ラッパーのあっこゴリラが4月27日、東京・代官山UNITで『ゲリラゴー ONE MAN TOUR』のツアー初日公演をおこなった。このライブは彼女にとって初となる東名阪ワンマンツアー。バックバンドのBNNZ(バナナズ)も帯同し、豪華なパフォーマンスが期待されていた。さらにこの日のライブでは演奏だけでなく、あっこゴリラがドラマー時代在籍していたレーベルからの再メジャーデビューも発表された。「ヒップホップと出会って、自尊心を少しずつ取り戻した」、「私は昔の自分に『人生余裕』って言いたい。自分を枠にはめる必要はない」と実体験に基づいたMCも飛び出し、あの手この手で心動かされる空間を作り上げた。【取材=小池直也】

あっこゴリラ(撮影=山川哲矢)

 開演時間になる。SEに続いて、BNNZのSP(ギター)、KAHADIO(ドラムス)、Ryuki(ベース)、顔面塗料(サックス・キーボード)がスタンバイ。ドラムスのビートから始まって、バンドだけで展開。その後、バナナが入ったカートを押しながらあっこゴリラが登場した。1曲目は「地球の歩きかた」。オーディエンスも手を叩いて盛り上がる。「準備は良いですか?」と煽ってからの2曲目は「TOKYO BANANA」。トロピカルなトラックに乗り込む、あっこゴリラ。

 「TOKYO BANANA 2018」ではファンキーなビートの中、先ほどのカートからバナナがフロアに放り投げ込まれていった。あっこゴリラはRyukiとSPと3人並んでパフォーマンスするなど曲に合わせてオーディエンスを楽しませ巻き込んでいく。続く「B.N.N.Z」では、BNNZのメンバーが楽器を置きラップを披露した。

 MCはフリースタイルラップで。「何で女の子なのに少女漫画(が好き)じゃないんだと言われた事もあった。でも、もうそんな事を気にする時代じゃないんだ。だってもう2018じゃん!」とワイルドにMC。それを、オーディエンスが歓声で応える。

 そこから「電光石火」へ。オーディエンスとのコールアンドレスポンスから、ドープなビートが鳴らされた。遅めのリズムにゆったりレゲエ調なフロウで乗り込む、あっこゴリラ。ZiNEZ a.k.a KAMIKAZEがフリースタイルバスケットボールでゲスト参加。それに触発されてバンドの熱量も増した。気がつくとあっこゴリラはドラムを叩いている。彼女の叩き出すリズムで再びバンドメンバーがマイクリレー。最終走者は「GREEN QUEEN」ことあっこゴリラ。彼女がマイクを持ったまま、そのまま楽曲に戻ってエンディング。

 「久々の曲をやります」と前置きしてから「JUNGLE STAR WARS」へ。あっこゴリラは大きなフラッグを肩で背負いながら、堂々としたパフォーマンス。アウトロでシャウトをして退場すると、バンドが熱いセッションを繰り広げていった。そこから「遺書」に。早めのビートが鳴らされて。白いノースリーブに着替えたあっこがステージに帰ってきた。バンドメンバーは序盤バックダンサーとしてコミカルな振り付けのダンスで参加、中盤から演奏で合流し、あっこゴリラも「あっこのあっこがゴリラ」という歌詞のコールアンドレスポンスもありながら、ダンスと共にキュートに歌い上げた。

 続くMCでは「集まってくれたひとりひとりが私の誇りだよ」、「私は昔ドラマーだった。そしてラッパーになった。ラッパーになって3年が経った」、「私は今までいっぱい笑われてきた。価値基準を周囲に合わせないと笑われる様にできているんだ。でも笑われた数だけ武器が増えていくんだ。つまり私のマグナムは超巨大級だ」と力強い言葉を吐き出していく。

あっこゴリラ(撮影=山川哲矢)

 そこからはいつか(Charisma.com)とコラボレーションした楽曲「PETENSHI」、向井秀徳への想いを綴ったメロディアスな「向井さん」と並べた。顔面塗料が手元の機材を駆使してループを作り出してパフォーマンスしてから「Back to the Jungle」。チャイナ風のシャツに衣替えしたあっこゴリラがパワフルに煽った。ディスコな「黄熱病 -YELLOW FEVER-」では、オーディエンスも体を揺らす。笑顔で手を振りながら、マイクに声を吹き込むあっこゴリラ。饒舌に拍車がかかる。

 「調子どうですか!」、問いかけるまでもなく、フロアに溢れるハッピーな雰囲気。フロアではバナナガールによって再度バナナが振る舞われた。そしてあっこゴリラは「ゲリラ」をモニターに足を乗せながら歌う。

 そしてあっこゴリラから「重大発表があります!」とメジャーデビューが発表された。フロアからの大きな祝福が。2015年までバンド、HAPPY BIRTHDAYのドラマーとしても活動していたあっこゴリラ。同じレコード会社からラッパーとして、異例の再デビューする心境をありのまま伝えた。

 「『才能ない』、『普通に家庭を持って幸せになった方が良い』と言われていたんです。でも私はやりたい事やるのが私の幸せだと思ってたから」、「でも私は認められたいから、自虐で笑いをとってコミュニケーションとるクソダサい奴だった。ラップを始めて、ヒップホップと出会って、その自分を誇るマインドに惹かれたんです。それで自尊心を少しずつ取り戻していった」、「私は昔の自分に『人生余裕』って言いたい。自分を枠にはめる必要はない。それを伝えたくてこれを作りました」。

 そんな想いを告白してから、運命のメジャーデビュー楽曲である「余裕」へ。彼女がマイクに吹き込む一言ずつにヒップホップに救われた喜びがあふれ出る様だった。そして「GREEN QUEEN」と繋ぐ。髪色を緑色に染めた文字通り”GREEN QUEEN”としてあっこゴリラは、グリーンの照明に照らされながら力強く歌った。

 最後は「ウルトラジェンダー」で締める。3分間のラストスパート。ファンクな曲調で攻めていった。顔面塗料によるワイルドなサキソフォンソロも交え、最後までギアを上げ続ける。フロアもゆらゆら揺れていた。終盤「今日はどうもありがとう!」と告げて、あっこゴリラが退場。バンドがそのままセッションして演奏が終わった。

 その後、アンコールが起きたが、この日はアンコールはなし。残念ではあるが、また来たいと誰もが思った事だろう。

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