SNSで書けない部分を描く、クアイフ 2018年のポップスとは何か
INTERVIEW

SNSで書けない部分を描く、クアイフ 2018年のポップスとは何か


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年06月13日

読了時間:約12分

ポップという概念

内田旭彦

――これは敢えてお聞きしたいのですが、『POP is YOURS』を制作し終えて、皆さんは今「ポップ」という概念についてどうお思いでしょうか。

内田旭彦 例えば名古屋グランパスのサポートソングは、自分たちの思っている事がこの曲にある、とサポーターの皆さんが思ってくださっています。それと一緒で僕らの中のポップスは「世の中に放った瞬間に、リスナーのものになるもの」。関係性というか。本当の意味で作り手とリスナーが繋がっている状態の事をポップスと呼ぶんじゃないかなと。そういう感覚です。

――全く同じものでも世に放つタイミングによってはポップと呼べないかもしれません。その様な時代性については?

内田旭彦 アレンジであったり、言葉遣いであったりという表層的なところは時代によって変わってきます。でも音楽に乗せて言葉をリスナーに届ける、という関係性は昔から変わってないかと思うんです。それがしっかり共感を生み出し始めたのは、松本隆さんとかの世代からだとは思いますが。

 時代性を意識して「さよならライアー」の様なサウンドの楽曲も収録はされていますが、根本的なところはあまり関係ない様な気がします。

――ジャンルについてはいかがでしょうか。

内田旭彦 音量が小さくても「この人ロックだな」というアーティストさんってたくさんいると思います。NakamuraEmiさんが、アコースティックギター1本で歌ってるのを何回も見ています。音量で言ったら、バンドに比べて圧倒的に低いんですけど、とてもロックで何かを感じるんですよね。ジャンルとしてはロックというくくりではないかもしれないけど、それを超越した「熱いものを届ける」という意味でのロックさは持ち続けたいです。

――時代による機材の進歩についてもお考えがあればお願いします。

内田旭彦 どんどん取り入れていきたいと思っています。今回のアルバムでも今まで使っていなかったオートチューンを使ったりして。ギターレスでどこまでできるか、というのもありますね。「さよならライアー」でもワウギターみたいな音が入ってますけど、それはクラビ(ネット)にワウをかけたもので、あまりやっている人もいないと思うんです。そんな新しい事にもチャレンジしていますね。

森彩乃 音源のクラビに関しては、アレンジャーさんが打ちこんでいる部分や、自分が弾いている箇所もあります。ライブでもやっていければ良いなと思っていますよ。全てが鍵盤での表現になると思います。

――森さんはもともとクラシック音楽からキャリアをスタートさせていますが、そういう機材やエフェクトの使用について抵抗はありませんか?

森彩乃 それこそ結成当初は、ピアノの音とドラムとベースだけ。機材もそれだけ、という感じでやっていました。でもバンドを続けて色々な事ができる様になって、色々な曲をやりたいなと思った時に自然とそういう物にもチャレンジしたいという気持ちがわきました。

 もちろん生ピアノで、完全に生楽器でのライブもやりたいとは思うんですけど。それは表現を狭める事でもあります。ギターレスという編成の中でどれだけ自分たちが面白い事ができるのか。ギターっぽい音を、ギターを入れるのではなくて鍵盤で歪ませたシンセを弾くとか。そういう事を取り入れて、どんどん新しい事をしていきたいです。

――アコースティックセットの演奏も聴いてみたいと個人的には思いました。

森彩乃 その時その時で面白い事をやりたい、というのが純粋にあります。「これはロックなのか、パンクなのか、ポップなのか、エモなのか」とか、ジャンルは割とどうでも良いと思っているんですよ。昔は「私たちはピアノロックバンドだ!」みたいに言い張ってた時期もありましたけど。

 例えば「タイムマシーン」という曲はジャンルで言ったらロックな曲調だと思うんです。でもそういう事じゃないんですよ。精神性という方もいるかもしれませんが、自分たちで「ポップって何だろう」と考えて、アルバムのタイトルに「POP」を付けようとなっていったので。

内田旭彦 そうですね。先ほども話しましたが、『POP is YOURS』はジャンルとしてのポップではなくて定義、というかもっと大きな、思想の様なものなんです。

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