神戸で結成された4人組ロックバンドのフレデリックが4月30日に、兵庫・神戸 ワールド記念ホールで自身初となるアリーナワンマン公演『FREDERHYTHM ARENA2018~KOKYOのTOGENKYO~』をおこなった。昨年10月にリリースされたミニアルバム「TOGENKYO」を引っさげて続いていたツアーの最終目的地となった本公演は、バンド結成からの集大成を感じさせるとともに、未来への姿が垣間見えたステージだった。アリーナ公演ならではの圧倒的なスケール感の演出や、新曲「シンセンス」と7月にリリースされる「飄々とエモーション」も初披露しアンコール含め全20曲を熱演。訪れたオーディエンスをそれぞれの桃源郷へといざなったであろうライブを以下にレポートする。【取材=村上順一】

極上のエンターテインメントをお届けします

フレデリック(撮影=森好弘)

 昨年のリリースから続く「TOGENKYO」の物語の終幕とも呼べるステージをこの目で確認しようと集まった観客はチケット完売の6000人。この神戸の地で結成され初のワンマンも全国ツアーも全てが神戸からだったフレデリックにとって、初のアリーナ公演もやはりここからスタート。すでに開演前から会場の様子を見ているだけでも期待感は高まる。

 開演時刻を少々過ぎたところでゆっくりと明かりが落ち、ステージのスクリーンに神戸 ワールド記念ホールまでの景色が投影。そして、三原健司(Vo、Gt)による「FREDERHYTHM ARENA KOKYOのTOGENKYO始めます」の言葉からメンバーがステージに登場。オープニングを飾ったのはこのアリーナ公演まで導いた重要ナンバー「TOGENKYO」。同曲のMVでも確認できる多くのLED菅を使用したライティングは圧巻。そこで奏でられるフレデリックのサウンドもホールという場所の響きが艶やかさを与え、ライブハウスとは違った一面を音からも感じさせた。4人のここに掛ける想いが存分に出た幕開けとなった。

 「極上のエンターテインメントをお届けします!」と宣言し「リリリピート」「トウメイニンゲン」や「パラレルロール」などアグレッシブなナンバーを立て続けに披露。言ってしまえばこの流れで既にライブはクライマックスのような空気感。三原康司(Ba、Cho)と高橋武(Dr)の2人による抜群のコンビネーションを見せたリズム隊の演奏から投下されたのは新曲「シンセンス」。早いBPMのフレデリックらしさが出たナンバーで、ギターを弾かずハンドマイクで歌い上げる“ボーカリスト健司”に100%振り切ったパフォーマンスで魅せた。

 会場との一体感を見せたのは「幸せっていう怪物」。健司が「フレデリズムに合わせて行いきませんか?」と投げかけ、様々なリズムパターンでクラップを6000人で展開。あらゆるパターンにぴったり合わせてくる観客に健司も「スゴいな!」と声を漏らす。多くの人が一つのことへ向かうエネルギーは圧巻の一言。

 そして、ワンマンといえばこの楽曲も忘れてはならない。「うわさのケムリの女の子」もアリーナのスケール感で、白煙が会場を包み込むという壮大さ。四方八方から吹き出す煙によってあっという間に辺りは真っ白な世界。煙に続いてリズミックに吹き出す炎の演出が目を奪った「まちがいさがしの国」。火に続いて水を連想させたのは「RAINY CHINA GIRL」と視覚とサウンドの相乗効果で楽しませてくれたセクションだった。

センターステージでFAB!!

