本の詰め合わせみたいな感じ、杏沙子 日常から紡ぐ物語と音楽
INTERVIEW

本の詰め合わせみたいな感じ、杏沙子 日常から紡ぐ物語と音楽


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年07月11日

読了時間:約11分

ルーツのひとつは母親が好きだった松田聖子

杏沙子

――音楽は、どんなものを聴いていましたか?

 母が歌謡曲好きで、物心ついたころは、よく母と松田聖子さんの曲を歌っていました。鳥取は車社会で、移動手段のほとんどが車なんです。近所のスーパーに行くだけでも車を使うので、車では常に母の好きな松田聖子さんや槇原敬之さんなどが流れていて、自然と私も好きになりました。

――松田聖子さんで好きな曲は?

 「瞳はダイアモンド」や「SWEET MEMORIES」など、たくさんあります。母が一番好きだったのは「瑠璃色の地球」で、よくふたりでハモりながら歌っていました。

――aikoさんやはっぴいえんどさんも好きなアーティストとして挙げられていますね。

 実は、はっぴいえんどさんを聴くきっかけも、松田聖子さんでした。大学生のときに松田聖子さんの曲を聴き直していて、こんなに素敵な曲の作詞をしている「松本隆さんは何者だ?」と、気になって調べはじめて、はっぴいえんどのメンバーだったと知りました。それから、はっぴいえんどさんをはじめ、松本さんが作詞された薬師丸ひろ子さんとか、80年代のいろんな方の曲を聴くようになっていきました。歌詞の面では、松本隆さんからとても影響を受けていますね。aikoさんは、中学生くらいのときに、自分でCDを買うようになって聴きはじめたのですが、メロディーの部分でとても影響を受けていると自分でも思います。

――杏沙子さんの曲は、ちょっと懐かしさもあったり、いい意味で聴く人を選ばないポップさがあると思いましたが、どんな風に作曲されていますか?

 基本的には鼻歌で、メロディーと歌詞をほとんど同時に作っています。その時点で、頭の中ではいろんな音が鳴っていて、例えばここでピアノがこう鳴るといったイメージがあって。それをアカペラで歌って、ボイスメモに吹き込みます。メトロノームのカチカチという音と歌声だけという、すごくシュールな音源なんですけど、それをアレンジャーさんに送って、ある程度考えて頂いてもらって。その上でアレンジャーさんと一緒に、スタジオに入って詰めていく形なんです。

――楽器はやったりしますか?

 小さいころにピアノを習っていましたけど、楽譜がないと弾けないんです。それでスタジオでは、私が鼻歌を歌っている隣で、アレンジャーさんがどんどんコードを付けていってくださっていく形です。私のイメージと違うときは「そこはもっと明るくしてください」とか、意見を伝えたりしています。アレンジャーさんからアイデアを出して頂くこともあるし。そうやってその場で、一緒に組み立てていくような作り方です。

――歌声は、どこかウィスパー・ボイスっぽかったり、ふわっと包み込むような感覚がありますが、それは鼻歌の雰囲気が残っているのかもしれませんね。

 確かにそうかもしれないです。自分が日々過ごしているなかから、自然に生まれているメロディーだからこそ、きっと日常生活との距離がすごく近いものになっているんだと思います。

――ボイスメモに録音するときに、家では大きな声で歌えないですしね。

 東京は、特にそうですよね。鳥取の実家にいたときは、隣の家が離れているので、どれだけ大きな声を出して歌っていても怒られなかったです。家族には、うるさいって言われましたけど(笑)。

――ジャケット写真は、傘をさして浮いているように見えますね。

 これは、CGや合成を全く使っていないんです。バックに水と泡の映像を投影して、ライトを自分より手前に当てて撮っています。紙吹雪みたいなカラーフィルムも、スタッフが上からまいてくれて、完全にアナログなやり方で撮影しました。浮いているように見えるのは、実は意図していなかったんですけど、あとで見返したらそう見えるように映っていてびっくりしました。でも、クラゲの浮遊感とも通じるし、今回のミニアルバム全体の雰囲気をこのジャケ写で表せたのではないかと思います。こういったジャケ写1枚からでもいろんな妄想を膨らませながら、聴いて頂けたら嬉しいです!

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