嬉しい驚きを提供したい、寺嶋由芙 古き良き時代伝えるアイドル
INTERVIEW

嬉しい驚きを提供したい、寺嶋由芙 古き良き時代伝えるアイドル


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年05月20日

読了時間:約14分

あざとい青春さを出すのが昭和

寺嶋由芙(撮影=冨田味我)

——2ndアルバム『きみが散る』が完成したわけですが、また懐かしい匂いのする楽曲たちが揃いましたね。

 私のキャッチコピーが「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」ということもあって、楽曲の方でもそれを出していこうと去年から強く考えていました。この5年間でどんどん“古き良き”になっていってます。1stシングルの「#ゆーふらいと」などの初期の頃の曲は昭和感とかはなかったので、どんどん時代を逆行していて(笑)。

 最初はこんなに長くソロで出来るとは思ってなかったので、色んな曲を歌って、色んなアイドルさんたちと競演していくうちに「ソロで出来ることってなんだろう?」とか「今、空いてるポジションはどこだろう?」と考えていったなかで“古き良さ”というのがキーワードで出てきました。そういうものってアイドルオタクじゃない方たちにも馴染みのあるものだと思っていて、ニッチな世界かもしれないけど、そこから広がって行くんじゃないかなと思いました。それを追求している真っ最中です。

——追求している中で、何か発見はありましたか。

 今作の収録曲で「たぶん…」という曲があるのですが、作詞をクリス松村さんが書いて下さいまして、クリスさんは昭和のアイドルに精通していることもあり、それを歌詞や楽曲に反映していただきました。完成して「これはオジさん受けするな」と思いました。でも意外にも「セーラームーンみたいで好き」と、若い女の子達がこの曲を気に入ってくれて、そういう風に捉えてくれるんだという発見がありました。

 今回、ディレクションもクリスさんにやって頂きました。直接お会いは出来なかったのですが、電話で歌い方のニュアンスや気持ちの入れ方、吐息の出し方など私の仮歌を聴いた上でアドバイスをして頂いて。1時間弱もお話していただいたので、仮歌の時よりも良いものが録れました。

——この曲の歌詞で気に入っている部分はありますか。

 <脱ぎたいの…私>というセリフの部分があるのですが、ここをいやらしくならないように言って欲しいという要望をいただきまして。服を脱ぐということではなく、あくまでベールをひとつ脱ぎたい、新しい自分を見せたいというニュアンスになるように言いました。あざとい青春さを出すのが昭和なんだとクリスさんは仰っていました。

——さて、表題曲の「きみが散る」なのですが歌詞を公開して、楽曲を一般募集し250曲ぐらい集まったようですね。数ある中でこの曲が選ばれた意図は?

 「意外性」です。この歌詞は最果タヒさんにお願いしたこともあり、ちょっと偏差値が高い内容の難しい歌詞で、失恋を歌っているということもあり、バラードで送ってくれる方が多かったんです。それも歌詞の世界観が生きていて良かったのですが、綺麗にまとまり過ぎてしまうかなと思い、もう少し広がりが欲しいなと思いました。この曲はカッコ良さもあり、切なさもあったので、プロデューサーの加茂啓太郎さんやレーベルの方たちとの意見が一致してこの曲に決まりました。

——この歌詞で重要だと思われるポイントは?

 サビ終わりの<水色 私の>です。一番言いたいことなので、サビの終わりという大事な場所に書かれていると思うし、失恋して色んな色が見えてくるなかでとても大事な色で、その寂しい水色をどこか客観視している、寂しさの最中にいて「わー」となってしまっているよりは、失恋した自分を俯瞰(ふかん)して見ています。自分の気持ちに振り回されていない、それが大人の失恋ソングとして良いのかなと。あと<桜が私の代わりに きょうも恋をしているよ>というところも好きです。

——最果さんから歌詞の説明はあったのでしょうか。

 いいえ、説明は受けていませんでした。自分がこの歌詞を読んで、そういう風に感じたので、もし間違ってたらどうしよう(笑)。

——ここまで詳細に語れる分析力が素晴らしいですね。さすが文学部といった感じです。

 役に立っているんですかね? それならば凄く嬉しいです。

——アルバムの歌詞は他の方からの提供ですが、今後、ご自身での作詞の予定は?

 1stアルバムでは1曲作詞させていただいたのですが、今作は様々な方たちにお願いしました。というのも、自分の中だけで完結してしまうのが嫌だなと思ったことが解消されるのではないかなと思いました。作詞は好きだし、自分のためにもなると思うので、いずれまた書きたいとは思っています。

——ちなみに作曲の方は?

 そっちは全く素養がないです(笑)。過去にピアノとギターをやってみたことがあったのですが、挫折して楽譜も読めないんです。おそらく向いてないんだと思います(笑)。私と相性の合う楽器があれば、作曲とかもしてみたいです。

——楽しみにしています! この「きみが散る」を1曲目にしたのにはどのような背景があったのでしょうか。

 全曲を並べてみた時にイントロの感じとか、「今までにないゆっふぃーが始まるよ」といった雰囲気が1曲目から出せると良いかなと思いました。私の過去を遡ってみても「きみが散る」のような楽曲はなかったので、この曲で新たな一面を見せてから始まりたいなと思いました。

——ということはこの曲で第2章の幕開けと言っても大げさではない?

 そうなりたいなとは思っています。

——さて、続いては「君より大人」という意味深なタイトルですが、この曲にはどのような想いが?

 ソロデビューしてから5歳、年をとったいうところで自分より年下のファンの方も増えてきました。そのなかで年下に向けた曲が欲しいなとは思っていたのですが、それにバッチリハマる曲を頂けて。年上のお姉さんと年下の無邪気な男の子の恋を、アイドルとファンに重ねて頂けたら嬉しいです。

——けっこう強気な部分もありますよね?

 はい。でもその強気な部分もかわいいなと。そこを彼に悟られないように大人ぶっている感じが良いんです。ヤマモトショウさんには今までもたくさん歌詞を書いて頂いているのですが、私と同年代のアイドルが気にしそうなことを上手いこと盛り込んでくれます。「うわー考えていたことがバレてる」みたいな(笑)。アイドルの若年化が進むなかで、私はとてもお姉さんなので、その焦りとかも敢えて入れてくれているんです。

——リアルな現状も盛り込まれた楽曲に仕上がったわけですね。そして、「結婚願望がとまらない」も凄いタイトルです。作詞にいしわたり淳治さん、作曲にムーンライダーズの鈴木慶一さんというタッグで。お2人とは実際お会いされました?

 いしわたりさんとはお会い出来ていないのですが、先日、鈴木慶一さんとは対談をさせていただきまして。この詞も曲も古き良きというところを凄く大事にしてくれていて、一昔前の価値観だと思いました。早く結婚したいと最近の若い子はあまり言わないと思うんです。その歌詞を慶一さんも読み取って可愛らしい曲をつけてくださいました。その意図を対談の時に話して下さって。みんなの目指すところが一緒だったというのが、後から確認出来て良かったなと。

——特に会話をせずとも音や詞で意思の疎通が出来ていたわけですね。2曲目の「知らない誰かに抱かれてもいい」もそうなのですが、アイドルが言わないようなことをタイトルに持ってきているというのが興味深いです。

 そうなんです。最近もツイッターの「名前@」から下の部分を使って楽曲を宣伝しようと「結婚願望がとまらない」にしていたら、出会い系サイトとかからフォローされて(笑)。

——でも、フォロワーが増えたわけですね!

 全然嬉しくないですけど(笑)。

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