本の詰め合わせみたいな感じ、杏沙子 日常から紡ぐ物語と音楽
INTERVIEW

本の詰め合わせみたいな感じ、杏沙子 日常から紡ぐ物語と音楽


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年07月11日

読了時間:約11分

暇つぶしがてらに物語を想像していた

杏沙子

――今作には杏沙子さんの3曲の他に、幕須介人さんの提供曲を2曲収録しています。提供曲を加えたのは、どんな意図があったのですか?

 幕須介人さんから、「天気雨の中の私たち」と「クラゲになった日の話」という2曲を提供して頂きました。インディーズの時は自分で作詞・作曲したものだけでライブをやっていましたが、自分の中の物語や世界観に固執することなく、もっと世界を広げていきたいと思って提供して頂きました。でも「クラゲになった日の話」は、偶然にも私が好きなクラゲがテーマで、歌詞も私が書く世界にとても近かったので本当に驚きました。

――「クラゲが好きだからクラゲの曲を作ってください」と、お願いをしたわけではなかったんですね。

 特に要望を伝えていたわけではなかったのですが、「クラゲになった日の話」は、私のことをイメージして書いて下さったそうです。歌詞も、図書館という現実的な場所から、非日常の世界に入りこんでいくような書き方が、私がいつも書いている歌詞の世界観にすごく近くて、違和感が全くなくてとても歌いやすかったです。

――ちなみに、クラゲのどこが好きなのでしょうか?

 クラゲは、フワフワとしてキラキラ光る種類もいて、まるでおとぎ話や夢のなかに出てきそうな生き物じゃないですか。それに、死ぬと水になって消えてなくなってしまうところも、すごくロマンチックだなと思って好きです。

――サウンド面では、シンセの音とコーラスワークが印象的で、海を漂っているような心地のいい雰囲気ですね。

 コーラスの海を漂っているみたいな感覚ですね。コーラスは自分で歌ったんですけど、何パターンもたくさんの種類を録って、大変で溺れそうでした(笑)。

 歌を録ったときは深海のイメージで、部屋を暗くして、ぼんやりとした灯りだけでレコーディングしました。眠ってしまいそうな感覚で録りたかったので、部屋の床に座って歌いました。真夏のクーラーの効いた部屋でリラックスした気分で聴いて頂けたら、きっとみなさんもクラゲ気分を味わっていただけると思います。

――「クラゲになった日の話」と言うタイトルですが、どういう日だと思いますか?

 すごく暑い夏の朝に、涼しい図書館で本を読んでいたらウトウトしてしまって、クラゲになる夢を見ました…。という日記のような歌詞の世界かな。自分も普段から「こうだったらいいな」と妄想にふけることが多いんですけど、まさしく私が考えそうなことを書いて下さっているなと思います。

――物語のような歌詞が多い印象ですけど、もともと本を読んだりすることが好きだったのですか?

 特に本が好きと言うわけではなかったのですが、最近気づいたのは妄想が好きだということです。小さいころから、「こうなったらいいな」と思うことが多くて、それを大人になった今でも持ち続けている感覚なんです。今でも夜にドライブをしていて、街の赤や黄色などの灯りを見て、これが全部あめ玉で、手を伸ばして取って食べられたら素敵だなと思ったりするんです。そういう妄想が膨らんだことを携帯のメモに残しておいて、それを元に歌詞を書いています。

――子どものころから、妄想が好きだったのですか?

 生まれが鳥取の田舎で、自然が豊かな所でした。夕陽や空、田んぼなどを見て、暇つぶしがてらに物語を想像する遊びをよくしていました。それに母が保育士だったので、家に絵本がたくさんあって、小さいころから絵本をよく読んでいたことも影響しているかもしれません。

 それに小さいころには、母と近所を歩いていて、犬や猫がいると、母がその動物の気持ちを勝手にセリフでアテレコして、私を楽しませてくれていました。だから私自身も動物を見つけたら、この猫は何を考えているのかな〜? とか、自然に想像するようになってしまって(笑)。振り返ると、母のおかげで、小さいころから物語が身近にあったのだと思いますね。

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