フレデリック(撮影=渡邉一生/KAZUKI WATANABE)

 ここで楽屋の様子がスクリーンに投影された。アコースティックギターを奏でる健司を筆頭に4人でセッションをする光景。演奏の途中で「行きますか」と立ち上がり、会場のアリーナ後方にライトが当たるとそこに4人の姿。メンバーは開演前、黒いシートが掛かっていた場所に向かうと、そこにはベッドやソファーなどを配置し部屋をイメージしたセンターステージが登場。リラックスしたアットホームな雰囲気の中、FAB!!~Frederic Acoustic Band~で「ハローグッバイ」を届ける。歌がより際立つアレンジで、この楽曲に込められた上京した2年半前の決意を重ね合わせ歌い上げていく。

 演奏が終わるとここで各々が自己紹介。康司は「始まりの土地でもある神戸、僕らが目指してきたワールド記念ホールで今ライブを出来ていることが本当に嬉しい」と歓喜のコメント、赤頭隆児(Gt)もこのセンターステージに「関西に住んでいた時代の部屋を思い出した」とまさに『~KOKYOのTOGENKYO~』と重なるとしみじみ話す。高橋はこのセンターステージから見える景色に「こちらから見える景色も本当に最高です!」と感謝を述べ、健司はここにきて「アリーナ! スタンド!」と観客にコールしたいと話し、本日の公演の醍醐味とも言える空間を楽しんだ。

 そして、「最強のフレデリックという名の船で、ワールド記念ホールという海を渡っていきたい」と、もう一曲FAB!!で「ほねのふね」を披露。ステージはさらに上昇し、天井のミラーボールが月、その反射する光が星のように投影され、ステージが光の海の中に浮かぶような幻想的な空間の中、ジャジーなアレンジで色気のあるフレデリックサウンドを魅せた。

TOGENKYOのその先へ…

フレデリック(撮影=渡邉一生/KAZUKI WATANABE)

 ライブはメインステージに戻り後半戦へ突入。「FUTURE ICE CREAM」、「シンクロック」と感情をぶつけるナンバーで観客を扇情させ、「まだまだ遊び足りない…」と盛り上がり必至のナンバー「KITAKU BEATS」では康司の歌声もエモーショナルに響き、高橋の大地を揺るがすようなリズムから「オドループ」への流れはエキサイティング。赤頭のギターソロもいつにも増して躍動感あふれるフレージング。指板の上を指が踊るようだった。そして、何と言っても6000人がグルーヴする壮観さはフレデリックならでは光景と言えるだろう。そして、「ほっとけない神戸のために…」とラストは「オンリーワンダー」を投下。色とりどりの紙吹雪が風に舞うなか、本編を終了した。

 アンコールでの第一声は「故郷に帰ってきました。ただいま」と告げる健司に大きな拍手が送られた。このステージに立てたことについて「4人の力だけではなく、周りにいるスタッフやこうやってライブに遊びにきてくれるみんながいて、お互いに足りないものを埋めあってこのステージに立てていると思います。みんなで作ったTOGENKYOです」と改めて感謝を告げ、「俺たちはTOGENKYOのその先に続いていこうと思っています。ものすごい未来を見せたるから…」と「たりないeye」を届ける。

 FAB!!をおこなったセンターステージのベッドに女性の姿。スクリーンに投影されたMVと現実がリンクしたかのような演出にメインステージとセンターステージ、どちらを見たら良いのかまさに“目が足りない”と感じさせる憎い演出。その中でもっとすごい景色を見せたいという想いを込め丁寧に演奏する4人の姿が印象的だった。「最高のTOGENKYOをありがとうございました」と生声で感謝を告げ、ステージに常に飾ってあったTOGENKYOのアートワークを持ちステージを後にするメンバー。

 エンドロールが流れライブは終了したと思わせた。ここで楽屋の様子が映し出され、再びステージに戻ってきたメンバーに大歓声。「TOGENKYO」のその先を見せると宣言し、7月にリリース予定の新曲「飄々とエモーション」を届けた。この曲では「まちがいさがしの国」や「シンセンス」と同様にハンドマイクで感情を歌に注入する健司。印象的なシンガロングパートもあり第2章の幕開けを感じさせるなか、記念すべきアリーナ公演は大団円を迎えた。

 最後にスクリーンに映しだれた「DANCE WITH NEW FUTURE, SING WITH NEW EMOTIONS.」のワード。これが未来へのキーワードとなり、どのようなTOGENKYOの先を見せてくれるのか。第2章に突入したフレデリックの行く先を見守りたい。

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