辛い時の駆け込み寺、KIRA 聴く側に向き合うカリスマシンガー
INTERVIEW

辛い時の駆け込み寺、KIRA 聴く側に向き合うカリスマシンガー


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年07月06日

読了時間:約11分

 シンガーソングライターのKIRAが、2ndフルアルバム『Naked』をリリース。インディーズ時代から注目を集めていた彼女は、2015年にメジャーデビュー。同年にリリースした1stフルアルバム『LISTENER KILLER』と、2016年にリリースしたミニアルバム『SURVIVE』が、iTunesのR&Bアルバムチャートで共に1位を記録した。約2年ぶりとなる今作は、彼女の持ち味であるハスキーボイスとインパクトの強い表現力が、全面に発揮された作品だ。時に気持ちをストレートにぶつけ、時に優しく包み込む。彼女の書く歌詞と音楽に、心を揺さぶられる女性リスナーが増加中。「辛い時の駆け込み寺じゃないけど、ファンのみんなは私の歌をそんな風に聴いてくれています」と話すKIRAは、どんな思いを楽曲に込めているのか。【取材=榑林史章】

歌い手は曲にしてこそ説得力が持てる

『Naked』ジャケ写

――とても格好良いアルバムですね。「Bye Bye Boy」のようなポップな曲もありますが、「Ecstasy」のような重たいバラードあって。歌詞も過激だったり赤裸々だったりするものが多くて、『Naked』というタイトルがぴったりだと思いました。

 今作は、格好良い音楽をやりたいと思って作りました。今までは、あれを付けてこれも付けてと“デコって、どうだ!”みたいな感じで音楽を作っていたのですが、もっと余計なものをそぎ落としてシンプルにしたほうが格好良くなると、プロデューサーさんから言っていただいて。それで、着飾るのではなく、逆に脱ぐみたいなイメージもあったので『Naked』と名付けました。

 それに自分の中には「Bye Bye Boy」も「Ecstasy」も、両方の要素があって、中には、曲調と真逆のことを歌っているリリックもあったりします。自分でもどっちが本当の自分か分からなくなりそうなほど極端ですけど、どちらも本当の自分です。

――「他の女」という曲はレゲエの曲調で、歌詞が特に激しいですね。

 「他の女」は、DOZAN11(元・三木道三)さんが、作詞・作曲・ディレクションと、オールプロデュースしてくださった曲で、私は歌に徹しました。本当にすごい歌詞で、“昼ドラか!”みたいな感じです。特に3番の歌詞が、度を超えて激しいです。実は、私のところに来るまでに、何人か歌い手さんから「この曲はとてもじゃないけど歌えない」と断られていたそうなんですけど、私は「むしろ歌いたい!」と思いました。私なら、めっちゃヤバく歌える自信があったし。

――悪い男に騙されて裏切られた女性の気持ちを歌っているわけですけど、当の本人だったら正直このくらいのことは思うでしょうね。

 そうなんです。私もそういう女性の気持ちが分かるから歌いたいと思ったし、この歌詞を私が歌うことで、辛い経験をした女性がきっとたくさん浮かばれると思いました。それでDOZAN11さんと、「こういう経験をした女性を助けよう!」と言いながら制作したんです。これを聴いて、スカッとして欲しいです。ライブで歌うと盛り上がってくれるのはやっぱり女性で、ほとんどの男の人はどん引きしていますけどね(笑)。

――同様に「ラッキー★ボーイ」も、ひどい男の歌ですね。

 この曲は、私が作詞・作曲で、作曲にはDaddy Dragonさんが参加してくださっています。歌詞は、これでもけっこう言葉を慎んだほうですけど、私が体験したことで、ブログでは書けないようなことを歌詞に書きました。あえて関西弁のイントネーションで、しゃべり言葉を意識して歌っているのがポイントです。

――経験談をベースにしているんですね。

 はい。「他の女」も似たような経験があったし。それに私は歌い手なので、曲にしてこそ説得力が持てると思うんです。私がブログやSNSで、弱音や悪口を書いても、ただ格好悪いだけじゃないですか。本当はそうしたいくらいムカつくけれど、曲にしてやる〜!という感じで書いています。歌詞と似たような経験をした方が、自分のことと当てはめて聴いてもらったら嬉しいです。

――また「さよなら」というピアノバラードの曲もあって。男女の別れの歌だけじゃなくて、大切な人との別れを歌った曲もありますね。

 今回の制作期間は2年くらいあって、アルバムではその2年間にあったことや気持ちを曲にしています。個人的には、すごくいろいろなことがあって、ゆっくり大きく生活が変わっていった時期でした。出会いもあったけど別れのほうが多かったかもしれないです。

 この「さよなら」という曲は、父方と母方と両方の祖母がこの2年の間に他界したことが、きっかけで作った曲です。それとプロデューサーの飼っていた猫が亡くなって、その猫も私たちにとっては家族だったから、アルバムの最後に「天国のオムに捧げる」とクレジットしているんです。

――そういう話を聞くと、<冷たくなった指>という歌詞の冒頭のフレーズが、すごくリアルに響いてきますね。

 祖母のお葬式で私がいちばん辛かったのは、火葬されることでした。それで、<燃えて失くなるカタチを>と書いています。表現として生々しすぎるかな?と思ったけど、きっとみんなもいちばん辛いのはそこだと思ったから、ここはあえてストレートに書こうと思いました。

――ピアノでしっとりと歌っているのが、心に滲みますね。

 曲は、ベリーグッドマンのHiDEXくんが作ってくれました。以前から交流があったんですけど、スタジオでたまたま会ったら「KIRAちゃんに合う曲を作ったからぜひ歌って欲しい」と、渡してくれました。こういうバラードのメロディが好きだから、聴いた瞬間「うわっ!」って、すごく感動して。こんな嬉しいプレゼントがあるんだなって思って、ドキッとしました。

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