シンガー・ソングライターの森山直太朗が6月29日、東京・六本木にてイベントライブ『YouTube Music Night with J-WAVE BAR』に出演した。このイベントは、六本木のJ-WAVE局内に、不定期でオープンするイベント「J-WAVE BAR」と、YouTubeの行う人気イベント「YouTube Music Night」とのコラボレーションによるスペシャルイベント。50名限定で招待された観衆が、アーティストと非常に近い距離でライブを楽しむ一方で、同時にYouTube動画配信による一般のファンへのサービスがおこなわれた。【取材=桂伸也】

六本木の夜景とともに

 先日、新曲「人間の森」を配信リリースしたばかりだが、8月22日には最新アルバム『822(パニーニ)』をリリース、さらにアルバム発売記念「スペシャルライブ&真夏のガラポン大抽選会」開催、そして、10月からは、森山直太朗コンサートツアー2018~19『人間の森』スタートと活発な動きを見せている森山。この日は普段のライブとはまた違った、スペシャルなライブを披露し観衆を魅了した。

ステージの様子

 入場後に観衆が案内されたフロアは窓際に一本のマイクスタンドと何本かのギターが置かれ、その周辺にグランドピアノ、ギター、バンジョー、マンドリン、パーカッションのセット、マリンバなどの楽器が、ぐるりと囲うように置かれている。ちょうどバンドメンバーが森山の周りで、森山の表情を見ながら演奏するスタイルだ。そして観衆の座席は、そんな彼らをさらに囲うように置かれており、ミュージシャンたちの視線にピッタリ合ったその視界に、まるで一緒に演奏をしているような緊張感も味わえる、といった構図となっている。

 そして時間が訪れると、7人のバンドメンバーの登場に続いて、森山は拍手に迎えられ、笑顔で登場した。そして「宜しく!」と一言、一人ギターを持ち、それを爪弾いてステージはスタートした。オープニングナンバーは「レスター」。何かの思い出と、誰かに掛ける思いが交差するようなその歌を、物語を聞かせるように歌う森山。詞のイメージと、森山の背景に移った六本木の夜景がオーバーラップする。それぞれの小節に言葉を詰め込む一方で、朗々としたメロディを聴かせたりと、ここで披露された歌は、まさしくその都会の一隅に存在したストーリーを語っているようでもあった。

 一曲が終わり、湧き上がる拍手にフウと一息をついた森山、そして挨拶。普段のステージとは違い観衆との距離の近さ、そしてその中で、一人で歌ったことに対する緊張があったのだろう。しかしその語り口はとても親しみのあるもの。初めての場所でのステージに向けて「不束者ではありますが、宜しくお願いします」という言葉を掛けるとともに、森山はステージを続けた。

 続いたのは、バンドメンバーを招き入れての「糧」。イントロのギターとともに歌い始めた森山だったが、突然演奏を止め「ちょ、ちょっともう一回やっていいですか?」と仕切りなおし。会場から沸き起こる拍手に、思わず笑顔がこぼれる。「ちょっとやめてよ、“ズコッ!”とか。じゃあ(今度こそ)行きますよ!」思わず口を開く森山の言葉に、また観衆が笑顔を見せる。親しい間柄の人たちだけに囲まれて行うステージのような、打ち解けた雰囲気。そのアットホームな空気に包まれ、リズミカルな「糧」のプレーに加わるバンジョーの音色、そしてカルテットのストリングスが奏でるピチカートの音色が、さらにグルーブを厚くしていき、観衆も思わず手拍子で続いていく。

そしてイニエスタ

 さらにレコーディングにも参加していた阿部芙蓉美をコーラスゲストに呼んでのワルツ曲「とは」、穏やかな、そして切ない雰囲気も感じさせる「夏の終わり」と、進行に従い最初の緊張から一転してリラックスし、ゴージャスな夜景の中で、森山ならではの世界観を展開していった。

森山直太朗

 緊張が解けてきたのは、観衆もまたしかり。森山はふと昨晩行われたサッカーロシアW杯の、日本代表のグループリーグ最終戦の話に触れる一方で、おもむろに自身の御贔屓チームであるスペイン代表がグループリーグ突破した話に及び「リーグを突破したら、やろうと思っていた」という曲「そしてイニエスタ」へ。さらに「どこもかしこも駐車場」と、ユニークな森山ワールドの一端を表した曲へ。「ここにいるみんな盛り上がってる? そんなもんじゃねえだろ、YouTube! そんなもんじゃねえだろ、ギロッポン!」などと少し抜けたような煽りを入れる森山が、また観衆の笑いを誘い、和やかで楽しいひと時が流れていく。

 そしてライブも終盤に近づき、配信リリースされた楽曲「人間の森」を披露。二十歳ぐらいのころから、心の中にあったテーマを歌にしたというこの楽曲を歌う森山。ストリングスとピアノのみというシンプルなサポートが、その朗々とした歌で大きな広がりを見せていく。続いたこの日のラストナンバーは、ニューアルバム『822』に収録される一番最近にできあがった楽曲「群青」。2本のギターによる繊細なイントロから、森山の穏やかで、かつ豊かな感情表現が会場いっぱいに広がる。そして森山たちのプレーは静かに幕を下ろし、観衆が楽しんだ夜景とお酒、その余韻を、観衆の心の中に程よく残していた。

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