけではありませんが、やはりこの世界で長年やってきたことに対する“誇り”や“真摯な姿勢”、そして“意志”みたいなものを集約した作品にしたいと考えていました。タイトルの『Gracia』は、スペイン語で“Grace”を表すのですが、長年タイトルにはラテン語系を使うことが多くて、その流れにあるので、ファンの方には馴染みのあるネーミングかなと思います。

──ラテン語は神話的なイメージも触発しますね。

 そういう印象も含めて、イメージとしての深みが増すのは、ラテン語の魅力です。英語の語源でもあるので、そういう歴史的な意味での深みもあって、それは私がやっているロックとも親和性が高いと思っています。

──そんな『Gracia』のリード曲「Black Rain」は、15年ぶりにMVを撮影したとのことで、とても格好いい映像でした。

 前に撮ってから15年も経っていたんだなって、話を聞いて驚きました。音楽に関しては100%私がプロデュースしていますけど、映像に関してはその道のプロの方にお任せして、アイデアを出していただきながら進めました。ライブでは歌うことに専念するので、顔の表情などは気にしている余裕がないのですが、こういうMVの場合は多少演技したり、表情を作れるので、それはそれで楽しかったです。

──「Black Rain」は、楽曲としては非常にハードでテクニカルな、浜田さんを象徴するような分かりやすいハードロックナンバーですね。

 今作は、前半にけっこう攻めの曲を収録しています。中でも「Black Rain」は、ストンと分かりやすいと言うか。歌詞は、作品全体に流れているテーマ的なものと同じですけど、いろいろな面でどうしてもネガティブなことに押しつぶされるような精神性になってしまうけど、何とかしてそれに打ち勝っていくんだという力強さを歌っています。

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