制作中は理想と現実の狭間を行き来していた
――アコースティックの後は、芝居仕立てのパートが来ます。
ストーリーを考えたんですけれど、ここは一番大変でした(笑)。まず彼ら(ダンサー)が演技をしたことがなかったので、演技指導からだったんですよ。でもやはりリハーサルのときと、本番は違いましたね。彼らも本番の時にはしっかり世界観というか、ちゃんと演技をしていたので。やはり照れとかそういうのがあると、まったく別物になってしまいますから。その中で、普段とは慣れないことをやって頑張ってくれたと思います。
――田口さんの演技は、ファンの方はお待ちかねだったと思うのですが。
とにかく今回はMVみたいな感じで、この曲の世界観の中での演技をつけたかった。もともと「FRIDAY NIGHT」は「チャラい男」というイメージがあったので。あとの2曲は新曲ですが、聴いたことのない楽曲に対して、どこまでその世界に引き込んで行くかというところは、すごく大事だと思いました。だからやはり DVD になるといいな、と思いますね。しっかり「こういう意味だったんだ」とか「こういうことだったんだ」というのを反芻していただけるので。でも本当に皆さんがじーっと観ていてくれたという感じがして。ショーとしてそこのシーンを作っていたので、正解だったと思いました。
――ベンチに寝転がるシーンもあって。ステージの空間をどう使うかもこだわられたんだなというのが伝わりました。
「椅子がいくらで借りられます」といった話もしましたからね(笑)。
――え、そんなところまで!
「いや、そんなに手の混んだものでなくてもいいし」とか、いろいろ…。制作中は本当に理想と現実の狭間を行き来していました。
――大変だけれど、やりがいもありますよね。
それを叶えてくれるスタッフさんもいらっしゃいますし、それこそ電灯を立てていただいたんですけれど、「こういうのがありますよ」とスタッフさんから積極的に言ってくださったりして、「それでいきましょう」とか。結構そういうディスカッション中で生まれてくるものもたくさんありました。
――今回のツアーはどんな手ごたえがありますか?
まだまだできることはたくさんある、というのが正直なところですね。ただ、今できる最大限のことはつめ込めたとは思っています。
――ちなみに今回、制作の上で新たに勉強になったことはありますか?
実際に僕が公演中のときは、自分は観客席側から観られないわけじゃないですか。そういう部分でリハーサルがいかに大事かという部分を再確認したし、照明のタイミングだったり、一つひとつ細かい作業に根気強く立ち向かっていけないところは勉強になりました。でも大体のコツがつかめてきたというか。ツアーを回ってきて、会場も毎回毎回作りが違ったりしたわけで、その中での柔軟性も鍛えられましたし。それが今、他の現場でのライブパフォーマンスにも生きているのかなと思います。
――演者とプロデューサーという2つの視点が必要になるわけですよね。
でも両方楽しいことだから、別に大変と思うことはなくて、「どうおもしろくしようか」とか、そういうポジティブなマインドの方が強いです。
――ライブではラストに向かって、アルバム「DIMENSIONS」にも参加したラッパーのDAZZさんも加わり、一層熱を帯びていました。
後半に関しては、それこそライブ感で、「見終わってすっきりした!」みたいな感じの気持ちで帰っていただきたいんですよ。要するに今回は自分が観に行きたい、行ってよかったというライブを表現しようと思っていて。だから客観視して組み立ていきました。DAZZくんは本当に全会場来てもらい、盛り上げてもらって。「この二人を観るのが楽しみ」、と思ってくれていたお客さんもいたと思うので、その部分でだいぶ助けられましたし、僕たちの曲が、ちゃんとパフォーマンスによってしっかりとした形になったことを実感しました。
――2人でどんなことを話し合いましたか?
もちろんリハーサルの段階で「どういう登場をしようか」とか、動き的な部分での確認などはしましたけれど、DAZZくんも経験値が高いので、彼が動きやすいように動いてもらって、僕自身もそこにシンクロさせて踊りを入れたりしたんです。最初からお互いの役回りというか、持ちまわりが明確だったので、自然とこの形になりました。