匿名メッセージという本音
――Twitterで「EverBlue」について「いつまでも楽しんで生きていたい/もっとドキドキワクワクしていたい」と楽曲解説されていたのも印象的でした。
森彩乃 あの曲も内田が作った曲ですね。テーマがラブソングで「いつまでもドキドキワクワクしていたいよ」という曲。でもバンド的にも「ずっと新しい事にチャレンジしたり、ワクワクしたいじゃん!」と思ってます。大人になると、それを諦めちゃう人もすごく多いだろうなと。本当はもっと日頃からワクワクしていたいけど「でも大人だしな」って。
だから私たちの音楽をもっと聴いてもらって「もっとドキドキやワクワクに貪欲になっても良いんだ」みたいな気持ちになってほしい。もちろん「大人らしく」という場面も必要なんですけど、そうじゃないところを切り開くきっかけになったら良いですね。
――今のお話もそうですし、「I love ME !」というタイトルからも「もっと自分を大切にした方が良い」という様な現代社会とのリンクも感じます。
内田旭彦 それはありますね。制作に当たって考えているというよりは、普段から考えてるんだと思いますよ。例えばSNSで、自分の不満、会社への不満だったりをサブアカウントとかで身元がバレない様に発信している人をよく見ます。でもそれが本音なんですよ。どの時代にもそれはあったんだけど、それが表現しやすくなったという事で。
昔はそういうツールがなかったから、それを音楽に求めていたケースが多かった。でもSNSの登場で、音楽が誰かの孤独を救うという場面は以前よりも少なくなっていると思います。その中で僕らは日本語で歌っていて、言葉を大事にしたいと考えている。だから自分たちの作品は「歌詞カードを見なくても伝わる言葉で作らなければ」と思ったんですよ。
「あいつの事が嫌い」と不満はつぶやけるけど、本当は「あいつの事が嫌い、でも自分も良くないよな」とか、「あいつの事が嫌い、でも自分ももっと頑張らなきゃいけないよな」という気持ちが近くまでいけばあると思うんですよ。俯瞰してその感情を見ると「あいつの事が嫌い」だけになっている様な気がして。
――確かにそんな時も対話してみると、意外とすんなりコミュニケーションとれるなと思う事もしばしばあります。
内田旭彦 ですよね。だから2018年に日本語で伝える音楽をしている僕らにとっては、140文字じゃ書けない部分を歌詞にしないといけないと思っているんです。なので「愛を教えてくれた君へ」という曲は、俯瞰してみると「もう1度君に会いたい」という感情なんですけど。近くで見ると「今の日々を愛して」という気持ちと「愛さないで」という気持ちが共存しているという内容なんです。
最近はそういう想いを取り出して伝える事に価値があると思っていて。できるだけそういう曖昧な感情を曲にしたいと思って作ったつもりです。
――三輪さんは日々感じる何かはありますか。
三輪幸宏 僕は昔から自分の表現を言葉にするのが苦手なんですよ。だからドラムをやっているというのはあるかもしれません。自己表現の場としてドラムを使っている感じはありますね。口下手なので(笑)。
――インスタグラムなどを見ていると、少しでも楽器が演奏できる投稿でも表現として成立している様に思えます。三輪さんの様な救われ方をしている人は多いのかもしれません。
内田旭彦 最近ミュージックビデオとかで、都会で通行人の中を1人で歩いている映像が凄く多い印象ですよね。「人はいるけど、孤独」というのは社会とリンクしていて、誰かと繋がっている様で繋がりきれていない、という感覚を持っている人が多いんじゃないですか。その繋がりきれていない部分を僕らの音楽で繋げられたらなと。
僕は88年生まれなので昭和なんですけど、ほぼ平成なんですよ。どの時代も皆孤独なんじゃないかなと思っています。僕たちもどこか孤独だからバンドをやっているんじゃないかと感じるというか。
――ではそんな社会で「昔は良かったな」と感じますか。
森彩乃 個人としては「あの頃は良かった」と思いたくないし、いつも思ってないです。結局「今」の連続ですから。音楽的な事に関してもそうですね。その時その時の良さがあると思います。自分たちがこうやって音楽をしている意味を考えた時に、「昔の音楽は良かった」と思っている人に自分たちの音楽も同じ様に届けたいです。
――ツアーもスタンバイしてますが、意気込みは?
(※編注=同作を引っ提げたツアーが6月15日からツーマンツアー『クアイフ Tour "LIVE is YOURS "』、『クアイフOne-man Tour “LIVE is YOURS”』が7月20日大阪・心斎橋JANUS、7月26日東京・SHIBUYA WWW、7月31日愛知・名古屋ボトムラインの日程で開催予定)
森彩乃 対バンツアーは約3年ぶりです。ワンマンだったら皆さんがクアイフを見に来てくれているお客さんじゃないですか。でも対バンとなると初めて私たちを見るという方も多いと思うので、その時にこの曲たちが絶対武器になると思います。初めて見る方にもライブでしっかり届けられる物になっているはずなので。自分たちとしても楽しみですね。
内田旭彦 対バンの皆さんもほとんどが1回対バンしていたり、仲の良いバンドだったりが多いです。当然内容はアルバムの曲が中心になります。
森彩乃 ワンマンはワンマンでもちろん緊張するんですけど、対バンは仲が良くても完全にライバルなので。リラックスはしませんね。闘志がわきます。もちろん終わってからとかはワイワイとしたいですけど(笑)。
内田旭彦 ライブでしか伝わらない人間性や佇まいもあると思うんです。個性がバラバラな3人が集まってバンドをやっている事の奇跡感が僕らのライブにはあるんじゃないかなと。それを体感してほしいですね。
三輪幸宏 自分たち名義でこの規模感のツアーに出るのは、結構久しぶり。久しぶりの土地に行くのも楽しみです。アルバムの曲もほとんどまだ披露してないので、早く演奏したいと思っています。
(おわり)